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銀河鋼神アルスマグナ  作者: 謎埴輪
第一章:双子星に眠る陰謀
14/25

13.突然の襲撃

今週も何とか更新できました。

この調子で来週も頑張ります。

 それまでからすれば、非常に順調なたった二十四時間の航海。それもようやく終わりを告げるときが来た。

 未登録艦改め、新米バンディット艦マグヌム・オプスは、ついにエクスタリアⅠの宇宙港へ、あと一時間というところまでたどり着いた。

 ここから先は往来も激しいため、艦の速度は控えめとなり、管制とのやり取りが増えるためどうしても忙しくなりやすい。

 だがどういうわけか、シンたちの乗るマグヌム・オプスは、軌道上の連合宇宙軍駐留ステーションには向かわず、静止衛星軌道よりもはるか上空でほぼ静止状態にあった。

 等倍のモニターでも宇宙港は未だ画面の半分をようやく占めようかというくらいである。こんなところで彼等が何をしているかというと……。


「ここで待たされるとは思ってなかったなあ」


 双子星を行きかうまばらな光を眺めながら、シンは退屈そうにつぶやいた。

 行きかっているのは人員や物資の輸送船のようだが、こちらは望遠をかけなければ豆粒である。


「私もだ。『軽巡を受け入れる余裕を作るため』とは……」


 呆れた様子でシート後と振り返り、艦長席へ同意を返すのは、まだ操舵手席に座るミリアである。

 彼女は駐留ステーションの狭さにではなく、二十四時間かけてあらかじめ準備を行っていなかった、その手際に悪さに呆れていた。


「まあまあ、そんな目くじら立てるなって。……それにしても……」


 怒っているようには見ないが、呆れ顔で憮然としているミリアをなだめつつ、シンは宇宙空間を行き来する光の豆粒を改めて眺める。


「それにしても、制限されているって割には、結構行き来あるんだな」


 しばらく眺め、空気を変えるためかこんなことを口にする。

 何と比較しているかといえば、もちろんゲームとである。例えばラグランジュ点に大型のコロニーがある星域だと、渋滞こそしないもののもっと行き来は頻繁にある。

 そして何らかの理由で厳戒態勢に入れば(正確には厳戒態勢型のミッションに入れば)、とたんに惑星周辺はがらんとさびしくなるものだ。

 それに比べれば中途半端に感じるのか、故の疑問であるともいえる。


「それは当然ですわ。エクスタリアⅡには、まだゲストの皆様が多くいらっしゃいますもの。お世話のためにも、往来を止めるわけには行きませんわ」


 疑問の答えは砲手席から返ってきた。もちろん返したのはアウローラである。

 そしてそのまま、双子星についての講義が始まる。


「エクスタリアの双子星は、陸地面積は同じですが、Ⅰは集中しⅡは分散しています。故に比較的定住に適さないⅡをリゾートに、Ⅰをその運営とスタッフの居住地として、開拓(テラフォーミング)したのですわ」


