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見た目でビッチだと誤解されているピンク髪巨乳の保健委員は、なぜか俺にだけ距離が近い  作者: カルラ


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第9章:変わる距離、変わらない気持ち

 翌日。


 教室の空気は、いつもと同じようでいて――どこか違って見えた。


 理由は分かっている。


 昨日の会話。


 あの保健室でのやり取りが、頭から離れない。


 ――少しだけ、変えてみようと思います。


 桜井の言葉が、何度も繰り返される。


「おい神崎」


 横から声が飛ぶ。


「最近ほんと保健室ばっか行ってないか?」


 いつもの軽い調子。


「別に」


「いや絶対なんかあるだろ」


 しつこい。


「何もないって」


 短く返す。


 だが――。


「……図星か?」


 にやついた顔。


 少しだけ、イラっとする。


「違うって言ってるだろ」


 少しだけ強く言ってしまう。


 相手は一瞬だけ驚いた顔をした。


「……お、おう」


 それ以上は何も言ってこない。


 自分でも分かる。


 最近、余裕がない。


 チャイムが鳴る。


 授業が始まる。


 だが、やはり集中できない。


 気になるのは一つだけ。


 ――今日は、どうなる。


 昼休み。


 いつも通り、弁当を急いで食べる。


 そして、立ち上がる。


 向かう先は、もちろん。


 保健室。


 廊下を歩く。


 足取りは、昨日よりも少しだけ慎重だった。


 扉の前に立つ。


 コンコン、とノック。


「どうぞ」


 いつもの声。


 扉を開ける。


「……あ」


 桜井が、こちらを見る。


 そして、微笑む。


「神崎くん」


 名前を呼ばれる。


 ――ここまでは、いつも通り。


 だが。


「いらっしゃいませ」


 少しだけ、距離がある。


 立ち位置が、いつもより遠い。


 ほんの一歩。


 それだけの差。


 なのに。


 はっきりと分かる。


 昨日までとは違う。


「……どうした?」


 思わず聞く。


「え?」


「なんか、いつもと違くない?」


 ストレートに言う。


 彼女は一瞬だけ驚いた顔をして、それから少しだけ笑った。


「分かりますか?」


「そりゃまあ」


 ここまで通っていれば分かる。


「少しだけ、距離を意識してみました」


 昨日の言葉通り。


 だが――。


「……違和感すごいな」


 正直な感想が漏れる。


「やっぱり、そうですよね」


 彼女は苦笑した。


「自分でも、少し変な感じがします」


 そう言いながらも、距離は保ったまま。


 近づこうとしない。


 その様子に、妙に落ち着かない。


「……なんか、逆に居づらい」


 ぽつりと呟く。


「え?」


「いや、前の方が普通だったっていうか」


 言葉を探しながら続ける。


「今の方が、変に意識する」


 そのまま口に出してしまった。


 一瞬、沈黙。


 そして――。


「……ふふっ」


 小さな笑い声。


「同じこと、思ってました」


 少しだけ安心したような顔。


「でも」


 彼女は軽く息を吐く。


「少しは、慣れないといけないので」


 その言葉に、少しだけ引っかかる。


「慣れる必要あるのか?」


「あります」


 今度は、はっきりと言い切った。


「変わるって決めたので」


 その声には、昨日とは違う強さがあった。


 ――決めた、か。


 少しだけ、胸の奥がざわつく。


「……そっか」


 それ以上は何も言えない。


 彼女は、ほんの少しだけこちらを見て――。


「でも」


 続けた。


「全部を変えるわけじゃないです」


 ゆっくりと、一歩だけ近づく。


 ほんの少し。


 ほんの少しだけ。


 だが、その一歩は確かに“以前の距離”だった。


「このくらいなら、大丈夫かなって」


 少し照れたように笑う。


 その表情に、妙に安心する。


「……そのくらいなら、まあ」


 思わず頷く。


「ちょうどいいですか?」


「たぶん」


 曖昧に答える。


 だが、本音だった。


 近すぎず、遠すぎない。


 妙にしっくりくる距離。


「良かったです」


 彼女は嬉しそうに微笑む。


 その瞬間。


 ドクン、と心臓が鳴る。


 理由は分かっている。


 距離が変わったんじゃない。


 意識が変わった。


 “近い”からドキドキするんじゃない。


 “意識してしまう相手”になったから、距離が気になる。


 その事実に気づいてしまう。


「……神崎くん?」


 名前を呼ばれる。


「どうかしましたか?」


「いや、なんでもない」


 慌てて視線を逸らす。


 ――やばいな。


 これは、少し。


 想像以上に、まずいかもしれない。


 そんなことを考えていると。


 ガラッ、と扉が開く音。


「失礼しまーす!」


 明るい声が響く。


 振り返る。


 そこにいたのは、小柄な少女だった。


 元気そうな表情。


 くるっとした目。


 そして――。


「お、先客いたんだ」


 気さくな声。


 彼女は、こちらをじっと見て――。


「……あれ?」


 少しだけ首を傾げる。


「君、よくここ来てる人じゃない?」


 いきなり指摘された。


 思わず言葉に詰まる。


 その様子を見て、彼女はにやっと笑う。


「やっぱり」


 そして。


「へえー」


 意味深な視線。


「なんか面白そうなことになってるじゃん」


 その一言で。


 空気が、また少し変わる。


 新しい存在。


 そして、少しだけ厄介そうな気配。


 ――また、何かが動き出す。


 そんな予感が、はっきりとした形になり始めていた。







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