最も幸福な拷問
「最も幸福な拷問だぁ……?」目の前の彼女は怪訝そうに眉間を寄せた。そんな物はこの世に存在し得るのか、と疑問を零すのはごもっともだ。「だってよ、拷問って口を割らせるため、壊れねえ程度に苦痛を与え続けることが目的だよな? なら、幸福とは似ても似つかないんじゃねえの?」そう、苦しみの中で幸福が生まれることは無いし、第一、苦痛が無ければ拷問として意味が無い。「そのとおり。でも、幸福な拷問は、確かに存在する。」彼女の眉間には更に縦の皺が増えた。「それって……?」話の続きを促す彼女の思いとは裏腹に、僕は話題を戻す。「で、このコーヒーゼリー。開いているし、空いているね。さあ、誰が食べたんですか? 僕がずっと楽しみにしていた、御丁寧に蓋に名前も書いてあったコーヒーゼリー。一体、どこのどいつが、食べたんですかねぇ!?」僕が詰め寄ると、彼女は分かり易く目を逸らした。そこで僕の秘策!「白状しないなら……。」僕ががさごそ音を出して作業し出すと、彼女はちらりとこちらを覗いた──と同時に叫ぶ。「それッ! あたしが大事に取っておいたパフェッ!?」食べられたくなければ白状しろ、と脅しを掛ける。プラスチックのスプーンが白い魅惑の山肌に突き刺さった──。「あーもうッ! そうだよ、食ったのはあたしだ!」良し、と僕は続ける。「よろしい。ならば、大罪人には罰が必要だな。」叫びと共に呑み込むパフェは正に完璧な甘さをしていた。
それは幸福な時間。
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