表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

12 匣の中の猫①

 『骸背負い』を俺と探偵で追い始めて、二年が経った。

 現時点で、『骸背負い』について分かっていることは一つだけ。


 ――――素人に『骸装』を売っているらしい、ということ。


 『骸装』の操作には高度な技術が求められる。

 技術が足りなければ、『骸装』に殺されるからだ。

 ある程度人間らしい精神性を遺している俺だって、時々探偵の頭を握り潰してみたくなる。死へ引きずり込む性質を持っていたギュウキも、娘の護衛を役目としていたのに、最終的には娘を死の概念へと引きずりこんだ。

 素人が触れば無事では済まない。

 だからこそ、『骸装』は専門の霊能力者だけが扱えるよう、法で規定されている。


「宇志峰喜一はどこからどう見ても素人でした。『ギュウキ』への指示もあいまいで、装着すらできなかった。一瞬で片がついたのは、がしゃどくろさんが凶悪だったから……だけではないでしょう」


 取調室。

 息を呑む女刑事に、探偵はつらつらと述べた。


「『骸装』を操るどころか、『骸』を拾うことさえできないような素人です。

 あの精神性では、遅かれ早かれギュウキにとり殺されていたことでしょう」

「……やはり関わっているのか、あいつは」

「いつものことでしょう」


 探偵は三杯目のかつ丼を食べ終えた。


「そしていつものように……彼が関わっていること以外、手がかりはひとつもありません。

 喜一に吐かせても、いつも通り記憶は混濁しているでしょう」


 『骸』をどう拾い、どう弄って『骸装』とするのか。

 どういった方法で『骸装』に伝承の形を被せ、妖怪や神のような性質を持たせるのか。

 分かっていることは全くといってよい程ない。

 そもそも、存在するかも定かではない。


 明確なのは、俺たちの敵である。ということくらい。


 女刑事は深い、深いため息を吐いた。

 その灰色の目が、探偵を気遣うように気まずそうに向けられる。


「……よつゆ」

「私はまだ、この仕事を続けますよ。姉さん」


 探偵は口元を猫の柄のハンカチで拭うと、取調室のパイプ椅子から立ち上がった。

 女刑事の、姉の小言を聞く気はないらしい。

 張り付いたマリア像のような笑み。


「パパもママも、そう望んでいるでしょうから」



   *   *   *



 首吊り“殺人”事件の解決から一か月。

 『骸背負い』が見つからないまま、一か月。

 十月に入り残暑は去って、虫の音と少し肌寒い風が吹くようになったころ。



「ねこちゃんが、まいごになっひゃっでぇ!!!」



 やってきた依頼人は、なんか、こう。

 かわいかった。

ここから第二話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