05 放棄と沈黙
『ママ、疲れちゃった。達郎くんと、コテージを出て来ちゃった。幸次くん達のことよろしくね』
明日実にそんなメールが届いた。竜也は絶句した。高校2年生でも子どもだよね。それを置き去りにするって、どういう感覚なのだろう。
「どうしよう」
明日実は困惑している。
「戻る?」
明日実のおばあちゃんが言った。
「戻りたくはない」
明日実の言うことに、竜也も同意した。車内が沈黙になる。
「一旦、私の家に向かうね」
「ごめん、おばあちゃん。で、3日くらい泊まれたりできる?」
「いいわよ。まあ3泊4日のつもりだったから、こっちは大丈夫だよ」
「うん、でもママってわざとかな。おばあちゃんの家の近くに3泊4日でキャンプしようって言ったし」
「その可能性はあるね。最初からあの男と駆け落ちするつもりだったんじゃない」
「で、私ってもしかして捨てられた」
「まあ、考えすぎでしょう」
明日実のおばあちゃんは、孫のために言葉を濁しているのだろうが、嘘をつききれていない。
「おばあちゃん、気を使わなくていいよ」
「明日実は夏休みが終わるまで、私の家にいなさい。竜也くんは4日後に向こうまで車で送るね」
「はい、なんかありがとうございます。」
「パパに連絡したほうがいいよね」
「そうね、明石さんに連絡は必要ね」
明日実の両親は、去年離婚しているようで、明石とは明日実の父親の名前のようだ。
「コテージのことで、警察に連絡した方がいいだよね?」
「そうだよね。私たちではどうしようもできないし」
コテージで今日初めてあった3人が今どうなっているかなんて、竜也には想像できない。
[はい、そうです。住所は・・・3人がコテージに居ます。お願いします。親たちが居なくなって、はい、私ともう一人は私の祖母が迎い来てれて。はい。それは嫌です。行きません。]
明日実が警察に電話をかけた。
「大丈夫だった?」
「うん、今日は遅いし、高校生だから明日に様子を見に行くって」
「明日か。一晩ぐらい大丈夫だろう」
「三波もあの西田達郎に利用されただろうけど、ごめんね。私もどうすることもできなくて」
明日実のおばあちゃんが言った。その日、コテージの山から下った少し先の明日実のおばあちゃんの家に泊まった。寝てる間、海の近くで、さざ波が聞こえてくる。
★
朝起きて、居間に朝ご飯を食べに行くと、明日実がすでに居た。
「おはよう」
「ごめんね。昨日の残りで」
「いや、美味しいです。」
なにか不思議だった。キャンプに来たはずが、明日実のおばあちゃんと三人で食事をしていることに違和感を覚えてくる。
「竜也、あとで海に行こう」
「ああ、いいよ」
何をやればいいのか分からないから、明日実の言葉に同調するしかない。
[はい、そうですか。人違いでは?分かりました。そちらに参ります]
明日実のおばあちゃんが誰かと電話をしていた。
「どうしたの?」
「警察から連絡が来た。三波が亡くなったて、遺体を確認しに来てくれって」
明日実が絶句している。
竜也もついて行くことになった。車の中では、沈黙が流れていた。




