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隘路の魚は夢を見る
「ほら、今日分の餌だよ」数粒の市販の餌を水面に落とすと、揺れながら沈むそれにわらわらと数匹の金魚が寄ってきた。大きな水槽の中の種類も性別も統一なされていない四匹の金魚だが、そのどれもが綺麗な純白で、まるで天使に見えた。水槽の大きさは申し分無い筈だが、それでも窮屈そうに見えるのは、空間の分だけ幾らでも成長する可能性を孕む金魚の性質に因った。更に大きな水槽が必要かな、と苦笑した自分の顔がガラスに反射して自分に返ってきたので、何とも言えぬ虚無感に襲われた。表情が見えたと同時に、奥の机に突っ伏す金髪が見えたので、僕は振り返った。旧友が、くーくーと寝息を立てて寝ていたのだ。彼女は今、何か夢を見ているのだろうか。それとも、激務に疲れ果てて夢見る暇も無く熟睡しているだろうか。今はそっとしておいてあげよう。立派に天使が羽ばたくには、羽休めが必要だから。
十人十色。
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