 アウローラが言葉とともにタラッパに促すと、彼女は二人のタブレットへデータを流した。

 そこあったデータによると、確かにエクスタリアⅡの陸地は北極から南極までかなり分散しており、もっとも大きなものでも日本の本州程度の面積しかないことがわかる。

 なお最大の面積を持つ陸地は、中央が僅かながら荒野になっており、モータースポーツを行う区域として割り振られていた。


「ふぅん。しかし何でまたリゾートにしたんだ? あくまでも『比較的』適さないってだけだろ?」


 殿下のありがたい講義の最中ではあったが、唐突に浮かんだ疑問をぶつけるシンだったが、その答えはすぐには返ってこなかった。


「……それは……その……色々あった、としか……」


 アウローラが苦笑を浮かべ、言葉を濁したのだ。

 そんなに言いたくないなにかがあるのか、それとも単純に知らないだけなのか、タラッパからも補足が来ないため、シンには苦笑の理由はわからなかった。

 しかしその言葉を継いだものがいた。ミリアである。


「……そういうことか。シン。第三次宇宙開拓期、その発端はなんだと思う?」


 彼女は言葉を継ぎはしたが答えてはくれなかった。

 何を思ったか、出題形式で問いかけてきたのである。

 当然そんなことシンが知るはずもない。故に降参を示すように肩をすくめると、ミリアは脅すような上目遣いで、こう述べたのだ。


「……侵略戦争、だよ。UMCを巡っての、な」

「うへぇ……」


 正直聞きたいと思わなかった事実に、シンは思わず呻く。

 そんな二人のやり取りから数秒遅れて、しかし後を継ぐように口を開くのは、アウローラだ。


「だからエクスタリア初代国王、ランベルト=エクスタリアは、エクスタリアⅡでの資源開発を禁じたのですわ。もう二度と、自らの生家を脅かされないために」


 その口調はやけに重かった。

 それはそれだけ彼女が、初代国王の言葉を重んじていたという、何よりの証拠であった。


「……とはいえ……そこまで極端に走る……んだろうなぁやっぱり」


 シンは腕を頭の後ろで組み、シートに身体を預けてつぶやく。

 彼に故郷はない。何しろ元はゲームのキャラクターである。だからランベルトの言葉も、それを重んじるアウローラの気持ちも、真の意味ではわからない。

 設定的にもサルガッソーコロニーだ。あんな悪徳蔓延る宇宙のごみためなど、故郷と呼べるものでもない。

 しかしそれでも、戦争を拒否する気持ちは理解できるし、何よりリゾート惑星などという一つのブランドを築き上げたその根っこは、理解したいとも思うのだ。


「……ん?」


 ブリッジの中にしんみりとした空気が流れ、待ち時間の残りをなんとなくいたたまれない雰囲気で過ごすかと思われたそのとき、シンが突然なにかに気づいたのか、シートの背もたれから身体を起こし、モニタに顔を近づけた。


「……三隻、近づいてくる。モニタ出すぞ」


 僅かな操作の後、メインモニタを三分割して表示されたのは、三隻とも同型の駆逐艦だった。

 それらは駆逐艦の例に漏れず、形状は概ね四角柱なのだが、異様なことに艦尾は増設されたと思しき推進器で膨れ上がっていた。

 異様なのはそれだけではない、どの艦も四角柱の中に一箇所ずつ、三角柱と円柱の部分が存在し、そこには大型のビーム砲が複数装備されている。

 他の宇宙船も行きかう中ではさほど珍しいものでもない。というわけで無反応だった二人に対し、一人シンだけはなぜか笑顔になっていた。


「おお懐か……じゃない珍しい。(スーパー)イナバ級駆逐艦じゃあないか?」


 彼の言う(スーパー)イナバ級駆逐艦とは、もちろんゲームの中に存在した駆逐艦のことを指す。

 それはプレイヤーの中でも警備行動に主眼をおき、そのために自らを究極まで突き詰めることを目的とした異色チーム、【チーム:スペースパトロール】の象徴とも言うべき艦である。

 航続距離を犠牲にして、速力と火力を大幅に上げたいわば色物艦ではあるが、その建造コストの安さを生かして拠点防衛艦として数を頼まれると、かなり厄介な艦隊に仕上がるというものだ。

 ゲーム中では白黒(パンダカラー)に塗られ、艦首に赤色回転灯を装備したスペースパトロール艦が一隻姿を現すと、どこからともなく五十隻は出てくるといわれるほどで、これを見た海賊プレイヤーはとにかく逃げて距離を稼ぐほどだった。

 つい先程故郷がないことにしんみりした直後である。このように己の出自であるゲームとの共通点を見つけたことで、彼がついはしゃいでしまうのも、無理はないのかもしれない。


「スーパーって……いつの話だそれは。あれは改三型ホワイトラビット級駆逐艦だ。大方エクスタリア国軍だろう」


 だが残念ながらそんな機微など、余人に理解できるものではない。その証拠にミリアから呆れ混じりのツッコミが刺さる。


「そうなのですか? 私は宇宙船には詳しくないのですけれど」

「お嬢様。改三型ホワイトラビット級駆逐艦は、我がエクスタリア国軍の主力艦です」


 そしてそれはアウローラも同様であったようだ。いや、彼女のほうは大本になる艦の知識なかったわけだが。

 タラッパが早速フォローに入ったものの、元々覚える気もないようで、優雅さから少し離れた生返事が上がる。興味もないことなど、概ねこんな感じになる。

 そんな気の抜けた漫才の最中、艦長席のコンソールから電子音が鳴る。それは、銀河統一規格によって定められた、艦間通信用の呼び出し音であった。


文字通信(メール)だ。『受け入れ準備完了。微速にて当艦に追従されたし』だってさ。良かった、連合宇宙軍(お迎え)だ」


 ようやく来た待ち人に、シンは先程とは別の理由による笑顔を浮かべた。

 だが反対に、ミリアの表情は晴れなかった。シンと別れる時間が迫ったからだろうか。


「……連合宇宙軍にホワイトラビット級? なにか妙だな」


 別の理由だったようだ。だがその言葉は小さなつぶやきに留まり、他の席には届かない。

 彼女の疑念ももっともだ。航続距離を犠牲に機動性と火力を両立させたホワイトラビット級は、改三型になって多少短所は補えたものの、それでも連合宇宙軍の任務には耐えられるものではない。

 故に現在、連合宇宙軍で採用されている駆逐艦は、最新鋭のディープスクイッド級になっている。

 ならばなぜホワイトラビット級を配備しているのか、という疑問が持ち上がるのだが、ミリアはその疑問の足がかりすら探せないまま、シンの操艦によって進むマグヌム・オプスの進路を見守るしかなかった。



