86. デート
「今日は、物凄いデカい魔物と戦う時の技術を軽く教えていこうと思う。まあ、かるい応用編だな。」
「はぁ〜。」
一線流の授業が始まった。
とても退屈だ。
応用と言っても、やる事の根本はほぼ同じじゃないか。
皆はそろそろ気づかないのか?
ちょっと違うだけで同じことの反復をしているだけだと言うことに。
俺はその事に気づいた時から退屈でしょうがない。
皆にも伝えたほうがいいだろうか。
...俺、嫌われてるからいいや。
これからの授業に参加しようか悩むな。
ずっとこんな感じなら何も学べる事はない。
自分だけでも出来る。
図書館にいたほうが有意義なのかも知れない。
俺の混合剣術はもう完成している。
そして、体が覚えてきている。
今の俺は凄い強い剣士と言えるだろう。
今回の自由戦は少し楽しみだ。
「あ〜、自由戦を始めろ。」
「先生、対決だ。」
「自信満々だな。大丈夫だろうな?」
レオとステラ先生はニヤニヤしている。
ダッ
レオがニヤニヤしながら攻める。
ギィィ
先生が受け流そうとし、レオは剣を振る方向を突然
変える。
「なっ!?」
ギィィ
先生は身体強化を使い、素早くまた受け流す。
ブンッ
先生が力いっぱい剣を振り下ろす。
ガキンッ!
「ぐっ。」
先生の剣をまともに防いだレオは、その威力で地面に膝をつく。
ダンッ
キィィ
レオは受け流しながらジャンプし、空中を回転して
剣を先生の首向けて振る。
ヒュッ
先生はのけぞる形で避け、レオの剣は空を斬る。
ガキンッ
ガキンッ
ガキンッ
ガキキキキキン
「「はぁ、はぁ、はぁ、」」
ゴーン
「はぁ、はぁ、終わりだ。みんな戦いをやめろ。」
こんなの初めてだ。
勝敗がつかないまま、時間が来てしまった。
くそっ、あと5分長かったら俺が勝っていたのに。
絶対勝っていたはずだ。
ずっと思っていたが、この剣が脆い。
高価そうな剣を見ても、俺の身体強化を全開にした拳とかの方が強いと思うんだよな。
まあ、所詮は趣味だからいいんだけど。
絵画部へ行こう。
もう何回も行っているから、目をつぶっても行けてしまうかも知れないな。
レオは廊下まで来た。
「あっ、レオ様!」
アルシアが来た。
俺はいつになったらアルシアの身長を越せるんだ。
これじゃあ胸ばかり見てしまうよ、おい。
これは胸を見てもいいと言う、聖神フローラ様のお告げなのかも知れない。
だったら見るしかないよな。
俺はしょうがなく見ているんだ。
本当は見たいわけではない。
「...あの、レオ様。久しぶりに私の家に来ませんか?」
「え?」
「少し遠いので、出来れば今から一緒に行きたいです。」
「今から...」
アルシアの家といえば、クイーン家か...
確かに、久々に行ってもいいな。
全然、アルシアの家には行けてなかったしな。
なんか、家に行くみたいな約束をしたようなしてないような。
「ちょっとだけ待ってくれ。俺の家にいる人に伝えてくる。」
俺の家は遠い。
おそらくアルシアの家より遠いと思うのだが、
アルシアは歩いて家まで行く気だろう。
と言うことは、遅くなるはずだ。
リリに遅くなることを伝えたほうがいいよな。
走ればすぐだし。
「分かりました。絵画部にいればいいですか?」
「ああ、そうしてくれ。」
ダッ
身体強化を全開にして、凄い速度で家に帰った。
ギィ
「おかえりなさいませ、レオ様。」
「リリ、今日は遅くに帰るから。」
「え?」
ダッ
身体強化を全開にして、凄い速度で学校へ行く。
「はぁ、はぁ、はぁ、アルシア、おまたせ。」
「レオ様、大丈夫ですか?」
「ああ、行こう。」
「...はい。」
「なあ、絵は描かないのか?」
椅子に座って絵を描いていたセルロスが尋ねる。
「ああ、今日は用があるんだ。」
「...用ってなんだ?」
とぼけた顔しやがって。
分かってるくせに。
「じゃあな、セルロス。」
俺はアルシアと学校の外へ来た。
外では、馬車が待っていた。
御者が1人いた。他は誰もいないみたいだ。
