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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年三月
116/252

三月四日 始末書

六十五日目 五分の五です

「ただ今、色々手続き終わったよ」


 と、ユリアの声が、ゲームに(いそ)しむみんなを観察中の、わたし達の背後から。


「お帰り。ご苦労様でした」


 ミュウが答える。


「ユリカちゃん、色々やらかしたって()いたんだけど? 隣にポコポコ増えてたお部屋の事だよね?」


 おおう。情報が早いな。ミュラ姫。


 その通りですよ。対処する(ひま)もなくやらかしやがりましたよ。


「えー? だってだって、(おお)(ぜい)でお()まりするんだしー」


 ユリカがわたわたと言い訳を始めた。


「リビングにマット()けば()()()出来るし、お風呂だって二、三回に分ければ問題ないよね? トイレだって洗面台だって、みんなの部屋にも共同のもあるのに? (これ)までですらやり過ぎだったのに更に増やすとか? 計画性も必要性も、(かけ)()も感じられないんですけど!」


「…ごめんなさい」


 ユリアに()(てき)されてしおしおの涙目になるユリカ。言い訳しないで黙ってりゃ良いのに…


「まあ、やっちまった以上、設置した物は有効に使わないとね。年に何回使うのかは置いといて」


 ユリアのさらなる追撃。


 ユリカ、部屋の隅っこにポテポテと移動して、しゃがみ込んでしまった。


 背中が(すす)けてるよ。


「んで、この惨状もユリカ?」


 と、トレーニングルームのほとんどを占拠するランニングマシ…もとい、仮想ゲームマシンを指差すユリア。


「此は、ケイちゃん」


 ミュウのお返事。


「よし、()(まつ)(しよ)だね」


 哀れ、ケイ。(しか)られるのが確定したらしい。


 最高責任者が喜んで参戦してるのは良いのか? ユリア。


「はぁ。さつきが購入した事にしとけばいいか」


 携帯端末を取り出して、何やら操作を始めるユリア。


 とばっちりで、(さん)(ざい)する事が確定した模様。さつき、ホント、強く生きてね。


「あはははははははははははははははははははは」


 ミュウが耐えきれず爆笑を始めた。


 四人で、ゲームの進行を(なが)めていたら、ウイーがやってきた。


「カノコサン カノコサン。ユウハン ハ イツ ヨウイスレバ ヨロシ?」


 えー? ミュウ、どの位で終わりそう?


「あと三十分位で全滅しそう」


 了解。って事はー、


「ウイー、十八時からで、お願い出来る?」


「ウケタマリー」


 くるりと向きを変えて、ウイーが去る。


「なんか、ウイーの言葉が微妙な気がするの、あたしだけかしら…」


 そんな事は無いですよ。姫。わたしもちょっと変かなって思ってるもん。


 ユリアとミュウもぶんぶんと首、振ってるしな。縦方向に。


「やーらーれーたー!」


 と言う、メグの叫びと共に、VRゴーグルの視界一面にでっかく[GAME OVER]の文字が。


 時刻十七時五十三分。


「もー一回!」×(たく)(さん)


「その前に夕飯だよー。一回みんな手を洗ってねー」


 いつの間にか復活したユリカが声を掛ける。


「はーい」×沢山


 返事はよろしい様で。


 さあ、ダイニングへ、と思ったら、ウイーが客間を指差して待機してる。


 客間を(のぞ)いたら、まるで旅館のお食事風景。


 一人用のお(ぜん)に座椅子、座布団がずらりと並んで、料理が用意されていた。


 こんなに食器やらお膳やらも(そろ)えてたのかよ、ユリカ。


 そう思って視線を向けたら、目を見開いて固まったユリカ。


 あれ? 此、もしかして…


「ウイー? 食器やら、()(たく)やら、どっかでレンタル?」


「モチロン、コウニュウ シタ デスヨ? カノコ サン。オーナー、アトデ シハライ ヨロシクナー」


「ちょーっ!! ウイィーー!!?」


 叫ぶユリカ。


「ウッサイ デスヨ、オーナー。ヘヤ フヤス ノニ クラベレバ ヤスイ モノデ ショウニ」


「うえぇー!? そんなー…」


 ユリカは、泣き(くず)れた。他一同、爆笑中。


 ま、部屋の件でやらかしたんだから、此は此で、有りなんじゃ無いかな。


「ひーどーいー」


 (あきら)めようぜ。ユリカ。


 さあ。夕飯だー。


 と言う訳で、(いただ)きました。大変美味しゅうございました。


 途中経過は省略しました。許せ?


