春の寝床
「鼻が痒い……」道を歩きながら、僕は洟をすすった。目も痒いので手が自然と動くが、すんでのところで衛生面を鑑みて止めた。傍から見たら泣いているように見えるほど、僕の目は潤んでいた。暖かい風が頬を撫で髪を梳かすのが分かった。確かに、風によって運ばれた花粉という小さな悪魔達は極めて悪質だ。だが、この陽気には確かに魅力があった。包み込むような日光は、既に覚め切った筈の眠気を再臨させた。僕は周囲を見回す。目下には砂利の集まる河川敷と清らかに流れるささやかな川が広がり、足元にはそこへ繋がるなだらかな草の斜面があった。人通りは無い。僕の頬は綻んで、斜面にそろりと足の先を伸ばした。地面に手をつくと雑草が手の甲を優しく撫でるので、少しくすぐったかった。頭もつくと、少しだけど確かに、小さな花が香った。見上げる空は彼方まで青く、白いふわふわした雲がアクセントカラーとして流れている。射す太陽の光が些か眩しかったので、両目に腕を当てた。雑草の敷き布団に日光の掛け布団、名を付けるとしたら春の寝床だな、と思いながら、僕は睡魔に身を委ね、夢の世界に脱力して身を投じた。
初春は、寒さも些か微睡むのかな。
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