ギィ
「お待ちしておりました。アルシア様。」
御者は扉を開けて、微笑んだ。
「ありがとう。さ、レオ様。」
アルシアは微笑みながら、俺を先に乗せようとしている。
微笑まれると、より大人の雰囲気が漂ってきて緊張するな。
歩いて帰るんじゃないんだ。
俺とアルシアは車内に入った。
御者は2人とも入ったのを確認すると、扉を閉めて
出発した。
この人、俺が来ても何も言わないのか。
できた人だな。
セルロスなら絶対に尋ねるぞ。
「レオ様、すぐ家に着きますからね。」
アルシアはこっちを見て笑顔で喋った。
近いんだよな。
ホント、アルシアは美人だ。
離れてほしい。
でも、近くにいてほしい。
これが矛盾か。
「走った方が速いと思うぞ。」
「速く走ると、兵士の人達に怪しまれてしまいます。」
「そうかもな。」
馬車というのは楽でいいな。
走るのは疲れなくても、楽ではない。
たまには走らないのもいいのかも知れない。
「アルシア、デカくなったな。前とは全然違うぞ。」
「!?」
アルシアは腕を組む。
「レオ様?」
アルシアは少し怒った口調で、話す。
「なんだよ。」
なんで少しムカついてるんだ?
もしかして、アルシアは逆に小さくなりたいのか。
俺がデカくなりたいのと同じような感じだろう。
確かに、俺はチビと言われたら、怒る可能性はゼロではないと思う。
まだ身長で怒ったことはないけど。
「...」
アルシアは下を向いている。
この方が、俺はアルシアを見やすいな。
もう少し、このまま下を向いていてくれ。
馬車が止まった。
着いたみたいだ。
意外と早く着いたな。
ギィ
目の前には、クイーン家があり、レオは顔を上げて家全体を見ようとする。
やっぱりデカい家だな。
こんな所に住んで楽しいか?
狭いほうが人の温もりを感じれると思うのだが。
住んでみたら考えが変わるのだろうか。
「さあ、レオ様。私の部屋へ行きましょう。」
アルシアがレオの手を軽く引っ張る。
無駄にデカい廊下を進み、無駄にデカい扉の前に来る。
これが、アルシアの部屋...
デカいな。
もしかして、デカい部屋で過ごすと身長が伸びるのだろうか。
俺は狭い家に住んでいるから身長が小さいのか。
いや、別に狭い家ではないよな。
比べると狭く感じるだけだ。
あと、俺は小さくないはずだ。
年齢の割にはデカい方だと勝手に思っている。
ギィ
「さあさあ、入ってください。」
アルシアはニコニコしている。
可愛いかも知れん。
仕草が可愛く感じてしまう。
そんな動作をしていたら、森では生活できないぞ。
すぐに殺されてしまうんじゃないか?
特に夜。
アルシアはこんなにも弱くなってしまったのか。
森でのアルシアは凄くいい警戒の仕方をしていたと言うのに。
いや、でもいい事か。
それだけ平和に楽しく暮らせているという事だよな。
じゃあ、別にいいか。
俺とアルシアはその場に座った。
「広い部屋だな。」
「...はい。」
「「......」」
あれ?
俺は今までアルシアと、どんな会話をしていたっけ?
「レオ様、私の火属性魔法を見てください。」
「おう。」
ボッ
アルシアは手のひらを天井に向け、小さな火を出した。
「おお、小さいな。」
部屋を燃やさないためだろうか。
魔力調整の出来を自慢したいのだろうか。
ピカッ
小さな火とは別で、手のひらの少し上ぐらいが白く光った。
「おおっ!凄いな!火属性と光属性魔法って一緒に
使えるのか。知らなかった。」
「へへ、成長したんです。」
とても華麗だ。
こういうのを見ると、魔法を使いたいと思えてくるな。
そして、どうしてもアルシアの胸を見てしまう。
座っていて、手のひらを見せていたら、俺が胸を見ていることがアルシアに伝わりにくいんだ。
バレないんだったら、つい見てしまう。
アルシアの胸は普通の大人ぐらいだ。
ルベル学校の生徒のほとんどはそれぐらいだ。
つまり、普通なんだ。
なのに、見てしまう。
女性の胸を見る機会がないからか?
