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銀河鋼神アルスマグナ  作者: 謎埴輪
第一章:双子星に眠る陰謀
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15.三つの選択肢

今回も書きあがりましたので投稿します。

 アウローラからの予想外の攻撃に、シンが困惑のそこに陥り、立ち直るまでには一秒ほどを要した。


「コホン。ただ雇えっつーのもアレだし、もうちょっと話しようか」


 咳払い一つで改めて気を取り直し、シンはアウローラへ向け、指を二本立てた。


「今のところだが、取れる手段を二つ思いついた。『荒っぽく時間がかかるが比較的安全』と『時間はかからないが終始荒っぽく危険』だ」


 立てられた指に二人の注目が集まったところで、シンはそれぞれの選択肢を示すように、まずは人差し指を、ついで中指を振って見せた。


「一つはバンディッツ・ネスト経由で、公式にお戻りいただく方法だろう? それにはもう一つ、選択肢を追加できるぞ」


 そこで割り込みを入れたのは、ミリアだった。

 シンとアウローラが首をかしげる中、彼女はまるでシンの指に自らの指を重ねるように、立てられた人差し指を指差した。


「実は第三方面軍の副指令にコネがある。縄張り違いだし内政干渉になるから躊躇っていたが、ここまで巻き込まれたのだ。使ってもいいだろう」


 ミリアからの提案に、シンは内心で驚く。

 見れば驚いているのはアウローラも同様のようで、こちらは口に手を当てて素直に驚いていた。

 なおお姫様はコネの存在に驚いていたのだが、シンはミリアがそんなリソースを切ることに驚いていた。

 シンはミリアのことを薄情者だとは思わないが、良くも悪くも軍人だと思っていた。そんな彼女が、自分が巻き込まれているのが原因だとしても、それだけ彼女が自分たちに肩入れしてくれるというのは、非常にありがたい。


「コネって強えな。だがまあ、別星系なら一番安全か。戻るまで時間もそれなりにかかるだろうけど」


 何より選択肢が増えることはありがたい。

 シンはミリアの提案を検討案の一つに入れつつ、残り二つの選択肢を告げるため口を開く。


「話は飛んだが、一つ目……いやもう二つ目か。二つ目の選択肢は、バンディッツ・ネストに逃げ込むことだな。んで三つ目は……」

「待て。バンディッツ・ネストに連絡を取るのは難しいだろう。さっきキミ自身で……」


 説明の途中でミリアから再度割り込みが入る。

 彼女の言葉はもっともだ。しかしシンは右手を挙げ、ミリアの動きを制しつつ、さらに口を開いた。


「まあ最後まで聞けって。んで三つ目なんだが……直で行く。エクスタリア行政府に乗り込む」


 ここでまた最大の爆弾が落とされた。

 その爆発力はすさまじく、納得のいかない様子でなおも食い下がろうとしてたミリアは目を丸くし、アウローラは耳を疑うといった風にぽかんと口を開けてしまった。

 そして数秒の間、ブリッジに沈黙が流れた。


「……な……な……シン……キミは……正気、か?」


 ミリアの声は震えていた。

 言いたいことはわからなくはない。実はバンディッツ・ネストへ逃げ込む方法を思いついたときに、派生(余計なこと)として思いついたものだったが、そのときはシン自身でさえ正気を疑ったのだから。

 だがそんなことはおくびにも出さず、彼はビシッとドヤ顔のサムズアップで答えた。


「無論、正気だし本気だっ!」


 ばちこーん!!とウィンクまでしてみせるノリノリのシンに対し、ミリアは疲れたようにうつむき肩を落とした。

 アウローラはといえばまだ固まったままだ。このバカバカしい漫才も、発言者を視線で追うことしかできていない。

 だがそんな突然湧き上がった浮ついた雰囲気も、その発端たるシンが突然浮かない表情を浮かべることで、突然に終わりを告げた。


「……つかな。なんか……ガバいん、だよな」


 続いてシンの口をついて出た言葉には、非常に重いなにか憂うような、それでいて嫌悪感に近い色が混じっていた。


「ガバ、い……ですか?」


 そこにいたって再起動を果たしたアウローラが、ようやくそれだけを口にする。

 正直に言うと、これはただの鸚鵡返しである。再起動を果たしたとはいえ、先程までの漫才に圧倒され、まだ存分に頭が回っていないのであった。


「いや、わかるよ? クーデターが起きてお姫様が消息不明になった。クーデターだなんて隠したいから海賊の仕業にした。王族の乗る船を襲うような根性入った海賊が出たから、厳戒態勢を敷いた。それぞれ一つ一つは、筋が通ってるよ? でもさ……」


