72. 初授業
人が少なくなったのを見計らって外に出た。
「げっ。」
紙が貼ってあるであろう4箇所に人が集まっている。
体育館が空いたからといって油断してはいけないらしいな。
体育館で座り直し、また時間をおいた。
おっ。
人がいない訳では無いが、さっきよりは断然少ない。
一番奥の人の集まりが混み合ってなさそうだ。
そっちへ行こう。
ワイワイガヤガヤ
み、見えない。
俺の身長のせいなのか!?
「なあ、俺達一緒じゃん。」
「そうだな。やったぜ。楽しい学校生活が送れそうだよ。」
「昼休みも一緒に遊んでくれよ。」
「当たり前じゃないか。」
人だかりの中からそんな声も聞こえてくる。
いや早くどけよ。
もしかして、アイツらもこの人だかりのせいで動けないのかも知れない。
また空くのを待つのか。
俺は待つのが好きな方じゃないんだよな。
空いてきた。行ける。
なんだこれ!?
一番上にクラスが書いてあり、その下に人の名前がぎっしりと書かれている。
名前が多すぎて自分の名前が見つけられない。
クラスはAからFまである。
そして、ひとクラスに300人ぐらいはいるな。
ほぼオーク討伐クエストじゃないか。
「レオレオレオレオレオ...あった。」
俺はどうやら1年D組らしい。
F組から名前を探し始めてよかった。
なんとなくそっちらへんかと思ったんだ。
俺はネガティブ思考なのかも知れない。
普通はA組から見てくよな。
でもA組とか絶対優秀な人達じゃん。
実力関係なしのただのクラス分けの可能性も、もちろんあると思う。
ただ、A組が優秀な人の集いだと思った瞬間から俺は
F組から見るしか出来なくなっていたんだ。
D組はたしか...庭に行くんだっけか?
間違っていたら恥ずかしいな。
庭と言っても草などの植物が生えている訳では無い。
砂の地面が広がっている感じだ。
絶対ここで体を動かすのだろう。
「C組はあっちにいる先生の方に、D組は私の所に来い。」
長い黒髪の女が話す。
剣を持っているので剣士だろう。
思うのだが、長い髪って邪魔じゃないか?
魔法使いなら分かるけど。
ルベリア王国の隊長も長かったよな。
俺は髪を短くしたら、さらなる高みへ行けると思う。
ワイワイガヤガヤ
集まった人達は各々で会話をしている。
コイツら、そんなに友人が多いのか?
もしかして、試験で工夫したら同じ組になれるのかも知れない。
俺に友人はいない。
ロイ、マイク、ドレイク、カイ、俺と話してくれ。
まあいい。
別に話すこともないしな。
「集まったようだな。では、みんな。自己紹介だ。
まずは私から。私はステラ・ノーブルだ。超級風流剣士として、風流剣術を教えてやる。次、端のやつから順番に話せ。」
超級風流剣士...会ったことがない。
そもそも、風流剣士が少ないと思う。
ほとんどは一線流剣士だ。
この女...相当拗らせてるな。
「僕は初級一線流剣士の...。」
自己紹介が始まった。
短く紹介する人もいれば、長く紹介する人もいる。
もちろん俺は、短く紹介するつもりだ。
300人近くいるからな。
長くするとムカついてしまう。
あっ。次、俺の番だ。
ヌルっと立つ。
「俺は特別生のレオ・アンダーソンだ。」
ヌルっと座る。
大成功だ。
3秒ぐらいで終わらせられた。
とてもいい自己紹介だったと思う。
俺は空気も読めるのだ。
「よし、みんな喋ったな。じゃあ、軽く基礎魔法の授業を行う。」
少し距離を置いて集まっていたC組の人達がこっちに来た。
どうやら、合同で授業を行うらしい。
先生は2人になったけど、こんな人数を見れるのか?
おそらく適当に見ているのだろう。
仕方ないけど。
先生が台みたいな箱の上に上がった。
「まずはお前ら、共通魔法である身体強化魔法をしてみてくれ。」
「へっ、余裕だね。」
「大丈夫かなー?」
色んな声があるな。
共通魔法で心配な奴がいるんだな。
一体、どんな試験だったんだろう。
まあ、俺は大丈夫だ。
身体強化だけで言えばプロに近い。
それしか魔法が出来ないからな。
「ふんっ!」
よしっ!素晴らしい。
これはいい身体強化だ。
魔力の余りがない。
つまり、全てを身体強化に使えたんだ。
身体強化レベルが上がったんだ。
間違いなく都市級はあるんじゃないか?
都市級身体強化だ。
「...おい、お前。身体強化出来てないぞ?」
近くにステラ先生がいた。
美人だな。
怖い雰囲気が漂っているけど。
怖いというか、しっかり者だろう。
でも、怖い。
そして、出来てないだと?
そんなはずはない。
素晴らしい身体強化魔法だろう。
「...?ずっと出来てないぞ?」
「そんな訳ないだろ。」
「...お前、どうやって試験を通過したんだ?」
「俺は特別生だ。」
この先生、自己紹介聞いてないな。
まあ、300回近くも聞いたらそうなるか。
「そうなのか...魔力を外で全力で出してみろ。」
「それは出来ない。」
「...そうか。いつでも教えてやるからな。気が向いたら聞きに来い。」
「ああ。」
これは、駄目なのか?
周りを見ると、こっちを見ていた。
こそこそと何かを話している人もいる。
話を聞いた人が笑っているので、いじっているのだろう。
みんなが引いているな。
精神的な攻撃みたいだ。
凄い心にくる。
周りの人が俺を見なくなった。
別の事に興味を持ち始めた。
心の安心感が凄い。
人に見られるだけでこんなにツライとは。
「よし、では自分の出来る基礎魔法を出し続けてくれ。」
そう言うと、みんなは手から火を出したり、水の
ボールを出したりしていた。
風を出している人は分かりにくいが、髪が揺れているのでギリギリ分かる。
俺は出来ないんだよな〜。
さて、困った。
この授業は暇なのかも知れない。
せめて話し相手がいたら、少しは楽しいのに。
「おい、お前。名前は?」
ステラ先生がまた話しかけてきた。
「レオだ。」
「レオ、出来てないぞ?」
それは俺も分かっている。
「出来ないんだ。」
「...そうか。では、火のイメージをして魔力を出してみろ。」
「ふんっ!はぁ〜はぁ!いや〜ん!いや〜ん!!」
出ないな。
周りの人がまた俺を見ている。
やっぱり怖い。
「次は水だ。」
「いや〜ん!」
「風。」
「いや〜ん!!」
「土。」
「いや〜ん。」
「光!」
「いや〜ん!!」
「闇!」
「いやん!」
「...いつでも私に聞いてくれ。」
先生は行ってしまった。
俺はまず魔力が出ていないんだよ。
イメージ以前の問題だ。
困ったな、魔法の授業はキツイかも知れない。
そうして何も出来ないまま、授業は終わった。
最後に先生が魔術コースと剣術コースのどちらかを
2年生になったら選べると教えてくれた。
俺の方を見て教えてくれたので、慰めのつもりだろう。
上から目線でムカつくな。
上から目線だと王族を連想させるから嫌いなんだろう。
身長も俺より高いし。




