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バハムート宇宙を行く  作者: 珈琲ノミマス
お掃除開始。クロの清掃大作戦!

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叱責の後で

 アヤコがクロを連れて行ってから、一時間が経とうとしていた頃、ようやく扉が開いた。


 そこから姿を見せたのは、すっかり怒りのオーラが消えた笑顔のアヤコと、その後ろを静々とついてくるクロだった。


 その様子は、部屋へ連れて行かれる前と明らかに違っていた。頭を押さえながら戻ってきたその姿は、心なしか少し痩せたような印象すらある。それだけで、今まで以上にきっちり叱られたことが伝わってくる。


 アヤコは何事もなかったかのようにシゲルの横へ腰を下ろす。一方のクロはソファーには座らず、皆が囲むコの字型のソファーの前まで進むと、その場で静かに正座し、深々と頭を下げた。


「この度は、何も説明せず、勝手に決め、行動して申し訳ございませんでした」


 その謝罪は、いつものように流すような態度ではなく、想像もつかないほどきっちりしたものだった。


 リビングの空気がわずかに静まる。


 シゲルは面白そうに口元を緩め、ウェンは小さく目を瞬かせ、スミスは酒の入ったグラスを傾けながらも、その光景をちらりと眺めて少し笑う。タサル一家もまた、驚きつつも、なぜか少しだけ肩の力を抜いていた。


 アヤコはクロの謝罪に頷き、最後を締めるように穏やかな口調で言う。


「いい? 即断即決の行動が悪いとは言わないけど、少しは説明しようね、クロ」


「はい」


 やんわりと締められ、クロは顔を上げた。


 その返事には、逆らう余地など最初から存在していなかった。すでに十分に理解させられた後なのだろう。


「じゃあクロ。ちゃんと説明して」


 アヤコに促され、クロは一つ息を整えると、タサル一家がこれまでどういう経緯を辿ってきたのか、そしてなぜ今ここにいるのかを語り始める。


「かくかくしかじか」


「クロ、ふざけない」


「……はい」


 即座に釘を刺され、クロは肩をわずかに落とした。


 ついさっきまできっちり絞られていたというのに、そこでなお軽口を挟めるあたり、ある意味では大したものだった。


「クロ、お前、ここでそれをできるのはさすがだわ」


 シゲルは呆れ半分、面白さ半分といった顔で笑いながら、その様子を肴にビールをあおる。


「タカミもサールも飲め」


「いえ、そういう訳には」


 タカミは慌てて両手を振り、サールも遠慮がちに辞退しようとする。だが、シゲルはそんな反応を気にする様子もなく立ち上がると、有無を言わせず缶ビールを取り出し、ぷしりと蓋を開けて二人の前に置いた。


「気にするな。全部こいつが悪い。それだけだ」


 そう言って、シゲルは正座しているクロを指さし、くくっと喉を鳴らすように笑う。


 スミスもサングラスの位置を指先で直しつつグラスを傾け、その強引さに相変わらずだなとでも言いたげに、わずかに口元を緩めた。


 タサル一家は、勧められた缶ビールとクロを見比べ、どう反応していいのか少し困ったような顔をする。けれど、この場の空気そのものが、もう完全にシゲルたちの流れになっていた。


「で、クロ。どうなったんだよ」


 シゲルがソファーに深く座り直し、改めて先を促す。


 クロは今度こそ居住まいを正し、真面目な顔で話し始めた。


 軽口も誤魔化しもなく、タサル一家を拾うに至った経緯、その背景にあった事情、自分がどう動き、何を考えたのかを、順を追って一つずつ説明していく。途中、タカミやサールが息を呑み、タサルが複雑そうに視線を伏せる場面もあったが、クロはそこで言葉を濁さなかった。


 隠しても意味がないとわかっているからこそ、今はきちんと話すしかない。


 そういう腹の括りが、その語り口には出ていた。


 そして、一連の流れを話し終えると、アヤコは小さくため息を吐いた。だが、その顔は呆れながらも、もう仕方ないと受け入れているようなものだった。


 一方のシゲルは、話の流れそのものが面白くてたまらないといった様子で、ビールをぐいと大きく飲む。


「なので、また戸籍の改ざんをお願いします」


 話の締めに、クロはそんなことをさらりと言ってのける。


「わかった、やってやるよ。それにしても、店を始めるのか」


 シゲルが愉快そうに笑うと、クロもにやりと笑った。


「ええ。タサルには店長を任せます。タカミさんとサールさんには、ジャンクショップと新しく始める店の事務や会計、それと私のお金の管理を任せる予定です」


 その言葉には、思いつきではなく、すでにある程度組み上がった計画の響きがあった。ただ助けるだけで終わらせるつもりはないのだと、その場の全員に伝わる。


 ――アヤコとシゲル以外には。


(これで、行き当たりばったりなんだよな)


 二人は苦笑しながら、真剣な顔で話すクロを見つめていた。

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