三月五日 スナップショット
六十六日目 四分の二です
「逆に凄い」
「渋い」
誰の声だ?
大木が立ち並ぶ森の中。
小さなお社と、その前の一角が一直線に幅三十メートルほど、長さ五十メートルほど切り開かれている。
そのスペースを使って設置された、弓道場と観客席と観客が場違いすぎて、違和感が半端ない事に…
何故ここまで落差があるの?
「今手に入る資料だと此の中間が無いの」
んー。そう言えば、此まで神社も寺院も教会も見た記憶が無いな… 此の世界。
神様もどきはいっぱいいるのに…
いや、それよりもだ。
さつきが秘蔵してる映像資料を探せば、色々出てくると思うんだけど? 結構ネタ扱いされてたはずだよ?
「ああ! そう言えば見かけた気がする!」
ハッとした表情で、掌に拳をポンッとするミュウ。
今から修正じゃ時間掛かるし、大きな神社の方にしようか?
「有り難う」
最初の境内に戻った。しっかし、豪華だなー。
後、観客席に居る人たち、誰?
「無観客は淋しいので用意したの。データは適当」
そうですか。
なんか、適当にお話してたり、カメラ構えてたり、お弁当広げてたりと、かなり自由なんですが…
そういう物だと思っておこう。
「じゃあ、初体験のみんなに弓の引き方、覚えて貰おう」
ユリアが声を上げて、みんなで射場に向かう。
って言うか、夫々適当なマシンに乗っかって、バーチャルな射場に移動なんだけどね。
「んじゃー、本格的な作法なんて知ってる人居ないよねー?」
と言う、ユリカの質問に
「知らないー」
「始めてー」
「何するのかも判んない」
等など。だよね。
「まー、弓引いてー。矢を飛ばしてー、幾つ的に当たるかってゲームかなー」
うん。間違ってはいないな。
しかし、ホントならゴーグル掛けた面々が、各マシン毎にに均等に散らばってるはずなのに。
視覚情報からは、素顔のみんなが、わいわいと固まってる状況だよ。
触ればちゃんと感触あるし、触られた方にも伝わってる。
ホント、謎な機械だよなー。
「鹿乃子ちゃん…今さら」
隣に居たミュウに呆れられた。
映像に合わせてシールド技術で形状を作り、表面の触感も映像の物体に合わせてるって説明は聞いたし、体験もしてる。
でもな。改めて考えると、謎しか無いというか…理解出来ん。
むむむー、と考え始めたら背後からメグの声が。
「鹿乃子ちゃん。考えるな!感じろ!!だよ?」
そだね!
使えれば良いんだよ。使って楽しめれば。
作ってくれた人。有り難う!
なんか、背後から笑い声が凄い事に。
じゃれ合っている間に説明が進んで、順番に弓を引いてみる事になった。
始めはお試しで、弓力十二キロ。
引けたのは、なばちゃんだけ。
「もうちょっと強くても良いですねー」
との事で、最終的に、十五キロ。
他のメンバーは、ユリカが引いてた七キロから十キロ位に落ち着いた模様。
弓の長さも身長に合わせて決定。
全員、レーザーサイト搭載。だよねー…
的場までの距離は、わたしとなばちゃんは、六十メートル。わたし達以外が二十八メートル。
的の直径はどっちも一メートル… 酷くない?
次に、的に向かって矢を放ってみる。
まあ、想定通り、まともに飛んだ人は居なかった。
「難しいよー」
「ゲームの弓と、全然違うしー」
「痛いー」
なばちゃんなんか、矢の真上に視線を持ってった所為で、弓と弦に頭を挟まれてたしな。
超、受けてた。心配する声が無いのがなばちゃんらしいと言うか何というか…
「鹿乃子ー。お手本ー」
いや、わたしも我流だぞ?
細かい所作を一切省いて矢を放つ。
あー。中たらないや。
的の右下へ的一個分ハズレ。残念。
どっと拍手が湧き上がったのに吃驚した。
外れたよ?
「矢が飛ぶだけでも凄い!」×いっぱい
改めて、練習開始。
なばちゃん。的は弓の左側から狙ってね!
ユリカ始め、経験済みの面子で簡単にアドバイスしつつ、約一時間。
みんな、的に届く様になってきた。
そろそろ、いっぺん休憩しようか? みんな。
「はーい」×沢山
さっきから、服の端っこをツンツン引っ張られてまして。
ウイーが、休憩の準備が出来たと呼びに来てたんだよ。
なんでわたしの所? 君のオーナー、ユリカだよね?
「ショウヒン ガ オーナー ヲ エラブ コト ハ デキナイ ノ デスヨ」
俯いて溢すウイー。
なんかごめん。
「ひーどーいー!!」
ユリカが喚いてる。
他の皆様? そりゃもう、爆笑中。
一息入れて、それじゃあ本番だって事に。
さっき調整したマシンに、夫々乗って、ゴーグルも装着。
ソフトが起動した。
弓道場が展開されて、みんなの姿も表示される。
全員、白衣、緋袴に千早の姿。
「おおお!」×全員
「綺麗!」×沢山
「可愛い!」×沢山
壮観です。
体操服でって、このためだった模様。
みんな、お互いに姿を見せ合ってわいわいキャッキャと大騒ぎ。
ミュウ、有り難う!
「「ミュウちゃん!此の姿でスナップショット、撮れる?」」
ジーナと麗華がミュウに声を掛ける。
「出来る。みんな、並んで?」
おー。と言う声と共に、みんなで整列する場所を決める。
本殿と的場がバックに来るよう、矢道の玉砂利の上に降りて整列する事になった。
みんなが並ぶとミュウの掛け声。
「鳩が飛んでくるからそれを見てね」
鳩? 何処から?
あ。観客席の上から降りてきた。
地面から二メートル位の高さの止まり木がいつの間にか立てられている。
其処に止まった鳩が、カメラを取り出して構える。
「あははははは。何此、可愛い」×沢山
その瞬間、パチリ。
直ぐに、目の前に、今のスナップが表示された。
「キャー。目つぶっちゃってるー」
「横向いちゃったよー」
「顔が隠れちゃってるー。いやーっ」
途端に大騒ぎ。
「ミュウちゃん! やり直し!! やり直しを要求するよ!!!」×沢山
結局五回、取り直したんだよ。
四分の三へ続きます




