同性同名
「クチャクチャ...こんな所まで何の用?」
俺を一目見ると面倒臭そうに聞く。
白色に少し赤を混じらせた美しい高貴さを漂わせる鱗に青い目。だがその美しさもその周りの整理をしていないであろう汚い肉や骨の跡と子供っぽい態度で台無しになっている、非常に勿体無い奴だ。
それに加えてドラゴンにしてはかなり小さく、俺の背よりも少し大きい位である。
普通のドラゴンは小さいので五、大きいので二十トールあるので、こいつの小ささは少し異常だ。
「いやーちょっと此処に居るゴブリンに獲物を盗られたから取り返しに来たんだが...」
「あー、あいつらが取ってきた肉?ゴメン、食べちゃった」
何だと?肉を食った?お、俺の聞き間違いかも知れない。念の為もう一度聞いておこう。
「...スマン、もう一回言ってくれるか?」
「聴こえなかった?肉はア・タ・シが食べました!」
「は?」
もう一度聞いてみたが、やはり聞き間違いでは無かった様だ。
その事を把握すると同時に俺の中の本能が強く命令を出す。
この舐め腐ったドラゴンに身の程を教えてやれと。
だがしかし、俺も大人だ。きっとこのドラゴンは子供で、社会的倫理観を学んでいないのだろう。
大人になっても人から物を奪う事しか出来ないゴブリン共とは違うと。
それに、普通に戦うとしても麻薬性の草も殆ど無くなったし、麻痺消し薬も数が足りない。
便秘薬でもお子様だし最悪垂れ流してきそうだ。
という事で戦うことは諦めて取り敢えずこのドラゴンの話を聞いてみよう。
「何でゴブリン達の肉をお前が食ってるんだ?」
「んー?何でって、アタシが取ってきてって言ったんだもん」
駄目だ!こいつの話を聞いてると堪忍袋が保たない。
これ以上肉の件の追及は止めておこう。
多分更に追及するとコイツを殴ってしまう。
「...はぁ、話を変えるがお前ってどう言うタイプのドラゴン何だ?」
俺はドラゴンは結構狩ってきた自信がある。
特徴を聞けば種族位は分かるだろう。
「えーっとね、天才で、賢くて、凄くてミラクルなスーパードラゴン!」
うん。そんな事言うと思ったよ。そもそも何で俺はこんな馬鹿に質問なんてしたんだ?
後々考えると喋るドラゴンなんて聞いた事も見た事も無かった。
そう言う意味も含めてこの質問は意味が無かったな。まあ流石に次の質問には答えられられるだろう。
「お前の名前は?」
「マネア!」
思ったより数倍面倒な答えが返って来た。
コイツがマネア?いやいや、あり得ないだろ!
共通点としては片ずけをしない所は似てるが、それを考慮したとしてもコレがもしマネアだとしたら変わりすぎだろ!
マネアは礼儀もしっかりしていたし、自分のやりたい事より他の人の願望を優先していた。
そんなマネアがこんな我侭な訳が無い。俺はそう信じている。
取り敢えずコイツはマネア(仮)と言う事にしよう。
次は...コイツの種族について頑張って聞き出すとしよう。
そもそも喋る魔物なんて初めてだ。主ゴブリン然り、マネア(仮)然り。
「マネア(仮)、お前は何処からやって来たんだ?」
「ちょっと〜仮って何よ〜仮って〜」
「良いからさっさと答えろ」
「仕方無いなーアタシはーー」
「マネア様!」
無駄に緊張感の無いこのドラゴンとは対象的な声が響く。
「何〜?配下一号〜」
「その者は貴方様の配下を一人、殺害しました!」
その言葉を聞いた瞬間、これまで全く強さを感じさせなかったドラゴンの気配が変わる。
さっきまでの間抜けな雰囲気は消え、小さな体からは考えられ無い量の夥しい魔力量。俺を見つめる青い目は深みを増し、少し恐怖感すら覚える。
不味い。完全に警戒させてしまった。あのクソゴブリンめ、やりやがった。
素手では分が悪い。流石に撤退をしなければ。
俺がすぐに逃げ出そうとすると、マネア(仮)に回り込まれてしまった。
「ねえ、さっきの話って本当?」
「違う!襲って来たから無力化はしたが決して殺してはいない!」
「マネア様!それは嘘です!ここに証拠があります!」
主ゴブリンが合図すると、部下ゴブリン達が俺がさっき麻痺らせたゴブリンが運ばれて来た。
「それが証拠になると思ってんのか!なら俺がその証拠を覆す証拠を出してやるよ!」
俺は懐に入れてあった最後の麻痺消し薬を倒れているゴブリンの口に向かって投げつける。
俺の放った麻痺消し薬は、確かにゴブリンは飲んだが...起きない。
あれ?麻痺消し薬の効果ってそこまで強かったか?
いや...違う。あれは相当なレベルの死んだフリをしているのだ。
不味い...不味いぞ。このままではドラゴンと正面から戦う事になる。
「...もう完全に怒ったぞー!!」
駄目だった。クソッ、万策尽きた。やるしか無い。
そうして俺は、勝算の無い戦いに参加させられるのであった...
『ルバスは逃げ出した!』
『しかし、回りこまれてしまった』
『快心の一撃!』
『あなたはしにました。』
とはなりません。




