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終末世界の幼馴染主従ラブコメは死に戻りからリスタート  作者: スカンジナビア半島


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【九】-1 強すぎる

【九】


剣邪がどこから来たのかはわからない。

だが、ある日を境に大きな都市が次から次へと消えているという噂が出た。

滅んだ都市の中央には、

この世界にはあり得ない、埃一つない白い服をまとった異様なものがいたという。


東の果てで忍者修行をしていたせいで、

ノーマンには細かい情報を把握しきれていない。

だが、ここで会うはずのない存在だった。


「どうして誰も生きていない」


静かに見下ろし、剣邪は首を傾げる。

ここにいたモヒカンの大きな群れは、エルシアとノーマンが滅ぼした。

そのことを言うべきなのか。

ノーマンにはわからない。心頭滅却を極意とする忍者の集中術によって、

平静を保ててはいるが、そうでなければ喉から心臓を吐き出して死ぬほどの恐怖に気絶していただろう。


「ここに何の用で来た」


ノーマンの質問に、答えは返らない。

答えが返らなくとも、見当はついている。

奴の体質は、周知の事実だった。


「斬れば斬るほどにだ」


そうだ。

斬った者の力を取り込む。

人を斬れば、強くなる。

街を斬れば、街を滅ぼせるものになる。

国を斬れば、国を滅ぼせるものになる。

それも際限なく、斬った者の数が膨らめば膨らむほどだ。


独り言と一緒に、モヒカンの死体から息のある者を探す。

その過程で亡骸を踏みつけても、

一顧だにしない。

紙切れ、ゴミや埃を踏むようなつもりで、死体を踏んでいた。


「斬れば斬るほどに」


「おい、こっちの質問に──」


剣邪の肩に手を置こうとすると、

その腕が切断されて宙を舞った。


剣邪は振り返りもしなかった。

ただ、肩に近づいた腕だけが、当然のように落ちた。


「おおおおおおおおっ!?」


ノーマンが喉を振り絞って絶叫する。

腕を斬られたことに対してではない。

斬撃の起こりが全くわからなかった。

腕が動いた気配すらない。

つまりは、空気の乱れすら発生させずに斬撃を放ってみせたのだ。


さざめきの丘に、くるくると回転して飛んでいく腕。

圧倒的な力量差。

生物としての本能を術で押し込んでも、

厳然たる事実として差し出されると、平静を保つことが困難になる。


用心のために、モヒカンの腕を切断して使ったのが功を奏した。

これが自身の腕だったら、と思うとぞっとする。


「お前達でいいか」


こちらが冷静さを取り戻す前に、

剣邪がエルシアとノーマンを得物として認識した。

認識が甘かった。前の歴史の同じ時期と比べれば、

エルシアもノーマンも比べ物にならないほど強くなっている。

だから「このまま未来に向けて積み上げれば大丈夫」と思っていた。


荒野生まれとは思えない甘ったれた考えだった。

この世界で、生き急げない者に、居場所は最初からない。


「千赤忍法・幻影千化スウィフト!」


ノーマンのシルエットがぐにゃぐにゃ揺れて歪み、潰れる。

特殊なハーブを用いた簡易的な香。

嗅いだ者の認識を狂わせる。


幻影のノーマンの上半身が斬られ、虚空に掻き消えた。

幻影を斬らせたところで終わらないことはわかっている。

だが、これだけでは足止めにもならないことも知っている。

これで避けられるなら、前の歴史で片がついていた。


斬撃の先で地割れが起き、

さざめきの丘が絶叫とともに崩れ落ちた。

だが、しめた。記憶よりも斬撃の規模が弱まっている。

こちらが幼くなっただけではない。

剣邪も同様に、剣が若くなっているのだ。


本来なら、ここで生じた亀裂がクレパスとなって、

そのまま奈落の底に吸い込まれていたことだろう。


「血骸!」


連日の限界解放に身体が悲鳴をあげる。

血の外套をまとい、展開させて翻せば、最低限の目隠しにもなる。

一目散にエルシアを担いで、この場を──



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