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見た目でビッチだと誤解されているピンク髪巨乳の保健委員は、なぜか俺にだけ距離が近い  作者: カルラ


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第14章:選ばれる理由

 昼休みが終わりに近づく。


 保健室の中は、ようやく落ち着きを取り戻していた。


 さっきまでいた女子たちは、満足したのか、あるいは期待外れだったのか。


 どちらにせよ、もういない。


 静かな空間。


「……お待たせしました」


 桜井が、こちらに向き直る。


 いつもの声。


 だが――。


 その一歩。


 少しだけ近い。


 さっきよりも、ほんの少し。


「いや、大丈夫」


 軽く返す。


 だが、その距離に意識が向く。


 さっきの“ほんの一瞬”とは違う。


 今は、はっきりとこちらに向けられている。


「……大変そうだな」


 ぽつりと呟く。


「はい」


 素直に頷く。


「思ったより、広がるのが早くて」


 少しだけ苦笑する。


 無理もない。


 あの状況を見れば、誰だって気になる。


「後悔してる?」


 なんとなく、聞いてみる。


 少しだけ間があった。


「……少しだけ」


 正直な答え。


 だが。


「でも」


 すぐに続く。


「決めたことなので」


 その声は、しっかりしていた。


 迷いはある。


 それでも、戻らない。


 そういう強さ。


「そっか」


 短く返す。


 それ以上、何も言わない。


 言う必要もない気がした。


「……神崎くん」


 名前を呼ばれる。


「はい」


「一つ、聞いてもいいですか?」


 少しだけ、慎重な声。


「いいけど」


 軽く頷く。


 彼女は一瞬だけ視線を落として――。


「どうして、来てくれるんですか?」


 静かな問い。


 昨日と似ている。


 だが、少し違う。


 今度は――。


 “理由”を求めている。


 少しだけ考える。


 だが。


「落ち着くから」


 言葉は、自然に出た。


「ここにいると、なんか落ち着く」


 それが一番しっくりきた。


 一瞬、沈黙。


 そして。


「……それだけですか?」


 少しだけ、踏み込んでくる。


「それだけじゃダメ?」


 逆に聞き返す。


 彼女は少しだけ考えてから――。


「ダメじゃないです」


 小さく笑う。


「むしろ、一番嬉しい理由かもしれません」


 その言葉に、少しだけ胸が温かくなる。


 だが。


「でも」


 彼女は、続けた。


「それだと、少しだけ不安になります」


「不安?」


「はい」


 頷く。


「他に落ち着く場所ができたら、来なくなるかもしれないので」


 その言葉に、少しだけ言葉を失う。


 ――そこまで考えるのか。


「……じゃあ」


 少しだけ考えてから、口を開く。


「理由、増やすか」


「え?」


 彼女が目を丸くする。


「落ち着く、以外にも」


 言葉を探す。


 そして――。


「会いたいから、とか」


 言ってしまった。


 一瞬、時間が止まる。


 やばいと思った時には、もう遅い。


「……」


 桜井が、固まっている。


 完全にフリーズしている。


「いや、今のはその」


 慌てて言い訳をしようとする。


 だが。


「……ずるいです」


 小さな声。


 顔が、ほんのり赤い。


「そういうの、急に言うの」


 視線を逸らしながら言う。


 その反応に、逆にこっちが焦る。


「いや、変な意味じゃなくて」


「分かってます」


 やさしく遮られる。


「でも」


 少しだけ顔を上げる。


「嬉しいです」


 まっすぐな言葉。


 その瞬間。


 心臓が、強く鳴る。


 誤魔化しようがない。


 これはもう。


 完全に。


 そういう空気だ。


「……神崎くん」


 静かな声。


 そして。


 ほんの一歩、近づく。


 昨日よりも。


 今日よりも。


 さらに近い距離。


「私も」


 一瞬だけ、言葉を区切る。


「来てくれるの、楽しみにしてます」


 その一言で。


 全部、伝わる。


 遠回しでもない。


 はっきりとした感情。


 その時。


 キーンコーンカーンコーン。


 チャイムが鳴る。


 現実に引き戻される音。


「あ……」


 彼女が、少しだけ距離を取る。


「次、授業ですね」


「だな」


 名残惜しさが、少しだけ残る。


「また、来てくれますか?」


 確認するような声。


「来るよ」


 今度は、迷わない。


「待ってます」


 柔らかな笑顔。


 その表情を、しっかりと目に焼き付ける。


 そして、保健室を出る。


 廊下に出た瞬間。


 空気が変わる。


 ざわめき。


 視線。


 だが。


 もう、気にならなかった。


 理由は単純だ。


 選んだのは、自分だ。


 そして。


 向こうも、選んでいる。


 その事実だけで、十分だった。













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