三月四日 同士
六十五日目 五分の二です
「鹿乃子ー! 何すんのさーっ」
百メートルほど吹っ飛んだユリカが、叫びながら戻ってきた。
済まんな。ちょっと待ってくれ。
ぷんすこするユリカを放置して治療治療。
さっきと同じように、先ずは体内の異物除去。
うわぁ。最初の子に比べて十倍以上取り込んじゃってるな。
丁寧に、微細なかけらまで取り除きつつ治療する。
背中側に集中してる。もしかして、盾になった?
「鹿ー乃ー子ー。ひーどーいー」
ユリカが、わたしの頭をさっきからペチペチペチペチ叩いてる。ウザかわいい。
続けて怪我の治療と精神の安定化。
やはり、体が一回り以上小さくなる。この子は体毛が金色に変化した。
治療が終わると、銀の子の元へ、自ら移動していった。
「何か判ったのか?」
カミーラが三頭目を空中に浮かべたまま運んできた。
どうやって気絶させたんだ? ほとんど外傷がないんだけど?
まあ、同じように治療を行う。
この子も背中側が酷いな。
三頭目の子も、治療が終わると銀の子の元へ向かう。
やれやれ、一段落だ。
わたしは、取り出した放射性物質を一纏めにしてシールドで密閉。
ぽいっとカミーラに渡して、三頭目の子を追って、銀の個体の元へ。
残りの子も治療しなきゃ。
わたし達が飛び出したのと同時に、一時的に上空に退避していた宇宙船、二艘が、冷凍倉庫横の広場へと降りてきた。
わたし達も、三頭の神獣と共に施設まで移動。
宇宙船で運んで来た、先に捕らえた他の神獣たちの治療を済ませる。
カミーラもやり方をみて理解、二人で手分けして治療を進める。
銀の毛並みの一頭と、金の毛並みの十二頭。全部で十三頭が、大人しく並んで寝そべっている。
対面して、わたしとカミーラ、ユリユリコンビにルーちゃんコンビ、今回初めましてな黒髪と綺麗な緑の髪の女性二人。
姫野まゆちゃんとキティ・シャリエティプスちゃん。
この前、ユリカの所に連絡してきた[まゆちゃん]と、その相棒だそうです。
黒のボブカットがまゆ。綺麗なブルーグリーンのポニテがキティ。
で、わたしが知った情報を説明しなくちゃいけないんだよ。めんどくさいな。
「いや、面倒ではあるだろうけど、其処は我慢しようよ。鹿乃子」
そうは言うけどさ、ユリア。
ちょいちょい、と、銀色の子を手招きして呼ぶ。
直ぐに、わたしの横まで来てくれた。
「この子、どっかの惑星の神様的な個体。であっちがその眷属神的な存在みたいだよ」
ぺこりと頭を下げてお辞儀のような動作を見せる。
「で、ちょっと前、この子達の生活してた惑星が破壊されて、その実行犯を追いかけてやってきたんだそうな」
頷くような動きを見せた後うずくまる銀の個体。
「最近、そういった事件とか、事故とか、もしかしたら実験とか、無かった?」
まゆとルナがタブレット端末を引っ張り出して情報を検索し始める。
「有るね。実験の申請が二件」
「どっちも生命が発生していない星系って届けになってるけど」
見つかったらしい。
「でも…此所… キティ。此の星、生命が繁栄してたんじゃなかった?」
まゆがタブレットをキティに渡す。
「えーっとね…… あ! 此所、科学文明は発達してないけど精神文化がかなり進んでたはずだよ? え!? 的にしちゃったの!!?」
キティの言葉でまゆを始め、わたし以外が慌て出す。
知的生命が繁栄していたらしいな…
ユリアとカミーラも、タブレット端末を取り出して調べ始める。
ユリカはテレポートでどっかへ飛んでった。サリー辺りを呼びに行ったかな?