これが本能と言うやつなのだろうか。
身体強化をしても抗えない。
男と言うのは凄い面白い。
もしかして、俺だけなのか?
不安だ。
アルシアは火や光を消した。
「ふ、ふう。それにしても、暑いですね。」
アルシアがそう言いながら、服を脱ぎ始めた。
「お、おい。何してるんだ。」
複数の魔法を同時に発動すると、頭がおかしくなるのか?
「暑い暑い。本当に暑いですね、レオ様。」
アルシアはシャツ姿になった。
「身体強化をすると、暑さが和らぐぞ。」
「そうなん...ですね。」
「ああ、そうなんだ。」
チラ
いけない!
ここで見たら流石にバレてしまう。
そしてバレたらアルシアに嫌われて、クイーン家総出で襲ってくるに違いない。
こっちを見ないでくれ。
下を向け。下を向け、アルシア。
「レオ様、少し遊びませんか?」
「何をするんだ?」
俺はせいぜい、戦いごっこしか出来ないぞ。
そんな俺に何をさせる気なんだ。
下を向く遊びがいいな。
「チェスなんて、どうでしょう。」
「なんだ、それは。」
それから俺は、アルシアに教えてもらいながらチェスをして遊んだ。
「だー!!くそっ!勝てねー!!!」
「へっへっへ。私は強いんですよ〜?」
この、クソ野郎。
手加減と言う言葉を知らないのか!?
次は負けない。俺が勝つ。
瞬きをした瞬間に、身体強化を使ってやる。
「次は、う、腕相撲をしましょう。」
「なんだ、それは。」
「こうです。」
アルシアはレオの手を掴み、腕相撲の形に誘導した。
「この状態で、相手の手の甲を床に着けたら勝ちです。」
「要するに...力比べと言うことだな?」
「はい、その通りです。」
アルシアの手...柔らかい。
いけない!
こういう事を考える俺は気持ち悪いだろうか。
教えてくれセルロス。
お前も手を握られたらそう思うのか?
俺だけなのか?
考えないようにしなければ。
「身体強化は使っていいです。私に勝てますか?」
アルシアはニヤリとして、こちらを見る。
「俺の身体強化魔法は凄いんだぞ。」
正直、負ける気がしない。
ただ、さっきから胸を見てしまう。
やはり俺は最低な人間なんだ。
「私が合図しますね、...始め!」
ドンッ
レオが、無表情でアルシアの手の甲を地面に着けた。
「負けました。やはりレオ様は強いですね。」
「俺は...強い。」
思い返せば、アルシアは俺を何度も助けてくれた。
そんな人を俺はよく分かんない気持ちでいっぱいに
なって、自分の見たいものだけを見て、変な事を考えてしまった。
そこに、アルシアとの再会を素直に喜んだ気持ちは
あったのだろうか。
ないよな...
俺は酷い奴になってしまった。
変わったのは俺の方だ。
「レオ様?楽しくなかったですか?」
「いや?楽しかった。もう遅いし、帰るわ。」
「え!あの...良かったら、この家に泊まりませんか?」
「え?...いや、帰るよ。家の人が心配してしまう。」
「そう...ですよね。すみません。」
アルシアはニコリと笑った。
チラ
「うっ!」
レオはアルシアの胸を見た瞬間、目を細めて手で顔を覆った。
「レオ様?」
「いや、なんでもない。」
コンコンコン
部屋の扉が叩かれた。
「アルシア様、おかえりなさいませ!」
「ただいま。わざわざありがとう。」
「いえ!私が言いたかっただけです!それでは!」
扉を開けることなく、会話は終わった。
この声...クイーン部隊の副隊長か?
「副隊長?」
「はい、そうです。」
見回りでもしてたのか?
そして『おかえりなさいませ。』と言われたら
『ただいま。』と返すのか。
知らなかった。恥ずかしい。
リリがおかえりなさいませって、よく言うもんな。
王族の挨拶とは考えにくい。
「じゃあ、俺は帰るよ。」
「え?」
「もうすぐ暗くなるし。」
「...そうですね。また来てください。」
「おう。」
その後すぐに迷って、アルシアに家の外まで案内してもらい、自分の家に帰った。
ギィ
「おかえりなさいませ、レオ様。」
「...ただいま。」
「!?」