 ユリカも、お腹いっぱいになって(じよう)()(げん)。単純な奴だぜ。良かった良かった。


「いやー。よく考えたらー、お膳や座椅子は(ひつ)(じゆ)(ひん)だったよー。ウイー、グッジョブだー」


「トウゼン ノ ケッカ デス」


 ふんすっ と胸を張るウイー。何だ?この(しゆ)(じゆう)


 一休みした後は、まあ当然の流れで、食事前のリベンジ戦に突入。


 全員で参加。


 わたしが張り切っちゃうと、あっさり終わりそうと言う事で、廃ビルの上に(ひそ)んでスナイパーです。


 ああ、早く、普通の人並みな力の制御を覚えなくては…なのかも。


 わたしの周りに寄ってくる敵と、みんなの周りに寄ってきた中で手が回りそうに無い敵だけヘッドショットするわたし。


 暇です。


 ビルの下では、みんなが大騒ぎしてるんだけどもな。


 (うら)めしい…じゃ無いや。うらやましいぞ。


 逃げ回ったり、追いかけたり、潜んだり、待ち伏せたり、逃げ回ったり…


 みんな、良い運動になってるんだろうね。


 色々危ない場面もありつつも、ステージクリアを繰り返す事十回目。


 ついにゲームクリアした時には、(すで)に二十二時だよ。四時間もやってたのか。暇だった。わたしだけ…


 クリアを祝ってジュースで乾杯した後、みんなでお風呂。せっかくなんで、出来たばかりの大浴場に全員で。


 その後は、雑魚寝しながらお(しやべ)りしよう。とか話してたみんなだったけど、あれだけ動き回った後だからなあ。


 気が付けば一人、又一人と寝落ちしていく。


 最後、残ったのは午前中寝てたユリカとわたしとユリアとミュラ姫。


 部屋の照明を落として、四人でコッソリお話中。


「ユリカ、いくら使ったの?」


「さー? 一般の家一軒分までは行ってないと思うけど?」


 部屋の改造にどの位掛かったんだろうと思って訊いてみればこの返事。


「ま、お金、有る程度使って経済回さないと。だしねぇ」


鹿乃子(かのこ)ちゃんも、割とあっさり大金放出してるじゃない」


 ユリアと姫から指摘される。


「会社が使う金額に比べたら(けた)が違うでしょ?」


 反論してみた。


「回る経路が違うからね。会社の使うお金は一般消費とは別のとこで回ってるんだしさ」


 と、ユリア。


「だけど、ウイーのアレ、判ってやってるのかしらね」


 あれって、座卓やら座椅子やら買い込んだ件ですか?姫。


「だと思うよー? でなきゃ、所有者に無断で買い物はしないと思うんだー」


 え?それ、ウイーの使い込み、ユリカの想定内って事? ん?それよか、ユリカ、お前の無茶も計画的なのか?


「あれ? 鹿乃子ちゃん、時々(にぶ)いよね」


「ユリカのは、みんなに快適に過ごして貰いたいからで、私たちで()(らか)ってるのは、みんなが(きよう)(しゆく)しない様に。だね」


 一晩泊まるだけなのに部屋やらお風呂やら用意されちゃったらふつーは引く、か。そう言えば。


 でも、結構本気で怒ってなかった?ユリア。


「やり過ぎなのは事実でしょ?」


 怖い怖い。声が怖いですよ。ユリアさん。


「八割は本気だよ」


「ごめんなさい。つい出来心です」


「お部屋を作るのだけは、事前に聞いてたんだけどね。付属品までは想定してなかったわね」


「ここまでデカいとは思わなかったしな」


 部屋を用意するとこまでは合意してた()(よう)()()と付属品が想定外だった様です。


 ウイーは、ユリカの行動を(こう)(りよ)して()(しき)用の食事用品一式(そろ)えたんだな。出来た奴だなー。


「絶対、あの子、ハウスキーパーの限界超えちゃってるよね」


「有り得ないんだけどなー」


「鹿乃子マジックだねー」


 いや、ユリカ。それは(かん)(べん)して欲しい。


「でも、サリーちゃんが調べても判んないって言ってるしなー」


 マジですか? ()()、原因の解明をお願いしたいです。


「鹿乃子が関係してるとしか思えないんだけどなー」


 止めてー。ユリカ、それは(いや)だー。


「あ。そうだ。鹿乃子ちゃん。今朝のお仕事の()(らい)(りよう)、もう振り込まれてると思うから、近いうちに確認しておいてね」


「多分、いつものより一桁多いと思うけど」


 えー? いらないよ? そんなに(たく)(さん)。せっかくこの前、()らしたのに。


 ミュラ姫とユリアの報告内容が(ひど)い。


 何に使えと(おつしや)るのでしょうかね。使い道がないんだよー。


 今のが一番疲れたよ。精神的に。


 もう、寝る。


 おやすみなさい。


「「「お休み(なさい)」」」

六十六日目に続きます


昨日、一月一日のお話を、加筆修正しています。よろしければ、ご覧下さい。

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