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アルヴェスク年代記  作者: 新月 乙夜
結の章 交誼の酒
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交誼の酒27

 サザーネギアへ赴いていた近衛軍が、皇都アルヴェーシスに帰還した。帰還したのは、援軍の本隊として送り出した、ラクタカス大将軍が率いる5万の部隊である。しかも彼らは北側ではなく南側から姿を現したのである。


 これに、ライシュが思わず顔をしかめたのは言うまでもない。第一に別働隊として送り出したはずのカルノーとその部隊の姿がない。彼らの任務は危険で、そのため全滅や、そこまでいかずともまとめて捕虜になってしまうような事態は想定されていた。カルノーならば大丈夫であろうと思い送り出したが、まさかその懸念が的中してしまったのか。


 さらに南側から帰還してきたということは、彼らは行きとは異なってギルヴェルスの領内を通ることはせず、サザーネギアから南下しメルーフィスを通って帰ってきたのである。そのためにはナルグレークの領内を通るか、最低でもかすめるようにして移動しなければならない。


 なぜわざわざそのような行路で帰ってきたのか。まさかギルヴェルスと、エルストとの間に決定的な決裂が起こったのか。そうなった場合の覚悟はすでに出来ていたはずなのだが、カルノーの不在も相まってライシュは否が応にも悪い予感がかき立てられた。


 無論、報告のための早馬は本隊より先に皇都に到着している。ただ、「味方の損耗は極めて軽微」としか聞いていない。詳しいことは帰還次第ラクタカス本人が直接説明する、と言われていたのである。


 ライシュはすぐさまラクタカスを呼び出した。執務室にやって来た彼は、長旅のせいで土埃にまみれてはいたものの、壮健で大きな怪我もなく、表情にも悲痛なところは見られない。


 少なくともラクタカスの姿は、「失敗を犯した敗戦の将」といった風情ではなかった。それを見てライシュは少しだけ胸を撫で下ろす。どうやら最悪の結果だけは免れているらしい。


「遠征ご苦労であった。別働隊とは無事に合流できたか?」


 ライシュは遠征の成否よりも、まずそのことを尋ねた。実際、彼にとってはそちらの方が気がかりだったのだ。


「はっ。作戦通り、グレンダン丘陵地帯で敵サザーネギア軍を挟み込む形で合流することが出来ました」


 それを聞いて、ライシュは一つ大きく頷いた。だが、彼が安堵を覚えるにはまだ遠い。彼はまだ難しい顔をしていた。


「そうか。それは何よりである。しかし帰還したのは本隊のみで、別働隊の姿が見受けられないようだが?」


「カルノーと別働隊は今しばらくサザーネギアに残り、本隊とは別に帰還する手筈となっております」


 ラクタカスの言葉を聞いて、ライシュは眉間のしわを深くした。訳がわからない。そういう顔であった。


「どういうことだ?」


「恐れながら殿下。まずは此度の遠征について一通りご説明させていただきたく思います。なにぶん、当初の想定とは全く異なる結果となっておりますゆえ」


「……分かった。ではまずその結果とやらを聞こう。ギルヴェルスは何州を得た?」


「ギルヴェルスは何も得ておりません。此度の遠征は失敗しました。少なくとも、彼らにとっては」


「な……、に……?」


 ラクタカスの言葉を聞いたとき、ライシュは珍しくも言葉を失った。そしてその言葉を理解するにつれ、彼の顔には動揺が浮かんでくる。エルストが遠征に失敗することなど、彼は考えてもいなかったのである。