 そこでシンはもったいぶったように言葉を切り、二人へと目配せをする。


「……でもさ。全部徹すと……なあんか、ガバいんだ。なあ?」


 言葉の〆で、同意を求めるように二人へと視線を投げるシン。

 だがその言葉を受け取った二人の反応は、あまりいいものではなかった。


「そう……なのでしょうか。申し訳ありません。私はそういう知識は持っていませんので……なんとも……」


 アウローラの反応は、ご覧の通りよくわからないといった様子だったし。


「言いたいことはわからなくはないが……それは言いがかり(理屈と膏薬)のレベルじゃないか?」


 ミリアもなんとなく、ピンと来ていない様子だった。

 しかし二人の顔は、どこか浮かない様子だ。シンが披露した話の流れに、違和感のようなものを感じているのだろうか。


「例えばさ。エクスタリア(この星系)に遊びにくるような連中が、海賊が出たと聞いたら、例えばそれがミリアなら、どうする?」


 まだ押しが足りないと思ったのか、シンは唐突に問いかけを発した。

 問われたミリアはというと、問われて仕方なくといった様子で、不承不承ながらも考え始めた。


「そう、だな。銀河通商連合の懇意の議員に働きかけて、連合宇宙軍を……あ」


 自分の知る反応を口に出しつつも、途中でシンと同様の違和感を覚えたのか、唐突に言葉を止め驚いたかのように目を見開く。

 ちなみに彼女の反応から、シンは別の情報を得ることができた。

 少なくとも銀河通商連合というものは、良くも悪くも合議制であるということで、加入しているものたちの要望もそれなりに通るということだ。

 もっとも海賊の存在は、それ自体が通称破壊になりかねないため、討伐も当然ではあるのだが。


「次は殿下だ。エクスタリアにそんな気合の入った海賊が出たと知ったら、行政府はどうする?」


 シンの問いかけは、次にアウローラへと向かった。

 もちろん彼女も考えるのだが、その可憐な唇が言葉をつむぐ前に、そこに割り込むものがいた。


「エクスタリアでも対応に変わりはありません。ただしこちらの場合、そこに『お客様に呼びかけを行う。バンディットを雇う』が加わります」


 もちろんタラッパである。

 狙撃主としては超一流のアウローラだが、だからといってこういった方面にまで明るいわけではない。それをこのメイドロイドが、このように補うのだろう。


「そうなるよな。とすると、本来ならもう連合宇宙軍やら、バンディットが集まっててもおかしくない。それがいまさら厳戒態勢だ。理屈はどうともなるだろうけど……俺は変だと思う」


 シンが自らの抱く不審の根拠を並べたところで、ミリアは瞑目して腕を組み、アウローラは顎に手を当ててうつむいた。

 だが二人とも思考の渦に沈むことはできなかった。なぜなら、シンがさらに続けて口を開いたからである。


「それとな。これは勘なんだが……完全にただの勘なんだが、あまり時間をかけたらやばい気がするんだ。そりゃ急げば状況がマシになる保障も無えんだけどさ」

「ちょ……ちょっと待ってくれシン」


 彼の言葉に割り込んで、あわてて制止してきたのは、ミリアであった。

 彼女は制止に応じて言葉を止めたシンをまっすぐ見つめ、さらに言葉をつむぐ


「言いたいことはわかったが……それで何で『雇え』という話になる? 第一、ネストに向かうにも、エクスタリアに降りるにも、マグヌム・オプス(この艦)では難しいだろう? 何か策でもあるのか?」


 それは当然の疑問であった。厳戒態勢がしかれたことで宙域内は今、連合宇宙軍とエクスタリア国軍によって監視が厳にされ、出て行こうものなら十字砲火の餌食になるのがオチだ。ネストに逃げ込むなり、大気圏内に下りるなりするならば、最低でもこれらを突破する必要があるのだ。

 当然何らかの考えがあってのことだと思っての制止だったが、彼女の言葉にシンはなぜか目を丸くしてしまった。

 その反応が「あ、言うの忘れてた」というものだと、なぜかピンと来てしまったミリアの視線が、急激に温度を下げていく。

 温度の下がった視線を受け止めるシンはというと、冷や汗をかき目を逸らして、自身の間抜けを取り繕うように薄笑いを浮かべた。


「あ~ははは……ま、まあ、あては確かにあるんだがな。けどコイツはさすがに、雇い主のためじゃないと、使いにくくてな~」


 誤魔化すような半笑いで答えるシンを見て、ミリアの眉がひそめられる。

 なぜか? それは彼の言葉を反芻し、分析しているからである。そして結論に至ったとき、彼女の顔は驚愕に染まった。


「ま……まさかとは思うが……使う、のか?」


 声さえも震わせ、シンの意思を確認しようとするミリア。

 何か通じ合っているようにも見える二人のやり取りに、傍らで取り残された形のアウローラは首をかしげた。


「もちろん使うさ。切り札(アルスマグナ)をな」


 シンは満面の笑みを浮かべ、満を持してといった風に答えた。

 対するミリアの表情は、シンの笑顔とは対照的に、正にゲンナリとした疲労感を湛えていた。

読んでいただきありがとうございます。

公言どおりの週一ペースを楽しんで守れているのはいいことだと思います。

読んでくださっている方も楽しんでいただけていると幸いです。

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