三月三日 完全生物
六四日目、五分の三です
まあ、珍しいユリカの姿を堪能出来たし、次の心配事。
「昨夜のお仕事、上手くいかなかったの?」
「…うん。ちょっとしくじった…」
おや、正直な。誤魔化すかと思ったんだが。
「所謂完全生物の群れが紛れ込んできたみたいでね…えらく攻撃的な集団で、駆除依頼だったんだけど、三頭ほど逃げられちゃって」
「ユリカが追いかけられなかったの?」
「気配が無くって、その上異常に速いんだ。攻撃性の低い個体だったから様子見中なの」
「近くに居そう?」
「ううん。この星系の外。宇宙空間でも平気で活動出来る種なんだよね」
そうゆう事か。
人類にとっては危険な生物なんで駆除。でも、悪意を持っているわけじゃないから罪悪感がきついんだ。
飽く迄こっちの都合だもんなあ。
よしよしとユリカの頭を撫でる。
「んでさ、完全生物って何?」
テレテレしていた表情が一転、呆けたようになってしばし。
「えーっとね、大雑把に言うと、ほとんどの極限環境に於いてふつーに生活して繁殖出来る生命体」
えーっと、龍神なんかもそれに該当するのかな?
「そうだねー。神様なのを横に置いとけば、まさしくその通りだよー」
なるほど。相当な謎生物って事か。
〝巫女よ、我の扱い、酷くないかね?〟
えー? 事実じゃん。
〝はあ。まあ、いずれは我が身なんだがな〟
あ そう言えばそうだった。そうかー、わたしも完全生物もどきなんだな。
〝うむ。心しておくように〝
了解でーす。
「鹿乃子、それはあんまりにも軽すぎないかな?」
今の会話、聞こえてた?
「もーバッチリと」
まあ、わたしにしてみりゃそんな深刻な状況じゃないしな。
「そーですかー」
何だか煤けちゃったユリカが居る。何でだ?
まあいいや。その生き物ってグロい系?ガチガチ系?
「ああ…うん、見た目はかわいい系?」
全く想像出来んな。
「まあ、見た感じ兎ー」
ふむふむ。
「顔は猫ー」
えーっと…
「尻尾はキツネザルかなぁ。割かし太くて長ーいの」
…
「んで全身真っ黒な毛がフサフサに生えてるー」
…サイズは?
「二メートル位」
想像が追いつかないんだが…牛ぐらいのサイズで長く太い尻尾を持った肉食の凶暴な兎 で合ってる?
「良い線行ってるんじゃないかなー」
そいつが宇宙空間に存在するんだ。
「なんか凄い量の放射線を放出してたけどねー。放射性物質でも体内に持ってたのかなー」
凶悪だなー。
「おまけに、戦闘機のレーザー程度じゃ傷もつかなくってねー、駆逐艦クラスでやっと効果あったんだけど直ぐ再生しちゃうんだよー」
相当に頑丈、且つ生命力が強いんだな。
「凶悪な事にさー、駆逐艦のシールドすり抜けた上、体当たりで艦を貫通するんだよー? 反則だよねー」
いや、ユリカには言われたくないんじゃないかな、きっと。
「じゃあ、逃げた三頭以外は全部駆除出来たんだね?」
「……」
おい。何故其処で黙る?
「十頭捕獲、駆除までは出来なかった」
捕獲?どうやって?
「絶対零度で凍結させた」
さすがに分子運動が止まれば活動は出来ないか。
後は保管するだけだよな? 研究したりしないんだよな? そんな厄介な生物相手に。
「連邦で保管するとその危険が有るんで民間に保管依頼になった…」
連邦で保管するより安全な民間? 此所か…?
両腕ででっかいまる。
すっげーやな予感がするんだけど、気のせいですかね?
「ご迷惑をおかけいたします」
やっかい事がほぼ確定いたしました。
お前、それ、かなり危険じゃね? 住民の安全、どう確保すんの! 対応出来るメンバーが限られるんだろ?
「対応可能なメンバーにはほとんど召集が掛かる予定」
そっか…まあ、頑張って。
「鹿乃子の頑丈さなら、正面から受け止められるって信じてる」
「うおおい! わたしも該当者かよ!」
なんて無茶振り!!
やれやれだ…
「空間機動のやり方、教えて」
「鹿乃子?」
唐突に告げた内容が飲み込めなかったか、ぽかんと返してくるユリカ。
「じっくり地面に落ち着いて対処出来る相手じゃないんでしょ? 飛べる方が良い」
「…判った」
先ずは、学園の地下にある訓練場で基本を教えて貰う事になり、制服に着替えて登校…かと思ったら、其の儘で良いらしく、地下のリニアチューブで移動する事に。
「じゃあウイー、行ってくるね」
「イッテラッシャイマセ オキヲ ツケテ」
ウイーに挨拶して地下のチューブウエイへ。
「鹿乃子には、シールドをお願いするつもりなんだけど…」
「何が有るか判んないじゃん。準備できることはしておかないと」
ユリカのぼやくような言葉に返事を返す。
「むぅー。正論だー」
まあ、役に立たない方が良いとは言え、準備しておけばより安心だろう。
五分の四に続きます




