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見た目でビッチだと誤解されているピンク髪巨乳の保健委員は、なぜか俺にだけ距離が近い  作者: カルラ


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第8章:言葉にしない本音

 カーテンが開かれたまま、三人の視線が交差する。


「……神崎」


 相沢の視線がこちらに向く。


「まだいたのね」


「まあ、ちょっとな」


 曖昧に答える。


 すると、彼女はゆっくりと視線を横へ移した。


「桜井さん」


 呼び方は変わらない。


 距離を測るような、きっちりとした響き。


「少し、いいかしら」


 穏やかだが、逃げ道はない言い方。


「はい」


 桜井は静かに頷いた。


 その表情は、さっきまでとは少し違う。


 柔らかさは残っているが、どこか緊張している。


「神崎も、そのままでいいわ」


 相沢はそう言った。


「むしろ、その方が分かりやすい」


 どうやら、あえて俺を外さないつもりらしい。


 少しだけ面倒な予感がする。


「単刀直入に言うわ」


 相沢は一歩踏み出す。


「距離の問題、どうするつもり?」


 直球だった。


 逃げ場のない問い。


 桜井は、一瞬だけ視線を落とす。


「……考えています」


 静かな返答。


「でも、まだ結論は出ていません」


 正直な答え。


 相沢はそれを聞いて、わずかに眉を寄せた。


「時間をかける問題かしら」


「かもしれません」


 否定しない。


「でも、すぐに決めてしまうのも違う気がして」


 その言葉に、相沢は少しだけ目を細めた。


「……感情論ね」


 淡々とした評価。


「そうかもしれません」


 それでも桜井は、受け止めた。


 否定も反論もしない。


 ただ、認める。


 その姿勢に、少しだけ空気が変わる。


「桜井さん」


 相沢が静かに言う。


「あなたが真面目なのは分かってる」


 意外な言葉。


「だからこそ言ってるの」


 続ける。


「中途半端が一番危ない」


 その言葉は、鋭かった。


「距離を取るなら徹底する」


「取らないなら、その責任を受け入れる」


 はっきりとした二択。


「どっちつかずが、一番誤解を生む」


 正論。


 だが――。


「……責任、ですか」


 桜井が小さく呟く。


「ええ」


 相沢は頷いた。


「あなたの行動で、周囲がどう見るか」


「それも含めて、自分で引き受けるってこと」


 その言葉は重い。


 軽くは流せない。


 少しの沈黙。


 桜井は、ゆっくりと顔を上げた。


「……分かりました」


 静かに言う。


「ちゃんと考えます」


 その声は、少しだけ強かった。


 さっきまでの迷いとは違う。


 何かを決める前の、覚悟に近いもの。


 相沢はそれを見て、わずかに息を吐いた。


「ならいいわ」


 短く言う。


「私は、それを確認したかっただけ」


 それだけ言って、少しだけ視線をこちらに向ける。


「神崎」


「なに」


「あなたも」


 一瞬、言葉を区切る。


「巻き込まれてる自覚、持ちなさいよ」


 少しだけ呆れたような声。


「……分かってるよ」


 本当かどうかは分からないが、そう答える。


 相沢は小さく頷いた。


 そして――。


「じゃあ、私はこれで」


 そう言って、踵を返す。


 扉が開き、閉まる。


 再び、静寂。


 今度はさっきよりも、少しだけ重い沈黙だった。


「……すみません」


 桜井がぽつりと呟く。


「また、こんな空気にしてしまって」


「別にいいって」


 軽く返す。


「俺は気にしてないし」


「でも」


「それよりさ」


 言葉を遮る。


 彼女は少しだけ驚いた顔をした。


「どうするか、決めるんだろ?」


「……はい」


 静かに頷く。


「怖くない?」


 ふと、そう聞いていた。


「え?」


「どっち選んでも、何かは失うだろ」


 言いながら、自分でも少し驚く。


 こんなことを言うつもりはなかった。


 だが――。


 気になった。


 彼女は少しだけ考えてから、答えた。


「……少しだけ」


 正直な声。


「でも」


 続ける。


「何も決めないままの方が、もっと怖いです」


 その言葉は、はっきりしていた。


 さっきまでの迷いとは違う。


 前を向いた声。


「そっか」


 短く返す。


 それ以上、何も言えなかった。


 ただ。


 少しだけ、安心した。


 この人は、自分で決める人だ。


 誰かに流されるだけの人じゃない。


 その事実が、妙に嬉しかった。


「……神崎くん」


 名前を呼ばれる。


「はい」


「さっきのことなんですけど」


 少しだけ、言い淀む。


「距離の話」


「ああ」


「……少しだけ、変えてみようと思います」


 その言葉に、わずかに胸がざわつく。


「でも」


 彼女はすぐに続けた。


「全部じゃなくて、少しだけ」


 柔らかく笑う。


「それでもいいですか?」


 なぜか、こちらに確認してくる。


「俺に聞くの?」


「一番来てくれる人なので」


 さらっと言う。


 その一言に、少しだけ言葉に詰まる。


「……好きにすればいいだろ」


 なんとか返す。


「はい」


 彼女は嬉しそうに頷いた。


 その笑顔は、さっきまでよりも少しだけ軽かった。


 迷いが、ほんの少しだけ晴れた顔。


 夕焼けが、さらに濃くなる。


 長い影が床に伸びる。


 その中で。


 少しだけ変わり始めた距離。


 それが、これからどうなるのか。


 まだ分からない。


 ただ一つだけ言えるのは。


 このままでは終わらない、ということだった。












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