「…………一体、なにがあった?」


 動揺を隠し切れないまま、ライシュはそう尋ねる。そんな彼にラクタカスは小さく一礼してから遠征についての説明を始めた。


「…………説明は以上です。詳細な報告については後日、報告書を作成して提出いたします。ただ、別働隊の分は報告書も別になってしまいますが……」


「……いや、構わん」


 ラクタカスの説明を聞き終えたライシュは、脱力しきってソファーの背もたれに身体を預け、大きなため息を吐いた。


「なんともまあ、想定外のことばかり起こっているな……」


 ライシュが半ば愚痴のような口調でそうこぼすと、正面のソファーに座るラクタカスが律義な声で「御意」と応じた。それを聞いてライシュは苦笑を漏らす。それから彼は背もたれから身体を起こすと、冷めてしまった紅茶を飲み干してからこう言った。


「しかしカルノーめ。ロキにまで土を付けるとは、随分と活躍しているじゃないか」


 実際、カルノーの働きには目覚しいものがあった。アレスニールと協力して講和条件の素案を作成し、さらに遠征軍とサザーネギア軍の両方に圧力をかけて和平交渉を成立させた。そして最後には講和条約を無視して反転してきたギルヴェルス軍を打ち破り、彼らの遠征の失敗を決定的なものとした。


 その結果、アルヴェスクは和解金を得たが、ギルヴェルスは何も得ることができなかった。当初の想定を遥かに超える成果である。まさに皇国にとって、そしてライシュにとって最良の結果となったと言えるだろう。彼が戻ってきたときには、その働きに厚く報いなければなるまい。


「ところで、ジュリアはどうしていた?」


 紅茶のおかわりを侍女に頼んでから、幾分気楽な調子でライシュはそう尋ねた。カルノーに嫁がせた妹が、別働隊と一緒にサザーネギアにまで行ってしまったらしいことは彼もすでに聞いている。困ったものだと思い、また怒りも感じているのだが、それとは別にやはり妹のことは気になった。


 とはいえ、そう心配しているわけでもない。カルノーと一緒にいるのだ。そうおかしなことにはなっていないだろう。ライシュはそう思っていた。しかしその考えは、次のラクタカスの言葉によって容易く裏切られることになる。


「ジュリア様は、ご懐妊されたと聞いております」


 それを聞いてライシュは思わず「はあぁ!?」と素っ頓狂な声を出した。「敵の大将首を討ち取った」と言われても、ここまで驚きはしなかったであろう。「あのじゃじゃ馬め」と言いつつ、どこか納得していたはずである。


 しかし懐妊、つまり妊娠しているというのは、本当に予想外だった。頭の片すみで「紅茶を飲んでいるときでなくて良かった」などと思っているのは、あるいは現実逃避であったのかもしれない。


「それでジュリア様は今、グリフィス公爵の屋敷で静養なさっているそうです。カルノーも、おそらくは今そこに」


「本当に予想外のことになっているな……」


 ライシュは頭を抱えながらそう言った。その口調はもうどこか諦め気味である。母のステラや妻のマリアンヌにどう説明したものかと思っているのかもしれない。


「それと……」


「まだ何かあるのか?」


「遠征とは直接関係がなかったので説明には含めていませんでしたが、グリフィス公爵から連邦議会議長の肩書きで、殿下に宛てた親書をお預かりしています。実際に親書を託され、話を聞いたのはカルノーですので、彼のほうからも手紙を預かっています」


 そう言ってラクタカスは二通の封筒を差し出した。片方の分厚い封筒には、確かに見慣れない印章で封が押されている。もう片方には、カルノーの名前が記されていた。


「親書、か……。内容について何か聞いているか?」


「アルヴェスクとサザーネギアの、同盟に関する事柄であると聞いております」


「同盟か……。難しいな」


 アレスニールが提唱する同盟について、ライシュはすぐにその重大な戦略的意義を理解した。特にエルストを牽制し、その勢力拡大を妨げられるという点が、彼にとっては大きい。しかし両国はつい最近まで敵同士であったのだ。その同盟を成立させるのが難しいこともまた、彼はすぐに理解した。


