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見た目でビッチだと誤解されているピンク髪巨乳の保健委員は、なぜか俺にだけ距離が近い  作者: カルラ


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第7章:正しさと本音

 額に触れていた手が、ゆっくりと離れる。


「……やっぱり、少し熱がありますね」


 桜井は小さく息をついた。


 その表情は、さっきまでよりもずっと真剣だ。


「無理してませんか?」


「いや、ほんとに大丈夫だから」


 そう言いながらも、さっきの距離のせいで妙に落ち着かない。


「少しだけ、横になった方がいいかもしれません」


 穏やかな提案。


「いや、そこまでじゃ――」


「お願いします」


 言葉を遮られる。


 その一言は、いつもより少しだけ強かった。


 驚いて顔を見る。


 彼女は、まっすぐこちらを見ていた。


「無理してほしくないので」


 静かな声。


 だが、そこにははっきりとした意思がある。


 少しだけ、言葉に詰まる。


「……分かった」


 観念してベッドに腰を下ろす。


 カーテンが引かれる。


 外の光が、少しだけ柔らかくなる。


「すぐ戻りますね」


 彼女はそう言って、一度離れた。


 数秒後。


 戻ってきた彼女は、小さなタオルを持っていた。


「これ、使ってください」


「ありがとう」


 受け取ろうと手を伸ばす。


 だが――。


「……あ」


 彼女は一瞬だけ動きを止めた。


 そして。


「そのままでいいです」


 そう言って、こちらの額にタオルを乗せた。


 ひんやりとした感触。


 そして、近い。


 さっきよりもさらに近い距離。


 顔を少し動かせば触れそうなほど。


「……これ、自分でやるから」


 思わず言う。


「大丈夫です」


 即答。


「この方が、ちゃんと冷えるので」


 理屈としては正しい。


 だが――。


「……距離が近いんだよ」


 小さく呟く。


「……そうですね」


 なぜか、否定しない。


 むしろ。


「でも、保健委員なので」


 少しだけ笑った。


 その言葉に、反論できなくなる。


 確かに、その通りだ。


 だが。


 それだけでは説明できない何かがある気がする。


「……神崎くん」


 名前を呼ばれる。


「はい」


「さっきの話なんですけど」


 相沢とのやり取りのことだろう。


「やっぱり、少し考えたんです」


 静かな声。


「距離を取るべきかどうか」


 タオルを軽く押さえながら続ける。


「……で?」


「分からなくなりました」


 あっさりとした答え。


「何が正しいのか」


 少しだけ視線を落とす。


「どうするのが、一番いいのか」


 その声は、さっきよりもずっと弱かった。


 ――やっぱり。


 昼に見た“影”は、気のせいじゃなかった。


「……そんなの、すぐ決めなくていいだろ」


 ゆっくりと言葉を選ぶ。


「でも」


「相沢の言ってることも分かる」


 先に認める。


「正しいと思うし、間違ってない」


「はい」


 彼女は小さく頷く。


「でも」


 続ける。


「それが全部じゃないだろ」


 彼女の手が、わずかに止まる。


「……どういう意味ですか?」


「正しさだけで全部決めるなら、誰も困らない」


 少しだけ笑う。


「でも実際は、そうじゃないだろ」


 彼女は黙って聞いている。


「来てくれる人が減るのが嫌なんだろ?」


「……はい」


 小さく答える。


「じゃあ、それも大事にすればいい」


 シンプルな答え。


 理屈ではなく、ただの感情。


「でも、それだと誤解が」


「全部なくすのは無理だろ」


 即答する。


「だったら、どれを優先するか決めるしかない」


 彼女は少しだけ目を見開いた。


「……優先、ですか」


「そう」


 頷く。


「正しさか、自分のやり方か」


「そのどっちも取れるならいいけど」


「無理なら、どっちか選ぶしかない」


 少しだけ言い過ぎたかもしれない。


 そう思ったが――。


「……神崎くんは、どっちがいいと思いますか?」


 彼女は真っ直ぐに聞いてきた。


 少しだけ考える。


 だが、答えはすぐに出た。


「今のままでいいと思う」


 はっきりと言う。


「理由は?」


「その方が、あんたらしいから」


 言い切る。


 一瞬、沈黙。


 そして――。


「……ふふっ」


 小さな笑い声。


「また、それですね」


 どこか嬉しそうな声。


「でも」


 タオルをそっと外す。


「それ、嫌いじゃないです」


 少しだけ照れたように微笑む。


 その表情に、思わず見入る。


 ――やっぱり、この人は。


 噂なんかで決めつけていい人じゃない。


 その時だった。


 ガラッ、と扉が開く音。


「……いると思ったわ」


 聞き慣れた声。


 カーテンの向こうからでも分かる。


 相沢だ。


「神崎、まだ帰ってなかったのね」


 少し呆れたような声音。


 そして。


 カーテンが、ゆっくりと開かれる。


 視線が交差する。


 黒髪の優等生と、ピンク髪の保健委員。


 その間にいる俺。


 空気が、再び張り詰める。


 だが今度は――。


 ただの注意では終わらない。


 そんな気配が、はっきりとあった。











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