◆天地総一郎の手記(二)
拓也に続き、耕大まで殺されてしまいました。
耕大。ここでは敢えて■■■と呼びましょう。
■■■は家族である以前に、私の良き友人でした。
当時行きつけであった喫茶店『■■■■■』で、いつも隅の席に一人で座り、珈琲を飲みながら小説の原稿を書いていた私。そんな私に、同じく常連客であった彼が初めて声を掛けてくれた時のことを、今でも鮮明に思い出します。
人付き合いが苦手な私のせいで、随分と苦労を掛けたと思います。
然し彼は、私に愛想を尽かさないでいてくれました。どうしてだったのでしょうか。今となっても不思議です。これまで何度か訊ねたこともありますが、彼は理由を教えてくれませんでした。私達のこういう話題になると、彼は妙に照れるのです。
兎に角、彼の明朗快活な人柄に助けられて、私はゆっくりと心を開いてゆきました。
彼は、■■■■としての私が、自分が天地総一郎であると告白した唯一の相手でもあります。その他の相手には、私は最初から天地総一郎として知り合い、そのまま天地総一郎として接しましたので、■■■■という名前は告げておりません。反対に■■■■としての私を知る人々も、私が天地総一郎であるとは知る由もなく、そもそも長く交流を持つことがありませんでした。
■■■は私の理解者でした。彼の支えがなければ、私は小説は好きで書き続けたに違いありませんが、それを世間に発表し続けることについては、どこかで折れていたかも知れません。そうでなくとも、『無戸籍という生き方』を書いて、そこから活動を展開していくことはなかった筈です。
天地家をつくることが出来たのも■■■のお陰です。彼は自らの資産を惜しげなく天地家の為に投じてくれました。さらには迷うことなく家族の一員となり、天地耕大となってくれました。彼は■■■■■としての人生を生きていく選択も充分に採り得ましたし、その方が盤石であった筈です。それでも彼は、私と一緒に生きていくと決めてくれました。天地家は自分の夢でもあると云ってくれました。感謝してもしきれません。
然し、私は天地家を駄目にしてしまいました。
私の愚かしい失敗から、凡てを駄目にしてしまいました。
ごめんなさい。ごめんなさい耕大。
本当に、本当にごめんなさい。ごめんなさい。
このまま私達は皆、殺されてしまうのでしょうか。
逃げ出せる窓のない土の中。地獄に落ちた私達に、天から下される罰。
■■とは未だ話せていません。■■が私を避けているのです。
この■年間、ずっとそうでした。今更、聞く耳を持ってくれる筈がありません。
嗚呼、どうしたらよいのでしょう?




