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下剋上

「ガアアァァ!」

マネア(仮)が雄叫びを上げ、その声の衝撃で部屋の所々にヒビが入った。

竜の雄叫びは耳を壊し、強い種だと体の脆い部分は粉々になる。

下位の竜の雄叫びは耳を強く塞げば影響は皆無だが、中位の竜からは耳を魔法障壁で覆えば影響無し

上位の竜の場合、雄叫びを使われる前に封じ込めるのが一番手っ取り早い。

コイツの雄叫びは耳を手で塞いでも耳が痺れた。

つまりコイツは中位ぐらいの竜か?なら、逃げる事ぐらいは出来るかも知れない。

俺は麻痺消し薬の原料を少し耳に詰め込む。

良し、少しずつ耳の痺れが取れて来た。

「ガアアァァ!喰らえ!」

そう言うとマネア(仮)は口から炎を放つ。

あれは竜口火炎(ドラゴンフレイム)か。高威力だが、攻撃のタイミングが非常に分かり易い技だ。

俺は余裕で回避し、間合いの内側には入り込む。

そしてドラゴンの動きを一瞬でも止められる可能性のある攻撃の準備を行う。

「ギャァァ!来るなー!」

「そう言われても俺は命懸けだからな。容赦はしない」

俺はマネア(仮)が距離を取ろうとするタイミングを見計らってドラゴンの脆い部分である肩を狙い、準備の終わった一撃を放つ。

「お返しだ!吸収反撃拳(ドレインカウンター)!」

俺の放った吸収反撃拳(ドレインカウンター)はマネア(仮)の肩の部分に直撃した。

この攻撃を受けたマネア(仮)本人はと言うと、最初は「ザンネーン!効きませーん!」などとほざいていたがどんどん顔が赤くなって行き、真っ赤になった頃にはガタガタ震えていた。

そして最後に、「お、覚えてろ〜」と情け無い捨て台詞を吐き、完全に気絶した。

...ここまでこの技って効果あったっけ?俺はせめて数秒稼げば良い方だと思っていたんだがまさか気絶するとは。

同じ自分が使える属性の技は、自然と防御も身につく筈なのだが...

まあ良い。今はドラゴンを一時的に無力化した事実を受け入れる事にしよう。

さっさとこの逃げ道を塞いでいるゴブリン共を倒してこんな所から逃げ出そう。

「オラ!どけ!俺はさっさと逃げたいんだよ!」

「...逃す筈が無いだろう!」

「キー!」

「キキキー!」

こいつら、さっき倒した奴とは思えないぞ!どんだけ逃したく無いんだ!

しかし、俺も早く逃げたいんだ。ここで負けるわけにはいかない。

「さっさとどけぇぇ!どらあああぁぁ!」

俺は無理矢理ゴブリン共を退かし、空いた道を疾走する。

良し、このまま進めば逃げ切れる。

「...逃がさないと言った筈だが」

主ゴブリンが俺を超える速さで追いつき、俺の逃亡を妨害する。

だが俺は纏わり付く虫を払うかの様に主ゴブリンを退かし、俺は走る。

「キキーキ!」

部下ゴブリンが何処から入手したのか分からない小物を大量に投擲し、もう一人が行く先々で障害物を設置する。

「うおおお!」

そんな事も構わず俺は走って走って走りまくる。

そんな障害物レースを延々と繰り返し、ようやく出口が見えて来た。

ようやくこんな所から出れる。結局飯は取り返せなかったかが、まあ王都に着いた後に存分に食えるだろう

だが、俺のそんな考えを断ち切る様に邪魔が入った。

俺がゴブリンの巣窟から出ようかという時、突如巨大な石が落ちて来て、出口を塞いだ。

「...フフフ、逃げ道がなくなって仕舞えばお前に勝ち目は無いだろう。覚悟するがいい!」

「クソッ、お前らしつこ過ぎだろ!何でそこまで執念深く追ってくるんだ!」

「...お前を逃せば金や名誉なんて言う下らない物に異常な執着を持つ冒険者共の獲物になってしまうだろうマネア様の為にも私は下劣で阿呆な冒険者共に見つかる訳には行かないのだ」

冒険者の標的にされ無い為、か...。確かにコイツの言い分通りの冒険者は少なからずいる。

魔物から採取出来る皮や肉などの素材は危険だが有用な物が多く、高値で売れる。

その素材を横取りする奴等が偶にいて、噂でしか聞いた事しか無いが、素材の横取りを生業とした者もいると言う。

更に、冒険者同士の争いに発展し、殺害現場となる事も有るそうだ。

だが、中位以上のドラゴンに冒険者だけで太刀打ち出来るとは思えないが...

ん?主ゴブリンが急に何か取り出したぞ?あれは...石板か?魔法具にしては弱いが...

何かは分からないが、発動させると不味い気がする。

俺は直ぐに怪しい石板を弄っている主ゴブリンに向かって歩を進める。

「何だそれは?」

「...直ぐに判るだろう」

主ゴブリンの言う事は正しかった。石板を弄り終えた主ゴブリンは、石板を胸の方に装着した。

装着された石板は主ゴブリンと同化し、主ゴブリンの姿を変形させて行く。

そして主ゴブリンが一声。

「同化して下さいませ!我が主よ!」

と大声を上げる。その声が響いたその後、主ゴブリンの姿が安定して行き、やがて姿が見える程になった。

その姿は、この世の物とは思えない程の美しい紅蓮色の鱗に覆わた、美しい竜。

瞳は澄んだ蒼で、中には確固とした意志を感じる。

そして威厳のある声で言い放った。

「...我、紅蓮竜ベルヒューズ、汝を淘汰する者」

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