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終末世界の幼馴染主従ラブコメは死に戻りからリスタート  作者: スカンジナビア半島


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【二】-1 都市構想について

【ニ】


 一度、必要な人間だと思わせればこっちのものだ。


 齢十三歳のノーマンは、

 娘と親しい関係なのも合わさって、

 リチャードに個人的な相談を度々されるようになっていた。


「エルもだいぶ私に話しかけてくれるようになったよ」


「それは何よりです。

 お嬢様は旦那様の仕事を邪魔しないか気にしていましたから」


「そんな風には見えなかったよ。

 あの子はあまり喋ってくれないから」


 馬鹿馬鹿しい話だ。


 この年代の内面が外見の通りなわけがない。

 ノーマンは聞こえないように鼻で笑う。


 だが、これはいい。

 こちらの有用性をきちんと示すことができている。

 じきに、より深い話し合いもできるようになるはずだ。


 その時は、この父娘は何も持たないまま家を追い出されて、

 遅れてきたピクニックをするようになるに違いない。


「ところで、君に尋ねたいことがある」


 温和な領主の眼差しが真剣味を帯びた。


「君に領地経営の書類整理を任せるようになったわけだが、

 マグリバにこれから必要なのは何だと思う?」


 早速、突っ込んだ話を振られた。

 一瞬、言葉を濁そうか迷う。

 ここで返答を誤れば、評価を大きく下げかねないことをノーマンは危惧した。


「支配権の拡大でしょうか」


 一瞬、リチャードが怯んだ。


「……ニュアンスとしてはつまり?」


「他の街との繋がりをもつことになりますかね。

 聞こえの良いことを言えば、都市間連携です」


 過去に旦那様の手記を読んだ時の記憶が蘇る。


 それは時間を巻き戻す前の歴史──廃墟になった屋敷で、使えるものを漁った時に発見したものだ。


 そこには、ノーマンを心配することと、

 もしも彼が本当にエルシアの治療薬を持ち帰れた時のことが書かれていた。


「俺としては、下手にパンクしてしまうよりも、

 先にこちらの地盤を整えるのを優先してもいいと思いますが」


 この世界で他者を頼るのはプラスなことだけではない。

 弱みとなり、貸しとなり、

 付け入る隙を与えることになってしまう。


 ろくな戦闘員がいないこの街で、それをやっていいものか、と

 執事の少年は考えた。


「旦那様の御意志に従います」


 いつかは関わることではある。

 早くにそうなるのであれば、今の内に覚悟を決めておけばいい。


 ノーマンの要望とは別に、ここは相手に合わせて出方を見ることにした。


「そう言ってくれるか……しかし、私の狙いがよくわかったね」


「行方不明になる物資が目立ちましたから」


 この時代、交易は個人がやるものだ。

 だから、失敗は当人の責任になり、

 代わりに成功したら巨万の富も得られる。


 かと言って、成功でのリターンを高めることだけ考えて、

 道中の護衛をケチってしまえば、

 骸獣にあっさり殺される。


「物資を届けられなくて一番困るのは商人だけでなく、

 物を求めている受け入れ側だ」


「都市同士の結束を高めれば、そのリスクを減らせますね」


 確証はない。


 リチャードの手記は、エルシアに渡す前に、

 重要らしきことは写したが、

 とりとめのない記述が多かった。

 構想として形になっているようには見えなかった。


「送る側と受ける側で行商人の基準を設けたいんだ。

 できれば、多少は領主側で支援できるようにしたい」


「まだ負担を増やすのですか?」


「君のおかげで余裕ができている。

 看病の心配がなくなって、思考に費やす時間を増やせた」


 それだけが原因とは思えないが、

 向こうがそう考えるなら、ノーマンとしても好都合だ。


 こちらとしても、強い当てがある。


「それでは、俺が秘密裏に他の都市に単独潜入し、領主に働きかけましょう。

 旦那様は書状を書いておいてください」


「いいのかい?

 君一人で行かせることになってしまうけれども」


「貴方たちに救われた恩に比べれば、

 これくらいのこと、恩返しにもなりませんよ」


 適当な美辞麗句を並べただけで、

 リチャードは感じ入ったのか、

 鼻をすすって目を赤くした。


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