三月四日 増設
六十五日目 五分の四です
そして、立派なトイレットルームも完成だよ。
どこぞのホテルかって言うよーな奴。化粧台から洗面台、便座他、一式がセットになったコンパクトな個室が、十室も並んでる。
続けて、更に工事の音が。
和室より広い面積がタイルで覆われていく。部屋の半分近くが湯船に…
でけーよ! デカすぎるよ!! 一階のお風呂の四倍は有るよ!
はー。まあ、家主のやる事だからな、好きにしたら良いんだよ。
やれやれ。
「あれ? どうしたの? 鹿乃子。疲れ切った顔してるよ?」
思わずユリカの頭を脇に抱え込んで、脳天に拳でもってぐりぐりぐりぐり…
「痛い痛い痛い痛い。何でー? あたし、なんで怒られてるのー!?」
「やり過ぎだ」
お仕置きされて、望陀の涙、なユリカと共に、一階へと戻る。
ダイニングで、ウイーにお茶をお願い。ユリカと二人、小休止。
疲れたよ。精神的に。
「天辺、はげちゃうよー」
頭をさすりながら、涙目なユリカ。
其処へ、ウイーが顔を出す。
「オカエリ ノ ヨウデス ヨ」
同時に、玄関からは
「ただいまー」×沢山
「お邪魔しまーす」×沢山
声が聞こえた。
「「お帰り」ー」
と、答えながら玄関へと迎えに。
住人は良いとして、その後ろが中々に凄かった。
荷物、でっか!
何処へ旅行にお出かけなんだ?
全員がボストンバッグやらトラベルバッグやらリュックサックやら引き摺ったり背負ったりって。
一人当たり二つ以上… どんだけ荷物が必要なんだ?
「いらっしゃいー。入って入ってー」
ユリカがみんなを案内して地下一階へ。
流石に、一般家庭用にしては大型なエレベーターでも、一回じゃ全員運ぶの、無理だったよ。
最大定員三十人らしいんだけど… それ、鮨詰めになるんじゃね? とか思ったのは内緒だ。
「ひっろーい!!」×十七人
NINJAペア始め、住人一同の視線がユリカに注がれる。
「頑張って、用意しましたー」
得意げな顔のユリカ。何故かイラッとする。
押し入れの半分がロッカーになってるんで、みんなの荷物を其処にしまって、先ずは制服を着替えようか。みんな。
「隣に化粧室があるからねー」
ユリカの言葉にぎょっとする一同。
「すっごーい!」×いっぱい
バタバタと走っていって、トイレットルームが個別になっているのに大騒ぎの一同。
「ユリカ(ちゃん)!やり過ぎ!!」×七人
「えぇー??」
みんなに叱られて、納得いかん。と言う表情のユリカ。
やっぱり怒られた。でも、まだ有るんだよな…
七人を手招きしてお隣の部屋へ、ご案内。
「あぁぁ…」×崩れ落ちる七人の皆様。
大浴場を見て呆然となっております。
既に、お湯も満たされて何時でも入浴可能な状態。いつの間に…
まあ、お客様方には大好評なんですけどね。
其処へ、
「オチャ ノ ジュンビガ デキマシタ ヨ」
と言う声が掛かって、振り向けばウイー。
「有り難う。今行くね」
そう答えれば、にっこりした表情を浮かべた後、ユリカの元へ。
「オーナー、オーナー」
「何かな?」
「ダレガ オソウジ スルト オモッテ ラッシャル ノカナ? コノ ポンコツムスメ」
ビシッとユリカを指差して、こう宣ったよ。
其の儘、ぷいっと去って行く。
後に残されたユリカは、両手、両膝を床に付けてダウン寸前。
「ウイーが正しいと思うなー。わたし」
「ちょっと、計画性が足らないんじゃ無いでしょうか?」
「ユリカちゃん、再起不能です?」
「好感度、爆下げ」
メグ、かおり、アルファ、ルミから連続攻撃。
「まあ、ウイー一人じゃ、ちょっとキャパオーバーになっちゃうでしょうね」
ミュラ姫が追撃。
あ。ユリカが煤けた。
多分、思いつくのと行動するのが同時進行ってのが、ダメな原因じゃ無いのかな。
まあいいや。みんな、お茶にしよう、お茶。
「はーい」×十七人
ユリカはどうしよう…
此所に其の儘置いといてもなあ、という事で、肩に担いで連れて行く事に。
「ユリカ、ハウスキーパー追加だな」
「…はい」
リビングに集合してティーブレイク中。
ユリカは涙目の儘、携帯端末でハウスキーパーの発注作業中。
お高いらしいですよ? この前の改造費以上なのかな?
