言葉
──「僕は君と、もう二度と会うことは無いだろう」過去に何度かそう伝えた。すると相手は必ず、理解できないように首を傾げる。「急に何?」とか「若しかして怒らせた?」とか「引っ越すの?」とか。僕はそれには何も答えない。いいや、正確には、答えられない。そして次の日、相手は思い知り、ようやく理解する。それは僕もだ。人間という生物は、実際に事が起こってからようやく本当に理解るものなのだろう。きっと、言っても意味が無いことなのだろうと思う。だが、無意味でも、何回繰り返しても、どうしても伝えたくなってしまうことがある。きっとそれは、僕が人間であることの証明で……。「おい、どうした? 時化た面しやがって。らしくねえ……ってわけでも無えか」呼び掛けながら顔を覗き込んでくる彼女に、僕はハッと目を見開いた。「ごめん、少し考え事をしていたんだ」微笑んでそう返すと、彼女は鼻を鳴らして素っ気無く答えた。「ふうん……。何だか知らんが、考え過ぎも良くねえぞ。相談してくれても良いんだからな」彼女に「……有難う、でも大丈夫さ」と答えるのが少々遅れてしまった。いつか来るのだろうか、彼女にその言葉を伝える時が。来た時には、彼女はどんな言葉を紡ぐのだろうか。
僕は旅人だから。ならば、ともに。
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