第22話 婚約破棄騒動
王都の社交界。
豪華なサロンで、貴族たちがざわめいていた。
理由は一つ。
新しい断罪事件が起きたからだ。
ある若い貴族が宣言した。
「本日!」
高らかな声。
「私は婚約を破棄する!」
周囲がどよめく。
「理由は明白だ」
男は指を突きつけた。
「この女は!」
「ヒロインをいじめた!」
指されたのは、一人の令嬢だった。
青ざめている。
その隣では――
涙を流す少女。
「ひどい…」
彼女が噂のヒロインだった。
社交界は騒然となる。
「また婚約破棄だ」
「断罪事件だぞ」
「王立学園の伝統だ」
しかし。
その事件はすぐに断罪アカデミーに届いた。
アカデミー
講堂。
レティシアが説明する。
「今回の事件は」
黒板に書く。
婚約破棄断罪事件
学生たちが顔を見合わせる。
リリスが突然立ち上がった。
「これは!」
レオン
「どうしました」
リリスは力強く言う。
「悪役令嬢テンプレ!」
教室が静まる。
王子アルフレッドが言う。
「テンプレ?」
リリスは熱弁を始めた。
「婚約破棄!」
「ヒロイン!」
「悪役令嬢断罪!」
机を叩く。
「完璧な構図よ!」
フィオナが頷く。
「確かに舞台として美しい」
王子は頭を抱えた。
「なんで嬉しそうなんだ」
レティシアは静かに言った。
「問題があります」
黒板にもう一つ書く。
証拠不十分
レオンが反応する。
「証拠が怪しい?」
レティシア
「はい」
「証言しかありません」
沈黙。
レティシアは学生たちを見る。
「調査してください」
調査開始
学生たちは社交界へ向かった。
リリス
事件の構図を整理していた。
「まず」
紙に図を書く。
悪役令嬢
↓
ヒロイン
↓
王子
リリスは言う。
「テンプレ通りなら」
「悪役令嬢が嫌がらせ」
「ヒロインが被害者」
フィオナ
「劇としては完璧」
しかし。
レオンが口を開いた。
「証言がおかしい」
レオン
証言を並べる。
ヒロイン
「ドレスを破られた」
侍女
「ドレスは無事だった」
ヒロイン
「階段から突き落とされた」
学生
「転んだだけ」
レオンは眉をひそめた。
「矛盾しています」
フィオナ
彼女は事件の状況を再現していた。
椅子を並べる。
「ここが階段」
「ここがドレス事件」
演じてみる。
そして言う。
「この位置から」
「突き落とすの無理」
王子
「演出破綻か」
フィオナ
「完全に」
真相
学生たちはヒロインに再び話を聞いた。
クラリスが静かに尋ねる。
「本当に」
「いじめられたんですか」
ヒロインは涙を流す。
「もちろんです!」
しかし。
レオンが証言を並べる。
「ドレス事件」
「証人なし」
「階段事件」
「証言矛盾」
リリスが気づいた。
「待って」
「これ…」
王子を見る。
ヒロインは一瞬だけ視線を向けた。
その先にいたのは――
王子アルフレッド。
沈黙。
レオンが言う。
「目的」
「王子」
ヒロインの顔色が変わった。
リリス
「婚約破棄させて」
フィオナ
「悪役令嬢追放」
王子
「それで俺と?」
ヒロインは何も言えなかった。
結果
事件は解決した。
婚約破棄は取り消し。
断罪は中止。
冤罪が防がれた。
アカデミー
講堂。
学生たちは報告を終える。
レオン
「証言矛盾」
フィオナ
「状況再現」
リリス
「動機分析」
レティシアは静かに聞いていた。
そして言う。
「正しい判断です」
学生たちの顔が明るくなる。
リリス
「やった!」
フィオナ
「冤罪阻止!」
王子も笑う。
「今回は良い断罪だったな」
しかし。
レティシアは静かに言った。
「いいえ」
教室が静まる。
レティシアは黒板を見る。
「断罪とは」
ゆっくり振り返る。
「人を裁くことではありません」
沈黙。
レティシアは続ける。
「冤罪を防ぐこと」
学生たちはその言葉を聞いていた。
それが。
断罪アカデミーの――
本当の意味だった。




