三月四日 神獣
六十五日目 五分の一です
星暦二千百十一年三月四日 金曜日
お早うございます。
外はまだ真っ暗です。
だって、時刻は零時半だもの。
いやね、突然神気が衝撃波みたいに通過しましてね。
吃驚して飛び起きた次第。
何が有ったんだろう。
ユリカ起こして聞いてみよ。
と言う訳で、ユリカの部屋の前で呼び鈴連打中。
あれー? 寝てるのかな。あの衝撃を受けたのに?
「誰ー?…鹿乃子かー、どうかした?」
やっと出てきた。
えー? ホントに感じてなかったよ。あの凄い衝撃波。
「衝撃波? 何処から? 音は?」
音は無い。場所はずーっと東の方。今現在、余剰波が漂ってるんだけど?
「え? え? 感じないよ? どゆこと?」
いや、凄く強いよ? 此の神気。
「神気? 判んない。わたし神族じゃないし?」
あれ? カミーラが神格生えたって言ってたよね。
それに、わたしの神気は判ってたよね?
「あ。 言ってた気がする…。でも、鹿乃子のは色々混じってたよ?」
“純粋な神気を感じる訓練などしておらんだろうしな。判らないだけじゃ無いのかね。どれ…”
あ。龍神がなんか飛ばした。
「あぃたっ! えー? 何? 此の気持ち悪い感じー」
何かに汚染された感じの神気だね。
其処へ、端末の呼び出し音。ユリカの携帯端末かな?
「ちょっとまってね…カミーラ? 鹿乃子が感じたみたいで今起こされたとこ… 判った。ユリア起こしてそっち行くね。 了解。じゃあ後で」
カミーラも感じてたのか。
「ユリア起こしてくるから、鹿乃子、着替えてリビングで待ってて?」
着替え…って、わたしも行くのか?
「まあ、現状を鑑みるに、一緒に行って貰わないと、あたしが困っちゃうかな」
へいへい。了解でーす。
返事と同時に、ユリカ、テレポート…って、歩いてくんじゃダメなのか?
まあいいや。お着替えお着替え。
着替えてリビングで待つ事少し。
ユリユリコンビがやってきた。
「「だから、それ止めて!」」
まあまあ。で、ユリアは感じてる?
「うん、ユリカに言われて何となく。痛! 何? 今の何??」
龍神…
「あー…。判ったよ。純粋な神気って、こーゆー感じなんだね」
まあ、かなり汚染されてるけどね。
「んじゃ、とりあえず、カミーラん所。ユリア、よろしくー」
「わたしかよ! まあ良いけどね」
で、纏まっててレポート。
いつか来た、カミーラの研究室。
「来たな。ユリカ、これ昨日…じゃない一昨日逃げた奴だぞ」
「えー? どこに居るか判るの?」
東に一万キロってとこじゃね?
「あー、そのくらいだな。モンゴル…ああ、冷凍倉庫だ」
「「あー」」
距離と方向からモンゴルあたり。で、捕まえた生物を保管するのが、其処にある冷凍倉庫って事ですかい。
てことは、仲間を取り返しに来てるって事なんじゃないのかね?
それにしては、全然動いてる感じがしないんだけど。何か、待ってる?
「倉庫周辺のセキュリティーにも引っ掛かってないな。はぁ。対策考えないと…」
端末で状況を確認したカミーラが溜息。
侵入、許しちゃったもんねぇ。頑張って?
「鹿乃子にも手伝って貰おうかな」
謹んで辞退いたします。
「即答かよ!」
「「あはははははははははははははははははははは」」
爆笑中のユリユリコンビは置いといて、上空からの映像で状況の確認を。
「「ユリユリ禁止!!」」
なんと、衛星からの映像だそうですよ。吃驚だ。
大っきな建物の上空で、着陸するのかな? 段々高度を下げていく宇宙船が一隻。その上空で警戒中らしい宇宙船が一隻。
「「放置も禁止!!」」
あ。上空のは、この前来たルーちゃんコンビのだ!
