70. 陰キャ株式会社、解散
「なあロイ、これは...ゴブリンとも戦うことになるよな。」
「まあ、そうなるよな。」
ブラックバットとゴブリン村との距離が近い。
ブラックバットを攻撃したら間違いなくゴブリンに気づかれるだろう。
そして間違いなくゴブリンは襲ってくるはずだ。
「え!?なんかないのか、ゴブリンにバレずに倒す方法。」
マイクが焦りだした。
「大丈夫だ、マイク。ブラックバットとゴブリンに襲われても負けることはない。」
怪我はするかも知れないけど。
「ブラックバットに近づくぞ。」
ロイが先導して隠れながら進む。
「なあ、俺がゴブリン倒そうか?」
別にブラックバットだけならロイとマイクで十分だろ。
俺が退屈になってしまう。
「任せたぞ!」
マイクがいい笑顔で元気に喋る。
バサバサバサバサ
バサバサうるさいな。
木に止まれないのか?
「じゃあ、後で。」
「おう。」
ダッ
ゴブリン村へ突撃する。
「ガー!!!」
グチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャ
「ふぅ。」
一瞬で終わったな。
なんの作戦もなく、ただ速さに物を言わせてしまった。
これが身体強化の力だ。
『後でな。』ってロイに言われたのにすぐ終わっちゃった。
まあいい。マイクの様子を見に行こう。
まだ頑張ってるんじゃないか?
「この野郎!」
バキッ
バキッ
風魔法で攻撃をしているマイクがいた。
ロイは木の枝の上に座っている。
どうやら、マイクに戦わせるみたいだ。
...風魔法、避けられてるな。
「頑張れー!!マイクー!!!」
「おっ!レオ!もう終わったのか!」
「ああ、ロイは見るだけなんだな。」
ダンッ
俺も木の枝の上に座る。
「俺が手を貸したらマイクは強くなれない。」
「ははっ。」
パーティーの意味ねえじゃねえか。
強くはなれるだろうけど。
「ぐあっ!」
マイクがブラックバットの長い足で掴まれた。
「「マイク!」」
「助けてくれ〜!!」
ブラックバットがマイクを掴んだまま、上空に飛ぶ。
ダンッ
バキッ
ロイが木の枝からジャンプして枝が折れた。
隣で座っていたレオが地面に着地する。
「飛ぶな。」
ゴンッ
ロイは剣の側面でブラックバットの頭を叩く。
ドンッ
「痛!」
ブラックバットとマイクは地面に落ちた。
ロイは音もなく着地した。
ブラックバット、死んだんじゃないか?
叩かれて気絶して、地面にぶつかって死んじゃった。
「シャー!!!」
他のブラックバットがロイに襲いかかる。
これは...上級の中でも下の方だな。
ロイの強さを測れていない。
いや、仲間が殺されたら俺も戦うと思う。
これで判断するのは違うか。
「やめろ!お前ら!俺じゃない!!」
ロイがブラックバットを注意する。
人族語なんて理解出来ないだろ。
ブンッ
ブンッ
ロイがブラックバットを掴んでマイクに投げた。
「うわっ!」
ビュッ
「シャッ!」
マイクは風魔法で飛んでくるブラックバットの首を折っていく。
これは...マイクとロイで戦っているみたいだな。
もうブラックバットとは戦っていない。
一体何をしているんだ。
ブチッ
ブチッ
俺はそう思いながら死んだブラックバットの右耳を
回収する。
「はぁ、はぁ、はぁ、やったぞ。」
マイクが全てのブラックバットを倒した。
『やったぞ。』でいいのか?