「グリフィス公爵も、困難な道であることは理解しているようです。それで、カルノーを公爵家の世子に迎えたい、と」


「なん、だと……!?」


 再度の驚愕がライシュを襲った。彼は目を見開き、それからもう一度手に持ったアレスニールからの親書を見る。それから視線を上げてラクタカスのほうを見た。


「……ご苦労だった。また聞きたいことがあれば呼び出す。下がって休め」


「はっ。失礼いたします」


 ラクタカスが退席するのを見送ってから、ライシュはアレスニールの親書を開封した。そこではこの同盟の意義が説明されており、そして同盟成立のためにカルノーをグリフィス公爵家の世子として迎えたいと記されていた。さらに親書の最後には、一枚の証明書が同封されていた。カルノーをグリフィス公爵家の世子として認める旨を記した証明書で、すでにアレスニールの署名と押印が揃っている。カルノーの署名と押印はまだだったが、それさえ揃えば晴れて彼はグリフィス公爵家の世子となる。少なくとも、法的には。


「それだけ本気、ということか……。しかしカルノーに目を付けるとはな。流石、と言っておこうか」


 そう言ってライシュは薄く笑った。そして次にそのカルノーからの手紙を開封する。


 その手紙の中で、カルノーはアレスニールの人柄について「師父を彷彿(ほうふつ)とさせる」と書いている。最大限評価している、と言っていいだろう。そして同盟についても、「皇国の国益にかなうと考える」と書き添えている。その上で世子の件については、「同盟を成立させるための布石としては秀逸」と評していた。


「ふん……、なにが『摂政殿下のご意向のままに』だ……」


 カルノーの手紙を読み終わると、ライシュは悪態ともいえない口調でそう小さく呟いた。手紙からは、彼が同盟と世子の件について極めて前向きであることが伺える。その理由が二人の友人の対立を決定的にしないためであることは、いまさら説明するまでもない。


 途端に、笑いがこみ上げてくる。ちっとも、楽しくも可笑しくもない。自嘲だった。額に手を当ててひとしきり笑うと、ライシュはこう呟いた。


「カルノー……。お前を、失うのか?」


 無論、カルノーは死ぬわけではない。しかし世子の件が成立すれば、彼は皇国から去り、ライシュはもうこの友人を頼りにすることができなくなる。さらに妹のジュリアもまた、彼と一緒に皇国を去るだろう。彼女のお腹の中にいる甥か姪にも、そう簡単に会うことはできない。それを想像したとき、ライシュは片腕どころか半身を抉り取られるかのような喪失感を覚えた。


「これが……、これが報いだとでも言うのか?」


 友との決戦が待つと知りながら、それを望んで突き進んだことへの。だとすればまだ(ぬる)いのかもしれない。少なくとも、大切な人々はまだ誰も死んではいない。しかし彼らはライシュの傍から去っていこうとしている。すぐ傍にいないという意味で、それは死となんら変わりない。


 ライシュの心はそれを拒否していた。カルノーには近衛将軍として、いや彼の右腕としてやってもらわねばならないことがまだまだある。そもそも、皇国は大国だ。サザーネギアと同盟を結ばずとも十分にやっていける。そんな、尤もらしい理由も思いついた。


 しかしその一方で、この同盟が皇国の国内外の情勢を安定させる上で、極めて強力な手札になることをライシュの頭は理解していた。そして摂政である以上、彼は感情よりも理性を優先させなければならない。


「父上……」


 不意に、ライシュはレイスフォールとステラのことを思い出した。彼は愛した女性を皇都に連れて帰ることをしなかった。本当はすぐ近くにいて欲しかったに違いない。しかしそれをすれば彼女は不幸になる。それを理解していたレイスフォールは、感情を抑え付けて理性に従った。


 その手本に、ライシュもまた倣わねばならなかった。その辛さに、じっと耐えながら。


(父上。あなたも、こうだったのですか……?)


