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おひなさま

「ああ、そうか……」ショッピングモールを歩いていた僕は、ふと呟いた。幼稚園生くらいの女児の声で歌われた曲がモール中に響いて、買い物をする人達の鼓膜を心地良く揺らしていた。並んだ店はどこも桜色で、スーパーのブースには桜餅が推されて売り出されている。今日は三月三日、ひな祭りだ。僕としては例に倣って喜んで良いのか良く分からないのだが、とにかく世の女の子が世界から祝福される日だ。その事実に、今やっと気づいたのだった。どうせだから桜餅でも買って帰ろうか、と考えていると、異様に存在感を放つそれに目が自然に向いていた。そこには、素敵に装飾されたガラスに中に鎮座するひな人形が、過ぎゆく人に少し不気味ながらも美しい微笑を投げ掛けている姿があった。意図的に目立つ位置に配置されたそれは、その意図のとおり通る人の視界に確実に入るようで、時々立ち止まって眺めていく人も居た。僕もその中の一人なのだが、それを認めるのは少々癪だった。薄いガラスに囲われたおひなさまは笑っている。だが、どこか余所余所しい。近くにある筈なのに、遠くにあるような、そんな気がした。それは、彼女の周りの透明な檻の所為だときづいたのは少ししてから。檻に入れられて、三月三日だけ皆の前に晒されて、微笑を投げ掛ける。何だか可哀想だ、と思いつつ、僕はその場から立ち去った。さて、ひな人形のストラップは売っているだろうか。

檻の中から連れ出してあげましょう。


お読みいただきありがとうございます。

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