もっとちゃんと戦って勝ったほうがいいだろう。
ブチッ
ブチッ
右耳は7個集まった。
つまり、7匹倒したな。
「あと3匹でクエスト達成だ。」
「マジか!!もうすぐだな!僕に任せておけ!」
マイクが満面の笑みを浮かべている。
それでいいのか?マイクさん。
「あっ!そうだ!いい事を思いついたぞ!」
マイクはノリノリで話す。
「風魔法で死んだブラックバットの臭いを森全体に広げるんだ。そしたら他のブラックバットも来ると思わないか?」
「お前は天才だ!」
マイクとロイがノリノリで話す。
悪魔みたいな発想だな。
それでいいのか...マイクさん。
でも、作戦の内容はいいと思う。
実行していいのかは分からないが。
「タイフーン!」
ブアッ
ささやかな風が来た。
周りの木が少し揺れる。
おそらくこれで臭いは広がったのだろう。
少し臭い。
「臭っ!」
ロイが鼻をおさえる。
「ふははは!これが風魔法だ!」
「マイクもオーク達と戦っただろ?」
「...うん。」
「風魔法の攻撃を受けただろ?」
「...うん。」
「これは風魔法か?」
「...違う。」
「じゃあなんだ?」
「...ささやかな...風。」
「あはははは!」
ロイが笑った。
ロイって、なんでも笑うよな。
「マイク、そんなんじゃブラックバットに勝てないぞ。」
「なんだと?食らえ!すかしっぺ!」
「ふっ、効かないね。」
俺はマイクから少し離れている。
これだけの距離があったら臭いなんて来ない。
「からのタイフーン。」
「うわっ、臭っ!」
おならの臭いがささやかな風に運ばれてきやがった。
くそっ、臭い。
俺も鼻を押さえた。
「あはははは!臭〜。」
ロイはまだ笑っている。
アイツ、臭くても笑えるのか?
バサバサバサバサ
「おっ、ブラックバット来たぞ!」
「マジかよ...」
来るもんだな。
正直、来る可能性があるだけで来ないと思っていた。
4匹のようだ。ちょうどいい。
「いけ!マイク!」
「おう!ダウンウィンド!」
ヒュッ
「ギャッ!」
上から下に風が吹いた。
ブラックバットは地面に這いつくばっている。
グサッ
グサッ
マイクは腰にある剣を抜いて、ブラックバットの頭に刺した。
風魔法を拘束のために使うのか。
面白い。
魔法攻撃は殺すために使う事が多いからな。
剣と組み合わせるのが、いいな。
俺も学校に行くし、剣を買おう。
決めた。
安い剣を買おう。
俺は剣術初心者なんだ。
いいものを買っていたら勝手に強いと思われてがっかりされてしまう。
勝手にがっかりされるのは嫌だ。
「なんだよマイク、始めからそのやり方で倒せばいいじゃねえか。」
ロイが指摘する。
それは俺も思った。
「いや〜、この魔法は範囲が限られているし、難しくて疲れるんだよ。あとミスったらカバーが効かないから死ぬかも知れない。」
「そうなんだ。」
色々と理由はあるんだな。
マイクからしたら結構な挑戦だったのか。
よく頑張った。
ブチッ
ブチッ
「よし!右耳10個集まったぞ。」
「...レオはずっと右耳千切ってたよな。」
「......」
ん?なんだ?
俺がヤバい奴だというのか!?
なんでだよ!
「はい、こちら証明の品です。」
マイクはイケメンスマイルだ。
「ありがとうごさいます。」
「いえいえ。これぐらい常識ですよ。」
「あははっ!」
「ふっ。」
おいおい、一体どういう事だ。意味が分からない。
ロイも笑っている。
「こちら、今回の報酬金になります。」
マイクに渡そうとする受付の手を掴む。
「これは、お姉さんの分です。いつも受付ご苦労さまです。」
「あははーっ。結構ですよ。」
マイクの奴、目茶苦茶カッコいいな。
普段は出来ないことを平然とやっている。
上級クエストを達成した事と、もうこの国を去る事の影響で調子に乗っているな。
「ふー!」
「カッコいいぞー!」
周りも盛り上がっている。
クエスト終わりの冒険者が多いからな。
みんな気分がいいんだろう。
「あはは。本当に要らないですから。」
受付の人も照れちゃってるぞ。
ロイはずっと笑っている。
「いえいえ、これはもう、あなたのものです。」
「本当に大丈...」
「とでも言うと思ったかー!!僕はお金がだーい好きなのさー!!グヘヘヘへ!!はーっはっはっはっはー!!」
「ふふっ。」
「あはははは!!」
「なんだコイツ。」
「最低だー!!」
「見損なったぞー!」
俺とロイには好評だが、周りの冒険者には不評のようだ。
だが、それでこそロイだ。
そこまでやり抜く勇気、尊敬に値する。
「じゃあな、レオ。またどこかで会おう。」
「ああ。」
「僕はレオと出会えて良かったよ。」
「俺もだ。」
俺達はそれぞれの家に帰った。




