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15.謁見の間

ノアが部屋を訪れた日から1カ月が経った。


『風邪程度なら1週間程で治るだろう』と考えていたエマだったが、咳や発熱などの内部の異常よりも、打撲や切り傷など外部の損傷の方が激しく、療養期間が長引いたのだ。


猛獣から逃げるために飛び込んだ川は流れが穏やかではなく、草原まで辿り着く途中で岩や流木などに幾度も体を打ち付けた事が原因だろう。


それでも王宮の医師が優秀で、治療に必要な薬などの資材が豊富であったため、1カ月程で外出許可が下りる程度には回復する事が出来たのだ。


そして、今日は予定していた王への謁見の日。


エマが失踪した経緯を説明するため王に設けて頂いた場ではあるが、王の目に触れる前にはそれなりに着飾る必要がある。


そのため、侍女に上等な服を用意してもらい、それに合わせた化粧や髪型を相談するなどやる事が多く、病み上がりで、しかも着飾る事を不得意とするエマには苦痛な作業だった。


「お迎えに上がりました」


どうにか身支度を整えられたエマを、いつも通りの完璧な笑みを浮かべた美しい騎士が迎えに来た。


(まぶしい・・・)


太陽の光に浴びてない時間が長かったせいか、1カ月ぶりに見る輝かしいばかりのノアの顔面に思わず目を細めてしまう。女性の様な顔をしているが、女一人を川から引き揚げる力を持つのかと思うと奇妙な感覚を覚える。


「ご体調はいかがですか?」


「もう問題ありません。ご心配をおかけして申し訳ありません。」


本館への通り道である庭園を歩きながら当たり障りない会話が交わされる。傍から見れば騎士と令嬢の何気ないやり取りだが、二人の心中は穏やかではなかった。


ノアは事件の真相が、エマは国王の下す裁きが気になって会話どころではない。


(上手く纏められればいいのだが)


自身は被害者なので国王の下す裁きに被害を被ることはないだろう。だが、エマとて悪魔ではない。


我儘でプライドの高いエミリアは好かないが、令嬢の血など見たくもない。何よりも被害を被ったエマにとってエミリアが罰せられる事など何のプラスにもならないのだ。


(殺されかけたのだ、それなりの賠償をしてもらわないとな)


企みを周囲に勘付かれない様、涼しい顔を装いながら、案内されるまま国王の待つ謁見の間へと向かった。




「失礼いたします。カールソン嬢をお連れ致しました」


「入れ」


短い返事を合図に重々しく厳かな扉が騎士達の手で開かれる。


謁見の間、それは主に王が貴族や他国の王などの訪問者を迎える場として使用されるが、時には高い功績を上げた騎士へ勲章を授与する儀や、18を向かえた王族の成人の儀、そして、王に対して不敬を行った者を裁く場としても使われる。


部屋の隅には一定の間隔を空けて騎士が配置されており、部屋の奥には玉座に王と王妃が腰を掛けている。


「カールソン嬢、前へ」


王の一言で前を歩いていたノアが音もなく下がり、否応なしに前へ出る形となった。ノアの背に隠れて見えなかったが、王座の前にはエミリアと湖に招待されていた2人の令嬢、そして今回の件は無関係と思われるアイラが王座に向かって跪いていた。


(アイラ様・・・気の毒に)


アイラも自分も運がないと心で嘆きながら、4人の令嬢に倣い自身も王座に向かい跪く。


「揃ったな、皆、顔を上げろ」


そして重々しく不穏な空気の中、裁判が始まった。


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