白
「んん……」白色を基調とした区画の前で、僕はじっと留まっていた。棚に並ぶマシュマロやクッキー、はたまたチョコレート等の菓子類と、掲げられた売り文句を記すポップ。明日のホワイトデーを消費者に訴えていた。バレンタインデーのときは町ぐるみで大々的にチョコレートの消費を促すよう動きがあるが、その一か月後のホワイトデーでは、そういう動きは社会全体を見て小さいように感じるのは気の所為だろうか。少なくとも、僕の周囲ではそう思う。なので、こういう小規模ながらもホワイトデーのコーナーがあるのはとてもありがたい。きっと僕みたいな人は社会に大勢居るだろうから、そのニーズに応えようということだろうか。ここのスタッフは中々に商売が上手だ、とどこから目線だか思った。そう思う一方、僕はここで立ち尽くしながら悩んでいた。ホワイトデーというのは、一体何を返せば良いのかいつになっても分からない。ネットの記事だろうか、マシュマロを送るのは悪い意味と聞きかじったことがあるので、先ずそれは除外されるのだが……。それに、バレンタインで互いに渡し合ってしまった場合はどうすれば良いのか、少し悩む。ちょっぴり恥ずかしいような気もしてきた。ええい! と思って、僕は一つ取り、さっさとレジへ向かおうとした。「……あれ?」振り返った僕の目の前に居たのは、僕の頭に浮かんでいた彼女。手には、僕が持ったのと同じチョコレートが握られていた。「何だよ、あたしも買いに来たんだよ! お、お前に返すために。そしたら居たから、ささっと取って帰ろうと思ってたのにさ……! 急に振り返るなよ!」普段は透き通るように白い肌に、今は生命をはっきり感じた。僕は笑う。「ねえ、このあと一緒に御茶でもどう?」すると、彼女も笑った。「お前の場合コーヒーだろ?」僕は少し困って「そ、そういうことじゃなくてさ」と返そうとすると、歩き出しつつ食い気味に彼女は言った。「おい、早く行くぞ」僕は彼女を急いで追った。彼女の白々しい態度に、僕は何と無く笑みが零れた。
「ホワイト」デー
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