あしあと
「おお──っ!」思わず声が出た。その理由は目前に広がる見事な景色にある。一面に広がる畑、点在する家屋、遠くに見える山脈、並んで広がる街。絵に描いたような田舎に僕は来ていた。吸い込む空気が澄んでいて、気づけば何度も深呼吸をしていた。通行人どころか車すら数時間は見ていないほどの田舎には便利な施設は何も無い。でも、都会には絶対に無い魅力があった。ふと、畑を見た。今の時期は何も植わっていないようで、生えているのは雑草だけだった。「あれ、何だろう……?」一番付近の畑に、一つだけ何かある。何かの茎のようなものが生えていた。刈り残しかな? と思って、できるだけ近寄り確認してみると、どうやら植物ではないらしい。一見枯れた作物辺りに見えるそれは茶系の色をしていて、土で汚れているようだった。確認してから、今一度周囲を見回す。だが、どの畑にも同じ物は見受けられない。また、それを見る。先程まで気づかなかったが、そこまで一直線の足跡が続いていた。途轍も無く嫌な感じがし、僕はそこへ向かおうとした。畑に足がついた、そのときだった。「こらこら、畑に入ったらいかんよ」僕の肩は跳ねた。目は見開いて、逆に口は食い縛る。足音がしなかったので心底驚いた。「あ、あの、すみません。あの棒って何ですか」咄嗟に訊いてしまって後悔した。僕は決して声の方向を見られない。「あれかい、種だよ。やあやあ、今年は豊作だねぇ! 二つも種が見つかるなんて」
行けば戻る。一つを除いて。
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