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生産性至上主義はアイを知らない。  作者: のどちん
社会貢献プロジェクト:開幕編
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17/51

Log 17:送信

「3月にはもう…終わるんだ。」

「いや、え、は?」


わかってたけど、変だ。

昔から地元に愛され、地域と共存共栄。

いい印象しかないし、僕も思ってる。

利用したことはないけどね。


そんな店が、どうして急にそうなのか。


「借金とかもそうだし、再開発の話も来ててさ…。」


なるほどそう言うことか。

過疎った商店街、売上が特別多いわけじゃない店。

再開発の際の退居に、もってこいの店ってわけだ。


合理的で、何も間違ってない。

僕だってそうする。利益が出るようにマネジメントするのが、店の責務ってもんだろ?


だけど、なにかが引っ掛かるんだよな。


「それを…それを…さ!それをさ!」


何か覚悟を決めたように、沙羅はそう言った。

僕も沙羅の方に向き直り、腕組みをして聞く。


「プロジェクト!プロジェクトで私の店を…助けて欲しいんだ。」


正直、それはただのエゴに過ぎない。

みんなの時間を使い、私情を扱うと言うこと。

それは簡単にはいかない。

相当な信頼と、相応の対価がなければ行けないのだ。


「…なるほど。」


でも厄介なのは、どちらも持ち合わせている状況なのだ。

信頼がない、そんなわけないし。

指定校という、とんでもない対価まで用意されている。


提案すれば必ず承諾されるだろうとは思う。


「確実にそれ承諾されると思うけど、なんで言わなかったの?」


単純な疑問。


「いや、なんか…言いづらくない?ほら、私って昔から弱虫だし!みんなにガッと行けるタイプじゃないんだよ…。」


そんな性格だから、生産性もない、人に縋ることしかできないようなやつに成り下がるんだろ。


沙羅はまあ、それの方が合ってるとは思うけどさ。

理由はなんとなくだよ。


「なるほどね…で、僕にそれを提案して欲しいってわけ?」

「さっすが、話が早いなぁ!」


いやべつに受諾してないけどね?


「少し考えさせて。」

「…わ、わかったよ。ごめんね。図々しくて。」

「いいさ。明日また話そ。」


そう言って、イヤホンをして階段を降りた。


その中で考える。

これは、乗るべき船なのだろうか。


生産性があるのだろうか。

三月、三月まで半年近くあるわけだし。

それまで時間を割くのは、かなりの負荷がかかる。


勉強しまくって指定校を取るか、

一発にかけてみるのか。


普通に考えて、

文面だけなら前者のほうが、圧倒的にメリットが多い。


“感情”というクソみたいな非合理に、僕は加担したくはない。


それを切り捨てないと、三月の僕は今の僕に顔向けできないはずだ。断捨離すべきだろう。


そう、なんかいも自分に言い聞かせたのに。




プロジェクトを進めながらでも、勉強はできるとか。

まだバカの観察は未完了だとか。

そんな言葉が、6割ぐらいを占めてたんだ。


家のベットに横になりながら、

僕、雄志、篤、雫、沙羅のグループラインに文面を書く。


グループ名は「夏祭り!」だ。

夏祭り前に作られたグループだからな。

その相談をしてたのが懐かしい。


そんなことを思っていたら、

完成してしまった。

沙羅の店を助けよう、という提案の文面が。


送るか、10分迷ったよ。

指をトントンさせ、落ち着かない自分が情けないと思った。


『提案するだけ、してみようかな。』という考えが、最後だったのかもしれない。

次の刹那、グループラインに長文が投下されていたからね。


「…え?」


一瞬で、既読が2ついた。

ポンポンと、3、4とついて、全員僕の文面を目撃した。


早すぎないか?

ずっとスマホ見てたとしか思えない。

なんで?なんのために?


ふと、思う。

プロジェクトのテーマ、探してたのかなって。

何かわからないような、そんな感情が込み上げる。


まただよ。もう鬱陶しい。


数十秒して、みんながその文を読み終えた頃だった。


『まじ?いいやん!』

『普通にやりたいんだけど。』

『おもろそうじゃね?』


肯定、肯定、肯定。

僕が期待したはずの否定は、一件も見当たらない。


何も考えず、今楽しそうだからと判断を即する。

きっと、こいつらはそうやって生きてきたんだ。


僕とはやはり、違うみたいだな。


『沙羅はそれでいいの?』

『確かに!人の家の事情に首突っ込むわけだし!』


言葉の雨は、沙羅に向いた。


『いや、これ私が提案しようとしてたことだし!

みんながいいなら、ほんとに嬉しいな!』


その文面じゃ、なんか僕が言葉を略奪したみたいになるじゃないか。

まぁいいけども。


『ほんとにやる?』


僕がそう打ってみた。

僕だって不確かな生産性に縋りたくはない。

成功する前提で話を進めないと意味がないのだ。


『当たり前だぜ!』

『やらない理由思いつかないし!』

『まこっちのマネジメント力あれば余裕じゃない?』


みんな前向きだな。

沙羅の家の、なんの事情も聞いていないくせに。


借金1兆円とかだったらどうすんだよ。


でも、やると決まれば徹底的に、だ。

成功しなきゃ僕の顔に泥がつく。

というか耐え切れる気がしないからね。


『なら徹底的になるからね。

まず近年の売上げ高を洗い出す。』


続けて打つ。


『次に客層。その次に立地、競合。全部洗うから。』


そしてまだ打つ。


『その上で感情論とかまじいらない。ガチで行くよ。』


すると、みんなの反応は予想通りだった。


『なんかこわい!w』

『ガチガチやん!』

『やる気出てるのか出てないんだかわかんないぞそれだとw』


やる気に満ち満ちてるぞ僕は。


こいつらは、軽すぎる。

いくらなんでも軽すぎる。


小さく舌打ちし、僕は大きなため息をついた。

効率も何も考えられないただのバカと、

僕は公平な仕事ができるのだろうか。


本当にこれに加担することが、後の生産性につながるのか。


ずっと、そんなことが頭の中を流れている。

その間も、グループラインでは話し合いが続いていた。


いつ現地に集まろうかとか、どんな感じなの?とかだ。

プライバシーも何も考えておらず、稚拙の極みである。


「これで…いい。」


少し拍を置いて、僕は呟く。


こいつらは、これでいいのかもしれない。


足りない部分は僕が全部補えばいい。

それが一番効率がいい。


だろ?


いちいち注意して改善や修繕を待つより、

僕が先に全部の可能性を潰してまわればいい。

協力も感情も何もいらない。


何が僕を突き動かしているのか、それすらわからないし、

意味のあることなのかも、まだわかってない。


これは、きっと僕を試せる大きなチャンスだ。


そうやって自分を説得する。

しなければ、やっていけない気がしたんだ。

胸の中で湧く、その何かを鎮めるために。


「ご飯いらないの~?」

「はいはい今行くからまって!」


『そうと決まりゃ、暇な日を教えてほしいな!』


篤のそれを最後に、僕は億劫にも足を動かした。


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