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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年三月
109/252

三月三日 完全生物

六四日目、五分の三です

 まあ、珍しいユリカの姿を堪能(たんのう)出来たし、次の心配事。


昨夜(ゆうべ)のお仕事、上手くいかなかったの?」


「…うん。ちょっとしくじった…」


 おや、正直な。誤魔化(ごまか)すかと思ったんだが。


所謂(いわゆる)完全生物の群れが(まぎ)れ込んできたみたいでね…えらく攻撃的な集団で、駆除(くじよ)依頼だったんだけど、三頭ほど逃げられちゃって」


「ユリカが追いかけられなかったの?」


「気配が無くって、その上異常に速いんだ。攻撃性の低い個体だったから様子見中なの」


「近くに居そう?」


「ううん。この星系の外。宇宙空間でも平気で活動出来る種なんだよね」


 そうゆう事か。


 人類にとっては危険な生物なんで駆除。でも、悪意を持っているわけじゃないから罪悪感がきついんだ。


 飽く迄(あくまで)こっちの都合(つごう)だもんなあ。


 よしよしとユリカの頭を撫でる。


「んでさ、完全生物って何?」


 テレテレしていた表情が一転、呆けたようになってしばし。


「えーっとね、大雑把(おおざつぱ)に言うと、ほとんどの極限環境に()いてふつーに生活して繁殖(はんしよく)出来る生命体」


 えーっと、龍神(りゅうさん)なんかもそれに該当(がいとう)するのかな?


「そうだねー。神様なのを横に置いとけば、まさしくその通りだよー」


 なるほど。相当な謎生物って事か。


巫女(みこ)よ、我の扱い、(ひど)くないかね?〟


 えー? 事実じゃん。


〝はあ。まあ、いずれは我が身なんだがな〟


 あ そう言えばそうだった。そうかー、わたしも完全生物もどきなんだな。


〝うむ。心しておくように〝


 了解でーす。


鹿乃子(かのこ)、それはあんまりにも軽すぎないかな?」


 今の会話、聞こえてた?


「もーバッチリと」


 まあ、わたしにしてみりゃそんな深刻な状況じゃないしな。


「そーですかー」


 何だか(すす)けちゃったユリカが居る。何でだ?


 まあいいや。その生き物ってグロい系?ガチガチ系?


「ああ…うん、見た目はかわいい系?」


 全く想像出来んな。


「まあ、見た感じ(うさぎ)ー」


 ふむふむ。


「顔は猫ー」


 えーっと…


尻尾(しつぽ)はキツネザルかなぁ。割かし太くて長ーいの」


 …


「んで全身真っ黒な毛がフサフサに生えてるー」


 …サイズは?


「二メートル位」


 想像が追いつかないんだが…牛ぐらいのサイズで長く太い尻尾を持った肉食の凶暴な兎 で合ってる?


「良い線行ってるんじゃないかなー」


 そいつが宇宙空間に存在するんだ。


「なんか(すご)い量の放射線を放出してたけどねー。放射性物質でも体内に持ってたのかなー」


 凶悪だなー。


「おまけに、戦闘機のレーザー程度じゃ傷もつかなくってねー、駆逐艦(くちくかん)クラスでやっと効果あったんだけど()ぐ再生しちゃうんだよー」


 相当に頑丈(がんじよう)()つ生命力が強いんだな。


「凶悪な事にさー、駆逐艦のシールドすり抜けた上、体当たりで艦を貫通するんだよー? 反則だよねー」


 いや、ユリカには言われたくないんじゃないかな、きっと。


「じゃあ、逃げた三頭以外は全部駆除出来たんだね?」


「……」


 おい。何故其処(そこ)で黙る?


「十頭捕獲(ほかく)、駆除までは出来なかった」


 捕獲?どうやって?


「絶対零度で凍結させた」


 さすがに分子運動が止まれば活動は出来ないか。


 後は保管するだけだよな? 研究したりしないんだよな? そんな厄介な生物相手に。


「連邦で保管するとその危険が有るんで民間に保管依頼になった…」


 連邦で保管するより安全な民間? 此所(ここ)か…?


 両腕ででっかいまる。


 すっげーやな予感がするんだけど、気のせいですかね?


「ご迷惑をおかけいたします」


 やっかい事がほぼ確定いたしました。


 お前、それ、かなり危険じゃね? 住民の安全、どう確保すんの! 対応出来るメンバーが限られるんだろ?


「対応可能なメンバーにはほとんど召集が掛かる予定」


 そっか…まあ、頑張って。


「鹿乃子の頑丈さなら、正面から受け止められるって信じてる」


「うおおい! わたしも該当者かよ!」


 なんて無茶(むちや)振り!!


 やれやれだ…


「空間機動のやり方、教えて」


「鹿乃子?」


 唐突(とうとつ)に告げた内容が飲み込めなかったか、ぽかんと返してくるユリカ。


「じっくり地面に落ち着いて対処出来る相手じゃないんでしょ? 飛べる方が良い」


「…(わか)った」


 先ずは、学園の地下にある訓練場で基本を教えて貰う事になり、制服に着替えて登校…かと思ったら、其の儘(そのまま)で良いらしく、地下のリニアチューブで移動する事に。


「じゃあウイー、行ってくるね」


「イッテラッシャイマセ オキヲ ツケテ」


 ウイーに挨拶(あいさつ)して地下のチューブウエイへ。


「鹿乃子には、シールドをお願いするつもりなんだけど…」


「何が有るか判んないじゃん。準備できることはしておかないと」


 ユリカのぼやくような言葉に返事を返す。


「むぅー。正論だー」


 まあ、役に立たない方が良いとは言え、準備しておけばより安心だろう。

五分の四に続きます

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