三月三日 追跡
六四日目、五分の二です
はてさて、ユリカが起きるまで、何していましょうかね。
突然の空き時間、とはいえ趣味に走るわけにも行かず。
瞑想しよ。
ソファーに腰掛けて先ずは集中。動くモノ、今この家ではウイーだけ。後は寝ているユリカの気配。
ウイーの行動を追跡してみる。
キッチンとダイニングを片付けてる所かな? 二度、三度と行き来して、キッチンで食器類を洗浄機にセット。
洗浄が始まったのを確認したら、今度はお風呂のお掃除。
一旦お湯を回収したら浴槽や洗い場を綺麗にしていく。
速いなー。さすがはハウスキーパー。あの広いお風呂場があっという間に磨かれていくよ。
で回収されていたお湯を戻してお掃除完了。
次いで、みんなの部屋をお掃除かな?
一階の端から浴室やトイレ、洗面所、各部屋をお掃除していく。
おや? ユリカが動いた。寝返りかな?
ウイーは速くも二部屋目のお掃除を開始。サクサクと進めていくね。
あの子、判断応力が凄いんだよなあ。
只片付け忘れたり単純に放ってあるモノはきちんと片付けてくれるんだけど、意味があっておいてあったり、作業途中だったりするとその状態をきっちり維持してお掃除してくれるんだよな。
どうやって判断してるんだろう。不思議だ。
そして早くも次の部屋。ユリカの部屋だけど。
若干速度が遅くなった?
物音を立てないように動いてるのか!
それでも、人の速度なんて置き去りのスピードで各部屋を綺麗にして、最後に寝室。
又一段速度が落ちた。
ユリカの気配に変化無し。
最後にベッドに近寄って? ああ、布団をかけ直してくれている。
一階最後がわたしの部屋。
速度は元に戻ってサクサクと。
続いてゲーム部屋を片付けて、此所、リビングのお掃除開始。
高速で片付けている筈なんだけど、ほぼ空気が動かない。直ぐ側を通過してるのにウイーの作動音が通過するだけって、どうなっているんだろう?
残すは、わたしの居る場所だけなんだけど、どうするのか楽しみだ。
「カノコ サン。 一メートル ヨコニ ヨケテ?」
あらら。正攻法でしたか。
「この位で良いかい?」
「アリガトウ ゴザイマス」
何か面白い事してくれるんじゃないかと期待したんだが、残念。
「モチアゲテ ドケタ ホウガ ヨカッタ?」
何故ばれた?
「いえ。問題ありません」
「ナゼ ケイゴ?」
「何となく?」
「サイデスカ デハ ゴユックリ」
リビングのお掃除を終えて廊下と納戸、エレベーターと綺麗にしていくウイー。
一階を終えた所でキッチンへ戻ってきた。
そして、リビング、即ち此の部屋へ。
「オチャ ヲ ドウゾ。 十時 デス」
え!? もうそんな時間!??
「あ、有り難う」
夢中になってて気付かなかったよ。
「ウイーは凄いねえ。働き者だよ」
思わず口にした。
「ソンナコト アリマスヨ。 ホメルト イロイロ デテキマス」
胸の一部が開いて、お皿に載ったケーキが一つ。
「うお? びっくりした! 有り難う…」
「ドウイタマシテー」
わたしの前にケーキを置くと、例のくるくる踊りをしながら出て行った。
スゲーな。ウイー。吃驚の連続だよ。
せっかくなんで、お茶とケーキとお茶菓子を堪能。
三十分ほどまったりと。
人心地着いた頃合いを見計らったように…見計らってるんだろうな…ウイーが片付けにやってくる。
「ごちそうさま。美味しかったよ」
「オソマツ サマ デス」
そしてキッチンへと向かうウイー。
再び気配の追跡を開始。
って、ユリカ、起きてるじゃん。
ちょうどベッドから降りるとこだった。
で、一瞬固まって、其の儘部屋から出てくる。
向かう先は此所。
ああ、気配探ってるのに気が付いたのか、さっき固まったのって。
「鹿乃子。ごめんー。学校休ませちゃったー」
そう言いながら部屋に入ってくるユリカ。
「まあ、偶にはね」
心配はあったけど、実際には只、遊んでただけだしな。
ユリカに向けて、自分の膝をポンポンとしてみせる。
ニコッとしてとことこ寄ってくるユリカ。
隣に座ると、其の儘倒れるようにわたしの膝…と言うか股に頭を乗っけて仰向けになる。
「えへへー」
と、嬉しそうに笑って見せる。
わたしは思わず頭をなでなで。
「ト トウトイ…」
声の主を見れば、リビングの入り口から此方を覗き、両手で口元を覆ったウイー。
「ちょーっ。ウイー?」
「ゴユックリー」
慌ててユリカが起き上がるが、ウイーはくるくる回って去って行く。
「もーっ。ウイーめーっ」
真っ赤になったユリカが何かうめいてるんだが…
さっきのはどうゆう意味なんだ?
「鹿乃子は知らなくて良い事だよー!」
教えてもらえないらしい。後で調べるか…
「調べるの、禁止ー!」
はいはい。じゃあコッソリだね。
「ヤーメーテー」
面白い。何だ此の反応は。
五分の三に続きます