 シンが最初に「変だ」と思ったのは、まさしくただの勘だった。

 文字通信で送られたきた指示に従って、推進器の出力を絞った状態でゆったりと加速し、お迎えに来た連合宇宙軍の艦との距離を詰めていく。

 その最中、目の前の駆逐艦から、なにか妙な空気を感じた。不審に思ってモニタに映したほかの艦にも目を配るが、いつの間にか進路上の上下に静止した二隻からも同じにおいがする。

 その感覚を言語化するのは、少々無理があった。それでも無理矢理言葉にするならば――。


 ――三隻はマグヌム・オプス(こちら)への害意をやり取りしている。


 なぜそう考えたのかわからない。ただの勘だといえばそれまでだ。

 否定はいくらでもできる。第一、なぜ遭難していたパイロットを救った艦に対して、害意を向けなければならないのか。

 泣いて礼をとまでは行かなくても、諸手をあげてとまでは行かなくても、例えその対象が自分ではなく助かったパイロットだったとしても、歓迎くらいはされてもいいはずだ。

 それがなぜ……。


「……ん?」


 シンだけが感じる妙な空気が深まり続ける中、ついに彼は違和感の正体にたどり着いた。


 ――なぜ三隻とも、艦首をこちらに向けているのか――


 戦艦が水の上だけを奔っていた時代と異なり、宇宙艦の主砲は基本的に前方へ集中している。

 撃つのが放物線を描く実弾ではなく、直線を描くビームである以上、艦首を敵に向けて当たる面積を最小限にすることが、生き残るための最適解だからである。


 ――5


 そしてその状態で最大の火力を出したければ、前方に火力を集中することが必要となるのだ。

 そのため敵意がないことを行動で示したければ、相手に対して艦首を向けるのではなく、艦側面か艦尾を向けるのが正しい。


 ――4


 それにしても先程から頭に鳴り響く、このカウントダウンは一体なんなのか。

 マグヌム・オプス(自艦)のものではない。それはAI(ティンク)に聞かなくても、コンソールを見なくてもわかる。なぜかわかる。


 ――3


 そこでシンは気づく。

 このカウントダウンは、出迎えであるはずの三隻の間で行われているものだということを。

 同時に目の前の三隻から、『悪意の線』とでも呼ぶべきなにかが伸び、艦の進路上で交差していることを。

 なぜそんなことがわかるのか? それは彼自身にもまったくわからない。

 わからないが、それでもわかる。わかることが確信できる(・・・・・)


 ――2


 操舵手席のミリアを見る。シートは前を向いているため、彼女の表情はわからないが、見た限りは何も異変はない(・・・・・・・)

 砲手席のアウローラを見る。彼女は何をするでもなく、ただ悠然と座っている。もっとも彼女に何かをしてもらおうとまでは思っていないため、特に問題はない。


 ――1


 シンはコンソールを手早く操作し、艦前方と上下へ射出するための、特殊弾を準備する。

 同時にスロットルを一気に引き、両舷最大戦速をマグヌム・オプスへ命じた。


 ――0


 カウントダウンが終わる直前、シンの操作によってマグヌム・オプスより準備された特殊弾が撃ち出される。

 一瞬遅れて、なんと三隻の駆逐艦からビームが放たれた。それは通常ならば必殺の間合い。しっかりと狙い済まされたビームはこの艦を貫き、あっさりと宇宙の藻屑に変えるだろう。

 だがそうはならなかった。撃ち出された特殊弾が艦の至近距離で破裂し、広がった靄のようなものが、ビームを受け止めたのだ。

 それは『充Eチャフ』と呼ばれる、対ビーム用の防御兵器であった。

 高い電気エネルギーを充填した細かい金属片をばら撒くこの防御兵器は、靄のように広がるチャフに突っ込んだビームを撹乱し無効化する。

 効果時間が一秒しかない。その間は自分のビームも無効化され無力になる。拡散した靄がシールドに付着すると、シールドに無視できない負荷をかける。非常に高価など、デメリットは多々あるものの、万が一のための防御兵器として準備する価値は十分にある代物だ。

 充Eチャフが作り出した僅かな時間を使って、軽巡レベルでも過剰な推力を誇るマグヌム・オプスは、猛然と加速を始める。

 たかが一秒。だがそれだけあれば十分。相手は正確な砲撃のためか静止しているのだから、ここからこちらの動きに軸線を合わせるのは、まず不可能だろう。

 そうしてマグヌム・オプスは、正に脱兎のごとく、現宙域から離脱していくのだった。

更新したとたんにPVが増えるのがかなり楽しい。

ブックマークもじわじわ増えているのが、かなり嬉しい。

自分が嬉しい楽しいのももちろんですが、もし読んでいただけて面白いと思ってくださるなら幸いです。

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