「「ねえ! 聞いてる!?」」
森の中に黒い動物らしきのが三つ。
マジか、これ神獣だぞ?
「「鹿乃子ー?」」
「あはははははははははははははははははははは」
今度はカミーラが隣で爆笑開始。
わかったから。それよりも此さ、着陸寸前に襲われない? ルーちゃん達、気付いて無いっぽいよ?
「「…ホントだ」」
「わたし、放射線耐性ないんだけどさー」
「とりあえず、上空からPKで押さえ込んでてくれればなんとかするよー」
ユリアのぼやきに答えるユリカ。
「わたしも放射線耐性、無いぞ? 即座に再生治癒、掛けてるだけなんだが?」
「カミーラみたいな高速再生能力なんて無いんだから、無茶言わないでよ」
カミーラからチャチャを入れられて慌ててるユリア。
わたしはどうなんだ? 龍神、放射線って耐えられる?
全然問題ないそうです。 えー? 人外確定じゃん…
「じゃ、鹿乃子、あの一回り小さいの、相手して? わたし、上空でフォローするから」
ユリアの言葉に頷く。
そろそろ動き出しそう。
小型の一頭を残して二頭が動き出した。
同時に全員でテレポート。
ユリカが最も速い一頭の前に飛び出して迎撃開始。
カミーラがもう一頭を重力制御かな? 押さえつけようとしてる。
わたしは、動かなかったやや小型の一頭の背中に飛びついて押さえる。
ユリアはわたしの上空に居てフォロー中。
すご! 何だ? 此のめちゃくちゃな感情。
悲しみと恨みと怒りと諦め? 悪意が全くない!
暴れる神獣を、重力制御と筋力強化で押さえつけようとしてるんだけど、凄い力だな。
うわ!! しがみついた状態のわたしをサンドイッチして、大木に体当たり。
思わず、手を離してしまった。 痛てて。
すかさず、ユリアが上空からPKで押さえてくれている。
よし、初めてやるけど、龍神の力、使ってみるか。
神気を開放。一気に角が伸びる。
おお! 爪が鋭く伸びて手の甲には鱗?
見た目が変わるのか。よし、準備完了。
押さえつけるために突撃。
足元の地面が破裂した! 凄い。力が制御しきれないかも…
わたしの変化に気付いて身構えた神獣、何故か其の儘硬直?
ヤバ!。回避行動取ると思ってた…
其の儘ぶつかり、次の瞬間、同極同士の磁石のように反発。吹き飛ばされた。
飛ばされた先の大木を数十本へし折ってやっと止まる。
二百メートルは飛ばされたかな。
相手も同様吹き飛ばされていた。
折れた木の間から起き上がってくるが、向こうはかなりのダメージが入ったみたい。
龍の力、使ったら拙いっぽい。
力を元に戻して、全力で飛びつく。押さえ込んで大人しくさせないと!
ぶつかった時に相手の記憶が見えたんだ。
これ以上傷付けたくない!
首元にしがみ付くようにして前足を自分の足で絡め。其の儘重力を加えて押さえ込む。
「癒やすから! みんなも解放するから! もう、暴れるの、止めて!!」
叫びながら治癒を発動。最初に、体内に食い込んだ放射性物質を、アボーツで取り除きつつ放射線の傷を治療。
全て取り除いたら、今の戦いで出来た怪我を治療。
最後に、怒りに囚われた精神を鎮めるための癒やしを。
掛けていた過重力を解除する。
一回りからだが小さくなった神獣は、大人しくなっていた。
身体の色も、全身が銀色のつやつやな毛並みになっている。
「他の子も今治療するから、此所で待っててね」
声を掛ければ、頷くような動作を見せた。
この子はもう、大丈夫。
ユリカの方をみれば、神獣の大きな身体が地面に半分埋まってしまい、何とか起こそうともがいている所。
ユリカがとどめを入れようとしているので慌てて止める。
ていやっ!
「うっきゃーっ!」
めんどいから蹴り飛ばしちゃった。てへ。
五分の二に続きます




