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悪役令嬢レティシアは怒っていた  作者: 南蛇井


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第18話 天才と理想

夜。


断罪アカデミーの校庭。


昼間の喧騒は消え、静かな風だけが草を揺らしていた。


遠くで寮の灯りがいくつか見える。


学生たちはもう部屋に戻っている時間だった。


 


その校庭に、一人の女性が立っている。


レティシア・グランベル。


 


彼女は夜空を見上げていた。


 


「星がよく見えますね」


 


静かな声。


 


背後から返事が来る。


 


「帝国より空気が綺麗なのかしら」


 


レティシアは振り向く。


 


そこにいたのは――


カサンドラ・ヴァルメリア。


 


黒いドレスが夜の闇に溶けていた。


 


二人はしばらく何も言わなかった。


 


ただ風だけが流れる。


 


やがてカサンドラが口を開く。


 


「あなた」


 


少し笑う。


 


「理想主義ね」


 


レティシアは静かに答えた。


 


「あなたは現実主義です」


 


カサンドラは肩をすくめる。


 


「帝国では」


 


「理想は贅沢品なの」


 


ゆっくり歩きながら言う。


 


「国家が必要なら」


 


「冤罪も起こる」


 


その言葉は淡々としていた。


 


恐ろしいほどに。


 


レティシアは表情を変えない。


 


「それを防ぐために」


 


一歩前に出る。


 


「断罪がある」


 


カサンドラは止まった。


 


そして小さく笑った。


 


「矛盾してるわ」


 


「冤罪を防ぐ制度で」


 


「人を裁くの?」


 


「完璧じゃない人間が?」


 


レティシアは迷わない。


 


「はい」


 


カサンドラは眉を上げた。


 


レティシアは続ける。


 


「だから」


 


「証拠が必要です」


 


「弁明が必要です」


 


「審理が必要です」


 


夜風が吹く。


 


レティシアの髪が揺れた。


 


「人は間違える」


 


「だからこそ」


 


「制度が必要なのです」


 


カサンドラは少し黙った。


 


その表情は、どこか楽しそうだった。


 


「あなた」


 


「本当に信じてるのね」


 


レティシアは言う。


 


「ええ」


 


「信じています」


 


「それが正義です」


 


沈黙。


 


二人の間に静かな時間が流れる。


 


カサンドラは夜空を見上げた。


 


星がいくつも光っている。


 


「帝国ではね」


 


「正義は」


 


少し考えてから言う。


 


「勝った側が決めるの」


 


レティシアは答える。


 


「ここでは違います」


 


「証拠が決めます」


 


カサンドラは笑った。


 


「面白い」


 


ゆっくり振り向く。


 


「あなた」


 


「革命家になれるわ」


 


レティシアは首を振る。


 


「いいえ」


 


「私は教師です」


 


その言葉にカサンドラは少し驚いた。


 


そしてまた笑う。


 


「教師が一番危険なのよ」


 


風が止む。


 


二人は互いを見た。


 


帝国の天才。


 


王国の理想。


 


思想は違う。


 


立場も違う。


 


しかし。


 


二人は理解していた。


 


この出会いが。


 


ただの偶然ではないことを。


 


カサンドラが言う。


 


「ねえレティシア」


 


「もし」


 


「あなたの正義が」


 


「世界を壊したら?」


 


レティシアは答える。


 


「そのときは」


 


少しだけ微笑んだ。


 


「もう一度考えます」


 


カサンドラは静かに笑った。


 


「本当に面白いわ」


 


夜の校庭。


 


二人はしばらくそのまま立っていた。


 


敵なのか。


 


味方なのか。


 


まだ誰にも分からない。


 


ただ一つ確かなことがある。


 


この二人は――


 


いつか世界を変える。

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