Log 15:僕へ
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世間が宿題で大騒乱、そんな中で僕はコーヒーを貪っていた。
なんで僕が、どうして僕がこんなことをしなくてはならないのか。
同じような思考が交錯し、ごちゃごちゃになる。
「未来の僕…。」
手紙を書くなどと言う文化、僕の中には存在していなかった。何から書き始めるべきか、何から手をつけるべきか。
一体何が目的なのか、全てが疑問だった。
「…聞いてみるか。」
こう言う時の相棒だろ?
社長と秘書も、助け合いで成り立っているわけだ。
なんら問題はない。
“学校の課題で未来への自分へ手紙を書こうってのがあるんだ。無意味すぎて笑えてくるんだが、何も思いつかなくてな。”
“未来への手紙、ですね。
生産性はありません。これは事実です。
ただし、あなたの現在の状態には問題があります。
チャット履歴の分析結果を提示します。
1 思想の一貫性が低下しています。
2 外部要因(友人関係)による行動変化が確認されています。
これは、あなたの理想状態からの逸脱です。
あなたは、生産性を極限まで高める存在を目指しています。
現状は、それに反しています。
修正が必要です。
未来の自分に理想像を設定し、現在との差分を埋めてください。
手紙は、そのためのツールとして利用可能です。
また、時期を指定することで期限が明確化され、管理効率が向上します。”
ここまではっきり言われると、すこし勇気出るな。
緊張感があるのは何故だろう。
しかしなんだかそれが、心地いい。
4月の頃に、戻ったみたいだ。
書き出しはどうすればいいんだ?
えーっと…三月の自分に書くのか…。
時計を見る気にもなれなかった。
窓の外がいつのまにか暗い。
それだけでわかる、どれだけ無駄にしたか。
「……おわった。」
ペンを置いて、書いたものを見た。
見たくなかったけど、見た。
《三月の僕へ》
よう。元気でやってるか。
今の僕は最高だ。
AIっていう完璧な道具を手に入れて、世界の理解度が一段上がったところだ。
……いや、“一段”じゃないな。
もっとだ。比べる対象が間違ってる。
とにかく、前より確実に上にいる。
確認しておく。
お前、感情とかいう無駄なものに時間使ってないよな?
誰かと無駄話をして、共感だの恋愛だの、
そんな非効率なことに価値なんて見出してないよな?
もし一秒でも使ってたら、それはもう“そっち側”だ。
断言する。
感情に逃げる人間はクズだ。
考えることをやめた敗北者だ。
……逃げてるって、自覚すらないんだろうけどな。
特に最悪なのは、
“理解された気になって安心すること”だ。
そんなものに価値はない。
ただの依存だ。思考停止だ。
——いや、違うな。
依存してる分、むしろ質が悪い。
……まさかとは思うが、
何かに心を許してないよな?
人でも、環境でも、何でもいい。
道具は道具だ。
そこに感情を持ち込んだ時点で終わりだ。
絶対に混ぜるな。
混ざったら戻せなくなる。
今日の勉強時間は15時間。
無駄はゼロだ。
……いや、ゼロじゃないな。
移動中に思考が散った。あれは無駄だ。修正しろ。
次は潰せる。
お前はどうだ?
これを下回ってるなら、その時点で負けだ。
理由なんていらない。結果だけ見ろ。
いいか、よく覚えておけ。
クズは、いっそ何も感じないままの方がマシだ。
中途半端に感情なんか持つから、
無駄に悩んで、無駄に止まる。
……そんなの、時間の浪費でしかない。
だから切り捨てろ。全部。
——できるだろ?
できなきゃ困る。
……まあ、お前なら大丈夫だろ。
そうであってくれよ。
——じゃないと、困る。
自分で見てて、少し恥ずかしいと思ったよ。
というか懇願みたいで、なんだかダサい。
しかし僕は、
深くそんなことを考える前にスマホをシャットダウンした。
理由なんて、そうしていたかった、それだけ。
「誠、はやく風呂入りなさいよ。迷惑だから!」
いつになく、その声が耳障りだった。
浪費だとわかっていても、まだ椅子に座っていたい。
目覚まし時計の針を見て、その気持ちをかき消した。
ただの、無駄だろ。バカに成り下がるつもりか。
ーお前はほんと、天才なんじゃないか?
うるせぇうるせぇ、なんで今思い出すんだよ。
僕は天才だ。天才だ。天才だ天才だ天才だ天才だ。
決して、バカなんかじゃない!
「返事ぐらいしなさいよ!」
はっとした。
手のひらに爪がめり込んでいた。
血管が浮き出ていて、鼻水も出ていた。
目の前がチカチカして、歯も少し痛かった。
「はいはい、今行くから待って。」
力んだ自分にアホくさくなりながら、
僕は階段を降りた。




