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3.不気味な館

「ここでお待ちください」


バタン!!


(随分横柄な侍女だな)


マリアーノ邸へ到着後、3人を案内した侍女は始終不機嫌そうで、部屋へ到着した途端に乱暴に扉を閉めて行ってしまった。


まだイザベラ本人にすら会えていないと言うのに、侍女の態度だけで歓迎されていない事が感じ取れる。


早朝に出発するようオリビア妃から指示を受けた3人は、訪問用に身支度を整え軽い朝食を取った後、早々に城を出る事になった。


訪問着は反省の意を込めてか3人とも落ち着いた色のドレスに最低限の装飾品を身に着けた装いで、手土産にはオリビア妃から小魚を油に漬けた瓶を手渡された。


「こんな物、貧乏人の食べ物ですわ」


馬車での移動中に何度も『領地へ帰る』と泣き喚いていたエミリアは、泣き疲れた様子で手土産の瓶を手に取った。


彼女の言う通り、オリビア妃から渡された手土産は新鮮な魚を手に入れる事の出来ない者達が手を出す日常食で、王族であるイザベラへ渡す物として相応しくない様に思える。


「それにしても、私達にはお茶すら出すなと命じられたのでしょうか」


珍しく苛立った様子のアイラがため息を吐く。


先程の横柄な侍女は戻ってくる気配もなく、他の従者に至っては姿を見る事すらなかった。


従者が侍女一人とは思えないが、客人に出くわさない様に身を潜めているのか、たまたま居合わせなかっただけなのか、どちらにしろ人一人いない屋敷は不気味なものだった。


「そう言えばこの屋敷の周りって、咲いているのは赤い薔薇だけでしたね」


暇を持て余したアイラが、先程屋敷へ向かう途中に見えた庭園について話し始めた。


秋に咲く薔薇には他の季節よりも色が濃くなる特徴があり、薄暗いオーラを放つこの屋敷を更に陰鬱な雰囲気にさせていた。


「え、ええ。統一されてましたね。多彩な庭園も綺麗ですが、あの庭も美しく思えましたわ」


屋敷に到着してから元気のなかったエミリアが美しい花の事を思い出し、小さな明かりが灯った様に少しだけ元気になった。


エマには気味悪く見えた庭園も純粋な心を持ったエミリアには美しく見えたらしい。自身の濁った目を正さなくてはと考えさせられてしまう。


「はい。あれはね。イザベラ様が処分された者達の血を吸って変色したらしいですよ」


正す必要があるのはアイラの方だった。




「カタカタ方カタカタ・・・・・・」


元気を取り戻していたエミリアが見たことない速さで歯を鳴らしている。


「アイラさん!なぜそんな話を!?」


「いえ、暇でしたし」


エマの叱責を受けても平然としているアイラの前で、エミリアがどんどん不安定になっていく。


繊細過ぎるエミリアの細胞と鈍感すぎるアイラの細胞を互いに分けっこ出来ないのかと非現実的な事を考えてしまう程、彼女達は相性が悪い。が、そうも言っていられない。


「アイラさん、私は従者に頼んで精神安定剤を貰ってきますから、どーか、どーか無駄な事を口にせず、エミリアさんの背中を優しく撫でながら待機していてください」


不安要因を多く抱える二人を残し、エマは部屋を後にした。




屋敷の中は塵一つなく、手入れが行き届いているのだが、その作業を行う侍女達に会うことが出来ない。


いや、実際は姿を何度も目撃してはいるのだが、エマの存在を感知した途端に素早く逃げられてしまうのだ。


お陰で薬はおろか、声を掛けるも顔を見る事さえも出来ていない。


(理由は分からないが、気分は良くないな)


数度にわたり避けられ続けたエマは、不快な思いを抱え、強行突破をする事とした。


いくつも並ぶ部屋の一つに身を潜め、侍女がその前を通った途端に捕まえる。強姦の様な発想ではあるが、無礼な態度を取っているのはあちらも同じだと、作戦決行のため目に付いた部屋へと入った。


すると、


「やぁん、アーチー様のエッチ~」


甘ったるい女の声と。


「可愛い子だね。君は。さぁ、もっとこっちへおいで」


小さな子をあやすかの様な優しく、けれども卑猥な声が聞こえた。


(まずい。先客がいる)


二人は大きなベットの上で絡み合っていて、エマの存在にはまだ気が付いていない様子だが、女の呼ぶ名前が気になった。


(アーチー・・・、アーチー・マリアーノ!?)


そう、女と絡み合うその男は、イザベラの夫であり、王都の物流を改竄し詐欺行為を指示した張本人、アーチー・マリアーノだった。


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