第14話 天才の試験
断罪アカデミーの講義室。
その日の黒板には、いつもより多くの紙が貼られていた。
証言書。
証拠記録。
目撃報告。
学生たちは席につきながら、すでに顔をしかめている。
「多すぎない?」
リリスが紙の束をめくる。
「証言だけで十枚ある…」
フィオナ
「演出どころじゃない量ね」
レオンはすでに読み始めていた。
「……証言が矛盾しています」
王子アルフレッドは机に肘をつく。
「いや、そもそも何の事件だこれ」
そのとき。
レティシアが教壇に立った。
「本日の授業」
チョークで黒板に書く。
断罪試験
学生たちは姿勢を正した。
レティシアは淡々と説明する。
「事件は商人殺害事件」
「証言は複数」
「証拠は不完全」
黒板の横の紙を指す。
「この中に」
「真実があります」
学生たちは一斉に資料を見る。
レティシアは続ける。
「注意点」
三本の線を引いた。
偽証人
矛盾証拠
誘導証言
教室がざわつく。
リリス
「全部罠じゃないですか」
レティシア
「その通りです」
王子が小声で言う。
「性格悪い試験だな」
レティシアは言った。
「開始」
その瞬間。
教室が静まり返る。
紙をめくる音だけが響く。
レオンは証言を順番に整理している。
「この証人は時間が矛盾している…」
フィオナは事件の流れを書き出していた。
「舞台構成としては…」
リリスは悩んでいる。
「悪役令嬢っぽい人がいない…」
時間が過ぎる。
十分。
十五分。
二十分。
学生たちはまだ悩んでいた。
そのとき。
椅子が動く音がした。
カサンドラだった。
彼女は答案用紙を持って立ち上がる。
静かな足取りで教壇へ。
レティシアの前に置く。
「終わり」
教室が止まった。
王子
「え?」
レオンが時計を見る。
「まだ五分です」
カサンドラは席に戻る。
何事もなかったように座る。
再び静寂。
レオンは額に汗を浮かべている。
「まだ証言の整理が…」
三十分後。
レティシアが言った。
「終了」
学生たちはぐったりしていた。
レオン
「まだ途中です」
レティシアは答案を確認する。
一枚。
二枚。
そして。
カサンドラの答案。
教室は静まり返る。
レティシアはゆっくり顔を上げた。
ほんのわずか。
驚きが表情に出る。
学生たちがざわつく。
レオン
「どうでした?」
レティシアは言った。
「満点です」
教室が爆発した。
「ええ!?」
王子
「マジか!」
レオンは答案を見たがった。
レティシアは説明する。
「犯人」
「証拠」
「動機」
「すべて正解」
しかしそれだけではない。
レティシアは続ける。
「さらに」
「全員の誤答も指摘しています」
学生たちが凍る。
レオン
「そんな…」
レティシアは答案の一部を読む。
「証人Bの証言は」
「証人Cの誘導による偽証」
「証拠Dは」
「事件後に作られた」
レオンが震えた。
「……完全分析」
レティシアはカサンドラを見る。
ほんの少しだけ。
興味が強くなっていた。
カサンドラは肩をすくめる。
「簡単よ」
リリス
「簡単じゃない!」
フィオナ
「私まだ舞台構成途中だった!」
王子はため息をついた。
「天才ってやつか」
そのとき。
カサンドラが言った。
「でも」
教室が静まる。
「帝国なら」
カサンドラは答案を指した。
「この犯人」
一瞬の間。
「即刻処刑ね」
教室が凍りついた。
リリス
「え」
フィオナ
「今なんて」
レオン
「まだ証拠は…」
カサンドラは平然としている。
「疑いは十分」
「秩序のためなら」
「それでいい」
沈黙。
王子が小さく言う。
「怖い国だな」
レティシアは静かにカサンドラを見ていた。
その瞳には。
確かな確信があった。
この少女は――
天才だ。
そして同時に。
危険な思想を持っている。