わたしは何をして良いのか判んないんだよな。
「ルアンとキティは調べないの?」
ぽやっとしてる二人に声を掛けてみた。
「あたし達、直感人間だから、こーゆーのは役に立たないかな」
「そうなんだ」
「鹿乃子ちゃんは?」
「わたし? 何したら良いんだろうね」
「「おー。同士」」
何故か二人に挟まれて、ハグされております。
まあ、餅は餅屋だよね。
「「そーそー」」
「「「「覚えろよ!」」」」
「「「無理」」」
やがて、サリーとミュラ姫を連れてユリカが戻ってきた。
二人も調査に参加する。
ユリカはわたし達に混じってぽやーっと…
「「手伝ってよ」」
「「「無理」」」
わたし達に向かって、サリーと姫が声を掛けてきたんでルアン達と三人で即答。
ユリカが毛玉になった。
待つ事一時間ほど。
その間に、もう一度龍神化して、銀の個体と意思疎通出来ないかやってみた。
結果、記録にあった、生命の確認された惑星がこの子達の住んでいた星で、先週のミサイルと同じ兵器で星が破壊された事までは確認出来た。
言葉では無く、記憶を見せて貰った感じ。
ミサイルの爆発で生じた放射性物質の破片を体中に浴び、破壊されていく星を見て悲しみと怒りと復讐心に囚われ、星を渡ってきたとの事だ。
生きるための糧を得る以外、争う事無くノンビリ暮らしていた自然神達。
緑豊かで、生態系の安定した星だった様だ。
報告書が偽装されていた事が判った。
例の一族だった。
超一級の犯罪が露見して、確定した。との事。
単細胞どころか、ウイルスであっても、生命活動が始まった惑星に手を加える事は、連邦法で、固く禁止されているのだそうだ。
余罪を含め、再調査の上、罪を償う事になるのだろうけれど、失われた星が戻る事は無い。
「後はこのケモさん達か。…此所でも暮らしていけそうなのかね? 鹿乃子、聞いてみてよ」
ユリアの提案を伝えてみた。問題は無いらしい。
只、支払う代償を気にして居るみたい。
「いや、代償を払わなきゃいけないのは此方だからって伝えて。人の活動する区域は明確に分けているから、何の遠慮もいらないって事も」
そう伝えたら、銀の個体を中央に、横一列に整列し、姿勢を正す。銀の個体が頭を下げた後、森へと向かって歩いて行った。
龍神。お願い。
各個体に、分け御霊を付けて貰う。護衛と連絡要員代わり、には為るだろう。
「いや、ふつーに過剰な気がするよ…」
ユリアに呆れられた。何故だ?
向こうで、ユリカとサリーが吹き出してる。
後、なんか呆れ顔の人が多い気がする。
「呆れてるから!」
気のせいじゃ無かった。…解せぬ!
「なあ、此所寒いよ。暖かいとこ、行かねぇ?」
カミーラが震えながら提案。みんなも同意。
そういや、三月初頭のモンゴル高原。しかも夜中だ。
まゆが携帯端末でどこかに連絡して、次の瞬間テレポート。
本部ビル横の宇宙港だった。
え!? 宇宙船二艘も一緒にテレポートしたの? 何それ、すげー。
「まゆちゃんがメンバーズ中ぶっちぎりトップで訳判んないテレポーターだよー」
「ユリカちゃん!? それ、流石に酷くない?」
「正しいと思う」×七人
みんなの認識も一緒らしい。
「ええー?」
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
まゆの悲鳴にユリユリペアとミュラ姫、爆笑。
まだ寒い。急いでカミーラの研究室に移動。暖かい部屋でほっと一息。
カミーラが、温かい飲み物まで用意してくれた。
えぇ? 吃驚だ。
「一言多いんだよ! 鹿乃子!!」
笑いが拡がる。
「んで、何で鹿乃子だけ連中と意思疎通出来たんだ?」
知りませんがな。
「おい!!」
爆笑が拡がる。
いや、いつの間にやら出来ちゃったんで、わかんないもん。
まあ、龍化した状態ででぶつかり合った後ハッキリ判る様には為ったかな。
後は、純粋な神気だけしか出してなかったし、神格の関係じゃね?
「あー。そう言えばあたし、全然気が付かなかったんだよねー。鹿乃子に起こされた後もー」
「私も、そう言えば鹿乃子に何かされるまで判んなかったわね。あれ、何したの?」
ユリユリに訊かれたけど、わたしは知らぬ。龍神が何かしてたけど。
「神格に刺激でも入れたんじゃ無いか?若干上がってるぞ?其処の二人」
カミーラの指摘であってるの?龍神… 正解ですか。
だってさ。
「「「答えが雑!」」」
文句の多い奴らだな。
私らの遣り取りに、姫とルアンとキティが爆笑してる。
まあ、それにしても、駆除しちゃわなくて良かったね。ユリカ。
「そうだね。あの子達の生命力に感謝だよ」
「完全凍結させたのに、解凍したらふつーに活動再開してたもんねぇ」
まゆが、ユリカの台詞に続ける。遠い目をしながら。
「此所で繁殖していけるのかしらねえ、あの子達」
ミュラ姫がぽつりと。
いや、残念だけど増えないよ?
五分の三に続きます