 幻の中で、ライシュはそう問い掛ける。するとその幻は僅かに振り返り、口元に小さな苦笑を浮かべたように見えた。そしてまた、その幻は前を向く。ライシュに見えるのは、その背中だけだ。しかしその背中は、少しだけ近くなったように思えた。


「…………亜父殿を、リドルベル辺境伯を呼んでくれ」


 一時間弱ほどもぼんやりとしていただろうか。ライシュは退席させていた秘書官を呼んでそう命じた。



□■□■□■



 マリアンヌの来訪を受けたあの夜から、ライシュの仕事ぶりや方針が目に見えて変わるということはなかった。ベリアレオスに命じた皇国北部の制圧計画の作成は継続されているし、彼が頻繁に夜遅くまで仕事をするのも変わらない。


 そのライシュの姿を見て、ベリアレオスは珍しく狼狽していた。娘のマリアンヌからは、彼と話をしたと聞いている。それなのにこれといった変化が見られない。まさか説得は失敗したのだろうか。いやしかしそれならば娘夫婦の関係にも影響があるはず。だがそれも見られない。一体どうなったのであろうか。


『何も心配は要りません。もう大丈夫です』


 駄目なら今度こそ叩いて言い聞かせますわ、と言ってマリアンヌは朗らかに笑う。どのみち彼が頼まれている仕事は、表も裏も必要な事柄なのだ。マリアンヌが「大丈夫」というのであれば、それを信頼しよう。ベリアレオスは自分にそう言い聞かせてひとまず納得することにした。


 彼がライシュの変化を感じ取ったのは、サザーネギアへ赴いていたラクタカス大将軍が近衛軍5万を率いて皇都アルヴェーシスへ帰還した折のことである。


(さて、何かあったか……)


 ベリアレオスがライシュから呼び出されたのは、ラクタカスらが帰還してからおよそ半日後のことだった。時間的に考えて、ライシュは彼から遠征の報告を聞いた後、ベリアレオスを呼び出したに違いない。


 彼は胸に一抹の不安を抱えながら、宮廷の廊下をライシュの執務室に向かって歩く。その不安が的中したのかは分からない。しかしなんせよ、彼はライシュから遠征について思いがけない結果を聞かされることになった。


「これは……、何といいますかな……。予想外のことになりましたな……」


 顎鬚を撫でながらそう呟くベリアレオスに、ライシュは苦笑しながら「まったくだ」と応じた。それから彼はさらに、アレスニールから申し入れのあった同盟のこと、世子のこと、そしてジュリアの妊娠のことを話す。ベリアレオスは大変驚いて眼を見開き、それを見てライシュは悪戯が成功したとばかりに楽しげな笑みを浮かべていた。


 ちなみに、彼が一番驚いていたのは、やはりというかジュリアの妊娠の件だった。ライシュ共々、本人が知れば「失礼な話じゃ」と言って怒る違いない。


「それで亜父殿。この先、我が国はどう動くべきであると考える?」


「……まずは、ギルヴェルスに何かしらの制裁を加えられてはいかがでしょうか?」


 ベリアレオスがまず口にしたのは、同盟の件ではなくギルヴェルスのことだった。それは彼が対エルストを念頭に置いた戦略の構築を任されていたためかも知れない。


「ギルヴェルスは一度締結した講和条約を無視し、その上我が軍と交戦しました。このことに対し、何かしらの制裁を課すべきであると考えます」


 この件を利用し、エルストの力をそぐ。それがベリアレオスの考えだろう。しかしライシュは首を横に振った。


「それは出来ない。この件はすでにカルノーが片をつけている。そして奴にその権限を与えたのはこの俺だ」


 そうである以上、この裁定を無視することはできない。仮に、強引に制裁を課そうとすれば、エルストはもとより北部の貴族や代官らも反発するだろう。それでは国内外の情勢がまた不安定になってしまう。


「でしたらやはり、サザーネギアとの同盟をお考えになるべきかと……」


「やはり、そうなるか……」


 ライシュはそう言って、苦笑を浮かべながらため息を吐いた。例え遠征が失敗しようとも、エルストはいずれ必ず挑んでくる。その確信があるというのに、今何もしないと言うのは下策だった。


