【三】-3 旧友のいる都市
そうしていると、目的地が見えてきた。
機械の部品を繋げて要塞にしたマグリバとは違い、
そこにあるのは、廃材を繋ぎ合わせた壁と、木造の扉だった。
その前を、槍を持った衛兵が守っている。
「あんな壁だと機械に負ける」
初めての他都市で、
エルシアが首を傾げた。
マグリバならあんな壁ではちり紙にも劣るだろう。
歴史が巻き戻る前に、
世界を回ったノーマンは、様々な都市を見た。
都市は、外見で周辺状況がわかる。
人が守っていればモヒカン、
機械が守っていれば骸獣の脅威が大きい。
何もない都市はありえない。
「着きますよ」
ゴーグルを外し、バイクを止める。
燕尾服を翻して歩を進めると、
槍を構えている衛兵が警戒を露わにした。
仕方のないことだが、
ノーマンとしては高揚がある。
この都市には、かつての歴史での知己がいると知っているからだ。
──参謀殿! これが終わったら息子に剣を教えてやってください!
「ここの領主に用があってきた。
マグリバの領主、リチャード・ループライトの命令で来た」
この都市は、かつての部下であるパトリックという剣士の故郷だ。
前の時間では家督を継いだばかりで、息子の話ばかりしていた男。
名家育ちのボンボンだが、ノーマンにやたらと付き纏ってきたお人好し。
「そちらと交易関係を深めたいと伝えてくれ」
特に再会したいわけではない。
死に顔を知っている相手とまた仲良しごっこをするなど、ぞっとする。
初めての任務だ。成功率が高い都市に行くことを選ぶのは当然。
都市間の関係を深めるのが任務とはわかっている。
だが、それだけでは芸がない。パトリックを通じて、この都市を内側から侵食すれば、
なおのことこれからに役立つ。
名家育ちの坊ちゃんが、領主の息子としてどんな顔でふんぞり返っているにせよ、
マグリバの権威とノーマンの交渉術を用いれば造作もないはずだ。
「入りますよ」
衛兵が門を開け、
見張りとしてついてくる。
エルシアは大人しく、ノーマンの後をついてくるだけ。
「ノーマン、嬉しそう」
「そうですか? まあ、お父様のお役に立てますからね」
「そこは“あなたと一緒だから”って言うべき」
「じゃあそれで」
「おおっ」
自分の顔を両手で挟み、エルシアは目を丸くした。
「誰が来た」
案内された先、
ノーマンの記憶の通りの男が、
荒々しい鎧のままに、ノーマン達を待っていた。
案内した衛兵が事情を説明すると、
男は脇に立てかけられた剣を掴んだ。
「パトリックとさして変わらん年齢で立派なことだ」
立ち上がると、縦にも横にも大きい将軍が、
堂々たるプレッシャーで、
ノーマン達を見下ろす。
「私がこの街の領主、
グランテイマーだ」




