地獄の陰陽師会合③
初めて見る潤の反抗の姿に双子の弟、怜央は一瞬戸惑った後、面白そうに口角を上げた。
「……へぇ。なに?同情でもしちゃった?まったく、とことん使えないねぇ。」
「ちょっ、、、!違うわ!うちだって、その子がええ子やって思ったから、、!」
慌ててみやびもフォローする。
「みやびちゃんは優しいからなぁ。そこが魅力やから、ええんやで。やけど、他の奴らは別や。やるべき事をやってもらわなあかんねん。」
「……っ!」
「しかし、そのやるべき事が出来ていないのならば、俺と怜央が直接下せば良い事だ。ここから横浜までは近いからな。」
兄の莉央が冷静に言い放つ。
その言葉に潤やみやびだけでなく月城も血の気が引いた時だった。
「手を下さないのではなく、手を下せないのですよ。残念ながら。」
大山先生が胡散臭い笑顔を貼り付けて言う。
莉央は機嫌の悪そうな顔で聞き返す。
「……どういう事だ。」
「鬼門院の娘……鬼門院茉莉花は溜め込んでいる陰の気が今まで出会った妖魔師とはレベルが違うんですよ。恐らく、八岐大蛇に相当する力を持つ妖怪と契約しています。」
その言葉に他の陰陽師はどよめきだす。
「八岐大蛇と同等、そんな妖怪が存在するのか…?」
「信じ難い事ですが、事実なので。ですから、こちらが安易に手出しするのは如何かと思いまして…。」
大山先生の見事なフォローに3人はナイス!と内心思う。しかし、、、
「……で?じゃあ、不意打ちでも何でもして、その妖怪を召喚する前に殺せばいい話じゃないか。」
秋人はそんな理由では納得してくれないようだ。
もちろん、潤達が茉莉花に手を出さないのは、彼女が悪い人間では無い事を様々な経験を通して確信していたからだ。
しかしこの場において、こんな生易しい理由を述べても意味が無い。
「……どうするんですか?だいぶマズイですよね、この状況。」
月城は小声で大山先生に言う。
「…………。任せて、実行したくはなかったけど、作戦その2がある。」
大山先生は依然として表情も語調も崩さずに続ける。
「話はまだ終わってません。我々が手を出せない理由としてもう1つあります。」
「ふーん?」
「これは……彼女から誰にも言わない事を条件に聞きだした情報でしたので、、あまり言うのは、はばかられる事なのですが…。」
その言葉に驚き、3人は大山先生の顔をまじまじと見た。
「彼女には"陰除の印"がないのです。」
「は!?」
「なんと……!」
どよめきは一層大きくなる。
「陰除の印は知っての通り、身体に陰の気が溜まる妖魔師の死後の妖怪化を防ぐものです。それが、契約相手の妖怪から外されたらしく…。とにかく、今の彼女が未練を抱いたまま死ねば、確実に妖怪として生まれ変わるでしょう。…それも溜めている陰の気の量からしても厄介な強さの妖怪に。」
「……なるほどねぇ。どうやら、この話、潤君達も初耳みたいだけど?」
怜央は呆然とした潤、みやび、月城を見て言った。
「……はい。先程も申し上げた通り、これは私が鬼門院茉莉花と地道に信頼関係を築いて得た情報ですから。それを簡単に誰にでも話していたら、信頼を無くしかねませんからね。まぁ、今、やむなく話してしまったわけですが。」
「ふーん。…しっかし、どうするかねぇ、彼女の処理は。」
秋人が頬杖をついて頭を悩ませる。
「……。とりあえず、八岐大蛇復活までにはまだ時間があります。…その信頼関係とやらで、彼女が我々の敵になりうる人間か、契約相手の妖怪がどんな者なのかこれまでのように調査を続行してもらいましょう。頼みましたよ、大山覚。」
陽道翠の言葉に大山先生は胸を撫で下ろした。
「はい、かしこまりました。」
「では、次。御堂家当主、報告をお願いします。……」
こうして、本人の知らぬ間に訪れていた大ピンチは何とか回避することができたのだった。
しかし、その後の潤達の表情はいつまでも暗いままであった。