「殿下は、いかがお考えなのですか?」


 ベリアレオスは少し躊躇いがちにそう尋ねた。彼は恐らく世子のこと、つまりカルノーやジュリアのことも含めてそう尋ねたのだろう。ライシュはそれを察しつつ、しかしこう答えた。


「同盟が持つ大きな意味は理解している」


 世子の件には触れず、彼はそう言った。だが、同盟と世子の話は不可分だ。カルノーがグリフィス公爵家の世子となって初めて、同盟締結への道が開かれるのだ。それはライシュも理解している。理解してなお、彼はまだ心のどこかで友人を手放したくないと思っていた。


「だが、サザーネギアと同盟を結ぶとなれば、私の一存というわけにもいかん」


 ギルヴェルスとの同盟は、ほとんどライシュの一存で決めた。しかしあの場合は、そもそもエルストという発起人兼仲介人がいた。特に皇国の北部に大きく関わることで、この二人が賛成しているのだ。あえて反対する者などいるはずもない。


 だが今回は事情が異なる。特にサザーネギアはついこの間まで敵国であったのだ。今すぐに同盟を結ぶことに反対する者がいてもおかしくはない。


「さて、謀臣どもはどう考えるかな……」


「最初は反対する者もいるでしょうが、摂政殿下がそうお望みなら、最終的には賛成の方向で纏まるでしょう」


 ベリアレオスはそう言い切った。彼の頭の中には、すでに根回しをするべき有力者の顔が何人も浮かんでいる。彼自身、この同盟には大いに賛成だった。これでエルストを強力に牽制できる。彼はこの同盟を、内乱の芽を摘む有効な手段と考えていた。


「それは同盟の件か、それとも世子の件か?」


「両方です」


 同盟について言えば、ついこの間戦ったばかりであることを除けば、利点しかないと言っていい。直接国境を接していないので裏切りを警戒する必要がないのだ。その点を強調すれば、謀臣たちを説得することは可能だろう。


 そして世子の件について言えば、むしろこちらの方が容易いはずだ。反対する者はほとんどいないはず、とベリアレオスは思っている。


 なぜなら、カルノーは嫉まれているのだ。これまでの異例の出世と、そしてこの先の約束された将来を。


 たしかに実績があり、さらに摂政の義弟にして寵臣たる彼と、表立って敵対したがる者はいない。だが波風立てずに彼を遠くの異国へ飛ばしてしまえるのなら、諸手を挙げて賛成する者は多い。少なくとも近衛将軍の席が一つ空くのだ。それだけでも賛成する者はいるだろう。それがベリアレオスの見立てだった。


「そう、か……」


 どこか残念そうに、ライシュは小さくそう呟いた。自分の考えが間違っていて、誰かがそれを否定してくれる。あるいは、彼はそんなことを望んでいたのかもしれない。しかし現実はどこまでも冷徹だった。


「……亜父殿、根回しを頼む」


 数拍の沈黙の後、ライシュはベリアレオスにそう頼んだ。彼はすぐさま頷いて「御意」と応じ、さらにこう尋ねた。


「それで賛成と反対、いずれの方向で根回しをいたしましょうか?」


「……賛成の方向で頼む。ただ、ロキを押さえ込むには少し弱いな」


 もう一手欲しい、とライシュは言った。


「まあそちらは私が考えておく。亜父殿は根回しを頼むぞ」


「御意にございます」


 そう言って恭しく一礼すると、ベリアレオスは身を翻して執務室から退出した。廊下を歩く彼の足取りは軽い。それはライシュの考えが、彼と同じく内乱を避ける方向に修正されてきたのを感じ取れたからだ。


 この機運を弱めてはならない。そのためにも、サザーネギアとの同盟は確実に成立させる。ベリアレオスはその決意を胸に、まずは誰から根回しをするべきか、考え始めた。


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