静寂の中の喧騒
「すぅー……はぁー……」澄んだ空気はどんな清涼飲料水よりも涼やかに喉を下った。通る管は食道と気管で違うが、体内に流れ込む清涼感に大差は無い。何度も深呼吸すると、腹に溜まらないサイダーを仰ぎ飲んでいる錯覚に陥った。この空気の不純物の無さは、矢張り周囲を取り囲む鬱蒼とした樹木が起因するのだろうか。目の前の汚れた朱色の鳥居も、その奥に控えるこぢんまりとした本殿も、きっとその涼やかな雰囲気の原因になっているのだろう。ここは神社だ。散歩の途中偶然見つけたのだが、その規模の小さな神社に、何故か吸い込まれるように進んでいたのだった。その小さな神社を囲うように、周囲には小規模ながら林があった。恐らく夏にはどろっとした蜜が溢れ、昆虫や、それを狙う少年達が集まるだろう木が、境内に猛々しく迫り出していた。境内の中をゆっくり進んでいく。そこには他に人は誰も居なかった。静寂の中に響く砂利の音。やけにその音は拡大されているように感じた。周囲の音に敏感になってくる。立ち止まると聞こえたのは、葉の梢、木の間を駆ける風の音、自分の生命の音。静寂の中の喧騒に気づけたこの場所に、僕はきっとまた訪れる。
無いと思っていても。
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