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終末世界の幼馴染主従ラブコメは死に戻りからリスタート  作者: スカンジナビア半島


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【三】-2 助けたわけじゃない

 周囲を確認すると、すぐにまた走り始める。

 立ち止まりすぎた。

 この世界の荒野で最も貴重なのは時間だ。

 何が理由で深刻な事態に繋がるかわからない。


 足止めは最小限にする必要がある。


 また代わり映えのない景色と沈黙が続く。

 そう思った矢先、また後ろから声がした。


「鎖鎌ファッションの感想を述べよ」


 後ろから肩を揺さぶってくる。

 相手が雇い主の令嬢じゃなかったら殴ってるところだ。


「今、走ってる最中なんで。

 せめて走り出す最中に求めてください」


「砂埃をまぶさないと完成しないコーデ。ムリ。

 さっき、止まった時によく見たでしょ」


「見てませんよ」


「わたしのオシャレよりモヒカンの生首の方が好きなんだ」


 少しへそを曲げたように言う。

 そういうことではないが、こちらは説明では納得しなさそうだ。


 エルシアの趣味、

 それは“色々な刃物を、その日の気分で使う”というものだ。

 前の人生では余裕がなくて、ほとんど楽しめなかったが、

 エルシアは今日の武器を決め、それに合わせたファッションをキメるのを好んでいた。


 その感想を求めているということだ、ノーマンに。


「ま、まあもう一人の首は持ってこなかったのは偉かったですよ」


「斬ってなかったから」


「待ちやがれぇ!」


 背後からエンジン音と怒声が聴こえてきた。

 しまった。ノーマンは舌打ちした。

 無条件にエルシアが二人とも殺したと勘違いしてしまっていた。


 さっきの停車でもう一人に追いつく時間を与えてしまったわけだ。


 だが、エルシアが振り返りもせずに

 背後に鎌を投擲。


「生首は捨てて!」


 ノーマンの懇願よりも

 エルシアの技の方が遥かに速い。

 後ろのバイクから鎖に巻きつけられて飛んでくる生首を、

 ノーマンが手ではたき落とした。


「まったく!」


「ノーマンにだけ見せるならいいと思った」


「好んで見たいものじゃないんですよ!」


「モヒカンを殺すのもダメ?」


「それはいいです。

 あんなのが生きてても、しょうがないですからね」


 バイクを反転させ、今度は走ってきた方角へ戻った。

 追いかけてきたモヒカンが使っていた、倒れたバイクを検める。

 走行は可能。大規模な修理も必要ない。


 少しだけガソリンを補給しておく。

 無用な荷物や装飾を外し、

 軽くなったバイクを起こした。


「これを使って南東へ走り、マグリバという所へ行け!

 “ノーマンの知人だ”と言えば受け入れてもらえるはずだ!」


 遠くに見える母娘に大声で呼びかける。

 周囲にモヒカンの気配はないが、

 奴らは群れで行動する習性を持つ。

 二人だろうとも、欠ければ誰かが探しに来るだろう。


「自分達の痕跡を遺すな!

 健闘を祈る!!」


 遠くから走ってくる母親が何度も頭を下げてきた。

 マグリバに行くには骸獣エリアを抜けなければいけないが、

 彼女らの幸運を祈る他ない。


「そもそも、どうして手を出したんですか。

 彼女らが何者かもわからないんですよ」


「痛いのは誰だって嫌だから」


 エルシアが事もなげに言う。

 細い腕が腰に巻き付く。

 ノーマンはエンジンを吹かし、バイクの調子を確かめる。


「ノーマンも置いていかなかった」


 今轟音を出して、周囲のモヒカンを引きつけようとしたことか、

 それともさっきのバイク贈呈のことか。

 エルシアは両方を指摘しているのかもしれない。


「違います。まあ、恩を売れたのはいいことですが」


 そう言ってまた代わり映えのない砂と風だけの景色を進んでいく。

 骸獣が無遠慮に自然という自然を食い散らかしたせいで、

 せっかくの“ピクニック”なのに移動の楽しみがない。


「面白くないですよね、砂ばかりで。

 来たこと後悔してるんじゃないですか?」


 こちらとしては退屈だが、

 エルシアもそう思うなら悪くない。

 次からは大人しく留守番をしてくれるなら。


「楽しい」


「お世辞はいらないですよ」


「あなたとだから」


 思わず振り返ると、

 透き通る瞳でまっすぐに言われてしまう。


 お世辞を言う人間でないことを知ってはいたが、

 そんなことを言われるとは予想せず、

 ノーマンは息が詰まった。


 憎まれ口でも叩けたら良かったが、

 何も思いつかない。


「ならどこでもいいじゃないですか」


 そんな何の捻りもない返答をしたことに、

 羞恥心で首と頬が痒くなり、ボリボリと掻いた。


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