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悪役令嬢レティシアは怒っていた  作者: 南蛇井


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第13話 帝国の視察団

断罪アカデミーの朝は、いつも通り静かに始まるはずだった。


しかしその日、校門の前には見慣れない旗が立っていた。


黒地に銀の双頭の鷲。


帝国の紋章。


学生たちは遠巻きにそれを見ていた。


 


「帝国の旗だ…」


「なんでここに?」


 


門の前には黒塗りの馬車が数台並び、鎧を着た護衛兵が立っている。


ただの来客ではない。


それは誰の目にも明らかだった。


 


その時、校舎の廊下を慌ただしく走る足音が響いた。


 


「大変です!」


 


リリスが講義室に飛び込んでくる。


 


「帝国の人が来てます!」


 


教室がざわめく。


 


レオンが眼鏡を押し上げた。


 


「帝国?」


 


フィオナ


「外交事件?」


 


王子アルフレッドは窓の外を見て眉をひそめる。


 


「いや、普通じゃないな」


 


そこへ、静かな足音。


 


レティシアが教室に入ってきた。


 


いつも通り落ち着いた表情。


 


彼女は学生たちを見回す。


 


「王宮から通達が来ています」


 


教室が静かになる。


 


レティシアは紙を広げた。


 


「帝国視察団来訪」


 


学生たちがざわめく。


 


レティシアは続ける。


 


「理由は」


 


少し間を置く。


 


「教育交流」


 


王子がぼそっと言った。


 


「絶対違う」


 


レオンが頷く。


 


「断罪アカデミーの監視でしょう」


 


レティシアは否定も肯定もしなかった。


 


そのとき。


 


廊下の外から重い足音が聞こえてきた。


 


扉が開く。


 


数人の黒衣の貴族が教室に入ってきた。


 


帝国の使節団だった。


 


先頭に立つ男は長身で、灰色の髪を後ろに撫でつけている。


鋭い目。


冷たい表情。


 


王子が小さく呟いた。


 


「……マジか」


 


レオンも顔色を変えた。


 


「帝国法務大臣」


 


「グラディウス卿」


 


教室が凍りつく。


 


帝国の法律と粛清を司る人物。


 


政治家というより、処刑官に近い男だった。


 


グラディウス卿はゆっくり教室を見渡す。


 


学生。


黒板。


断罪アカデミーの紋章。


 


そして口を開いた。


 


「興味深い」


 


低い声だった。


 


「帝国はこの学校に興味があります」


 


学生たちは息を呑む。


 


その視線が一人の少女で止まった。


 


黒いドレス。


 


カサンドラ・ヴァルメリア。


 


彼女は静かに椅子に座っている。


 


学生たちはその瞬間、気づいた。


 


「……あれ」


 


リリスが小声で言う。


 


「カサンドラ様って」


 


レオンが続けた。


 


「帝国の貴族」


 


フィオナ


「まさか」


 


王子が言った。


 


「最初から…」


 


学生たちは理解した。


 


カサンドラはただの留学生ではない。


 


彼女は――


 


帝国の観察者。


 


グラディウス卿がカサンドラを見る。


 


「どうだ」


 


「この学校は」


 


カサンドラは少し肩をすくめた。


 


「まだ分かりません」


 


グラディウス卿は視線をレティシアへ向ける。


 


「見学させてもらえるか」


 


教室の空気が張り詰めた。


 


帝国の監視。


 


普通なら断る。


 


しかし。


 


レティシアは淡々と答えた。


 


「見学は自由です」


 


王子が小声で言う。


 


「止めないの?」


 


レティシアは小さく言う。


 


「断罪は」


 


「隠すものではありません」


 


グラディウス卿は少しだけ笑った。


 


「大胆だ」


 


視察団は教室を出ていく。


 


学生たちはようやく息をついた。


 


リリス


「怖すぎる…」


 


フィオナ


「完全に政治じゃん」


 


王子はカサンドラを見る。


 


「お前」


 


「スパイだったのか?」


 


カサンドラは笑った。


 


「観察者よ」


 


その日の夕方。


 


校門の外。


 


帝国の馬車の前で、グラディウス卿が立っていた。


 


彼はカサンドラを見る。


 


「報告を期待する」


 


カサンドラは軽く礼をした。


 


「もちろん」


 


グラディウス卿は馬車に乗り込む。


 


馬車がゆっくり動き出す。


 


カサンドラは校舎を見上げた。


 


断罪アカデミー。


 


レティシアの学校。


 


彼女は小さく呟いた。


 


「でも」


 


ほんの少しだけ笑う。


 


「少し面白いのよね」


 


「この学校」

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