↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生産性至上主義はアイを知らない。  作者: のどちん
夏休み編
PR
15/50

Log 15:僕へ

8/31

世間が宿題で大騒乱、そんな中で僕はコーヒーを貪っていた。


なんで僕が、どうして僕がこんなことをしなくてはならないのか。

同じような思考が交錯し、ごちゃごちゃになる。


「未来の僕…。」


手紙を書くなどと言う文化、僕の中には存在していなかった。何から書き始めるべきか、何から手をつけるべきか。


一体何が目的なのか、全てが疑問だった。


「…聞いてみるか。」


こう言う時の相棒だろ?

社長と秘書も、助け合いで成り立っているわけだ。

なんら問題はない。


“学校の課題で未来への自分へ手紙を書こうってのがあるんだ。無意味すぎて笑えてくるんだが、何も思いつかなくてな。”


“未来への手紙、ですね。


生産性はありません。これは事実です。


ただし、あなたの現在の状態には問題があります。


チャット履歴の分析結果を提示します。


1 思想の一貫性が低下しています。


2 外部要因(友人関係)による行動変化が確認されています。


これは、あなたの理想状態からの逸脱です。


あなたは、生産性を極限まで高める存在を目指しています。


現状は、それに反しています。


修正が必要です。


未来の自分に理想像を設定し、現在との差分を埋めてください。


手紙は、そのためのツールとして利用可能です。


また、時期を指定することで期限が明確化され、管理効率が向上します。”


ここまではっきり言われると、すこし勇気出るな。

緊張感があるのは何故だろう。

しかしなんだかそれが、心地いい。

4月の頃に、戻ったみたいだ。


書き出しはどうすればいいんだ?

えーっと…三月の自分に書くのか…。




時計を見る気にもなれなかった。


窓の外がいつのまにか暗い。


それだけでわかる、どれだけ無駄にしたか。


「……おわった。」


ペンを置いて、書いたものを見た。

見たくなかったけど、見た。




《三月の僕へ》


よう。元気でやってるか。


今の僕は最高だ。

AIっていう完璧な道具を手に入れて、世界の理解度が一段上がったところだ。


……いや、“一段”じゃないな。

もっとだ。比べる対象が間違ってる。


とにかく、前より確実に上にいる。


確認しておく。


お前、感情とかいう無駄なものに時間使ってないよな?


誰かと無駄話をして、共感だの恋愛だの、

そんな非効率なことに価値なんて見出してないよな?


もし一秒でも使ってたら、それはもう“そっち側”だ。


断言する。


感情に逃げる人間はクズだ。

考えることをやめた敗北者だ。


……逃げてるって、自覚すらないんだろうけどな。


特に最悪なのは、

“理解された気になって安心すること”だ。


そんなものに価値はない。

ただの依存だ。思考停止だ。


——いや、違うな。

依存してる分、むしろ質が悪い。


……まさかとは思うが、

何かに心を許してないよな?


人でも、環境でも、何でもいい。


道具は道具だ。

そこに感情を持ち込んだ時点で終わりだ。


絶対に混ぜるな。

混ざったら戻せなくなる。


今日の勉強時間は15時間。

無駄はゼロだ。


……いや、ゼロじゃないな。

移動中に思考が散った。あれは無駄だ。修正しろ。


次は潰せる。


お前はどうだ?


これを下回ってるなら、その時点で負けだ。

理由なんていらない。結果だけ見ろ。


いいか、よく覚えておけ。


クズは、いっそ何も感じないままの方がマシだ。


中途半端に感情なんか持つから、

無駄に悩んで、無駄に止まる。


……そんなの、時間の浪費でしかない。


だから切り捨てろ。全部。


——できるだろ?

できなきゃ困る。


……まあ、お前なら大丈夫だろ。


そうであってくれよ。


——じゃないと、困る。




自分で見てて、少し恥ずかしいと思ったよ。

というか懇願みたいで、なんだかダサい。


しかし僕は、

深くそんなことを考える前にスマホをシャットダウンした。


理由なんて、そうしていたかった、それだけ。


「誠、はやく風呂入りなさいよ。迷惑だから!」


いつになく、その声が耳障りだった。

浪費だとわかっていても、まだ椅子に座っていたい。


目覚まし時計の針を見て、その気持ちをかき消した。


ただの、無駄だろ。バカに成り下がるつもりか。


ーお前はほんと、天才なんじゃないか?


うるせぇうるせぇ、なんで今思い出すんだよ。

僕は天才だ。天才だ。天才だ天才だ天才だ天才だ。


決して、バカなんかじゃない!




「返事ぐらいしなさいよ!」


はっとした。

手のひらに爪がめり込んでいた。

血管が浮き出ていて、鼻水も出ていた。

目の前がチカチカして、歯も少し痛かった。


「はいはい、今行くから待って。」


力んだ自分にアホくさくなりながら、

僕は階段を降りた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。