気体のり
「ん、何これ。」百円均一の店にて、文房具のブースに通りかかったときのことだ。のりが並ぶ箇所が目に留まった。一般的な液状のり、最近良く見るスティックのりが並ぶ他、特徴的な缶が目に入ったのだ。やけに大きなそれの表面には「気体のり」と印刷されていた。初めて見る単語に目が釘付けになり、白と青のパッケージが印象的な缶を手に取って、様々な角度から観察し始めた。見ると、どうやらこの缶の中には気体に極めて近付けたのりが入っているようで、付属品のスポイトを使って塗布することでのりとしての役割を果たすそうだ。近年、各分野で缶詰が流行しているが、まさかのりも缶詰にするとは驚きだ。「……使いづらそうだなぁ。」何だかんだ買って帰った。腕を捲る僕の前にあるのは、缶とスポイト、そして紙二枚、木片二個、薄い金属板二枚。そう、これから行うのは実験だ! 先ず、紙二枚を付けてみる。缶の封を開けると、中には薄く青い色のついた気体が沈殿していた。実際にスポイトで塗布してみたが……。「接着力弱ッ!」紙ですら一分程度で剥がれてしまう。木片、金属板では尚更だった。残酷なようだが、僕はそれを再度閉めて、物置にぶち込んだ。そして、少し時間が経ち、ふと気体のりの存在を思い出して物置から取り出した。いざ開けようとすると、缶の封は一切開く素振りを見せない。こののりは固体と固体の接着を目的にしている品物でなく、気体と固体の接着を目的として作られた物だったと、数年の時を経て、ようやく分かったのだった。
時間を越えた実験。
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