唐突に、わたしの携帯端末に着信音が。
「はい? どちら様?」
《ああ、鹿乃子ちゃん? わたし、小百合。ユリカちゃんからハウスキーパーの注文が来たんだけど、何かあった?》
ウイーがケットシーに化けた原因の人だ。
改造しちゃったハウスキーパーに、不具合があるのかと心配になったらしい。
何故、オーナーのユリカで無く、わたしに連絡してきたんだろう。
ユリカじゃ、正直に理由を話さないとでも思ったのかな?
まあ、内緒にする必要も無いんで、事の次第を説明してみた。
《あはははははははははははははははははははは。何やってんのよユリカ。うけるー! うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ》
大爆笑だったよ。
「小百合ちゃん、酷いー」
笑い声が聞こえたらしく、愕然とした表情のユリカは、望陀の涙。
流石に、哀れになってきたよ。
ユリカの暴走を止められなかった分、わたしも責任を感じて来ちゃったんで、おまけしてくれないかお願いしてみた。
《じゃあ、この間払わせちゃった代金分、割引するわ。それでも良い?》
どの位の割合になるのか判りませんが、お願いします。
《了解よ。明日には届けられるから、ユリカちゃんに伝えといてね》
有り難うございます。
「鹿乃子ー!! 有り難うー!」
ユリカー。おまっ、又その顔で抱き付くんじゃ無いよ!
うわーっ。服がー!!
ああ。間に合わなかったよ。
私とユリカの二人以外、お腹抱えて転げてるんだけど?
みんな、爆笑って、酷くないですかね!?
なんてこったい。
ユリカが落ち着くのを待って、着替えるために自室へ移動。
着替えてリビングへ戻ったら誰も居ないって、どっかで見た光景だな。
テーブルの上に書き置きが。
『シューティングゲームやってます』
やっぱりだー。
ユリカの着替えを待って地下へ。
又、ゾンビ退治で大騒ぎかな? と思ったら、違ってた。
荒廃した市街地で、ロボット兵士相手の市街戦だったよ。
何時開発したの? ミュウ。
「ユリアちゃんの発案で少しづつ」
一人、色々調整していたミュウが答えてくれた。
ゾンビ戦よりは良いな。見た目に優しい。難易度、高めみたいだけど。
そんな事よりも。だ!
何故増えている!?
クラブルームに設置してあった小型軽量タイプが三×四列、十二台。増設されているんですが!?
ミュウ、説明、プリーズ!
「ミュウが、クラスメイトみんなとお雛様やるんだって、ケイちゃんにソフト見せた所為かも? お部屋に来たら増えてたの。試験運用しろって事だと思う」
そうかー。姫野の関係者って、自由人ばっかなんだなー。きっと。
「否定、出来ない」
そんな会社の最高責任者やってるさつきって、実は凄い人なんじゃ無いかと一瞬思ったりしたけど… 無いな。きっと大きな勘違い。そうゆうことにしておこう。
「鹿乃子ちゃん、なにげに酷い?」
ミュウにバッチリ訊かれてました。内緒でお願いします。
「間違ってないと思うので、公表しても大丈夫」
ミュウも、大概じゃ無いかな?
「だって、さつきちゃんだよ?」
こてん、と小首を傾げるミュウ。
うん。そうだね。さつき、強く生きてね。
ゲームに夢中なさつきを見ながら呟くわたし。
ミュウが横向いてプルプルし始めた…
ユリカ? ミュウの「否定出来ない」って所から爆笑中ですが、何か?
五分の五に続きます




