地獄の陰陽師会合②
「……いやぁ、ほんまに久しぶりやなぁ。ところで、紫苑君の意識はまだ戻らんの?」
陽道家と百寺家は古来から犬猿の仲である。
みやびの父親、つまり百寺家の当主の百寺秋人が嫌味ったらしく陽道翠に話しかけた。
しかし、陽道翠は表情を微塵も変えない。
「……ええ。早く意識が戻って欲しいものです。残念ながら、うちの紫苑ほどの人材は陰陽師界に存在しませんからね。そちらはたくさん子宝に恵まれていらっしゃるというのに…。」
百寺家の当主は本妻の他に愛人を少なくとも8人はかかえていたため、子どもがたくさんいる。
ちなみに長男次男が双子であり、長女はみやびである。彼らの隣には10人以上の弟、妹が着席していた。
痛いところを突かれたのか、秋人は翠の言葉に軽く舌打ちをする。
「ちっ、、、、しかし、お宅の潤君はお兄さんを怪我させた挙句、妖魔師の真似事も失敗したみたいやし。プラマイゼロってとこやろ?」
彼はターゲットを潤に変えたようだ。潤は無言で目を逸らす。それを見て、秋人は気分よく続ける。
「山喰童子やっけ。江戸時代には山をひとつ無くしたとかいう伝説の妖怪やったみたいやな?ソイツをうまく従えていれば、お兄さんの役に立てたかもしれんのになぁ。」
「父さん…!」
耐えかねて、みやびが秋人を睨む。
「も〜、とーさん。早く帰りたいんだから、そういう無駄話はよしてよ。さっさと本題に移ろうよ。」
そして、空気を読んでいるのか、読んでいないのか、双子の弟の怜央がやんわり話題を変える。会合の雰囲気はすでに極寒の地と化していた。
陽道翠は咳払いをした後、報告を始めた。
「ゴホン、、では陽道家から始めさせてもらいましょう。八岐大蛇が封印されている学校のグラウンドには再び封印の儀式ができるよう、術式を刻むといった準備を進めているところです。また、1月以降は校舎の改築の為、という名目で、我々が用意した別の施設に生徒を通わせることも関係者や関係機関に許可を得ました。再封印に向けた準備は順調です。では次どうぞ。」
報告が終わると秋人を見る。
「……百寺家は来る八岐大蛇復活に向けて、着々と小バエをはたいとるところですわ。もう、半分は減らせたんちゃうかなぁ。」
小バエ、というのは妖魔師のことだ。
妖魔師の数を片っ端から減らしていくという、妖魔師抹殺思想の陰陽師達のリーダー的存在を務めているのが百寺家であった。
まるでサイコパスのように嬉々として語る百寺秋人に対して、呆れたような表情を浮かべた陽道翠はため息混じりに愚痴を言う。
「……。その思想はあまり関心しないと言わなかったか?無駄にあちらの怒りを掻き立ててどうする。本来敵になるはずのなかった者まで、激高して鬼門院側についたという噂もある。」
「ふん、そんな奴らもまとめて潰せば良い話だ。」
冷たいオーラをまとう双子の兄の莉央は、切り捨てるように言い放つ。
「莉央君の言う通りだよ〜。鬼門院の血筋以外の妖魔師はほぼ雑魚ばっかだし!あ、鬼門院と言えば、、
…………例の学校に鬼門院の娘がおるらしいなぁ?」
柔らかい語調だった怜央の声のトーンが急に落ちていった。しかし、顔がニコニコしたままなのが余計に怖い。
周りを取り囲む陰陽師達は一層顔が凍りつく。
「……アンタらに質問してんやで?潤君、月城家跡取り、陰陽師の犬。どうして鬼門院が紛れ込んどるのに始末してへんのや?百歩譲って、報告もなしっちゅうのはどういうつもりや?こちとら、たまたまその学校を偵察した陰陽師のタレコミでようやく知ったんやからな。」
バン!
怜央の言葉に潤は机を叩く。
「……なんでそう、始末が前提で話を進めるんですか。」
「…!」
今までどんなに蔑まれても反論しなかった潤が急に怒るような言動に、怜央だけでなく、皆が一瞬戸惑ってしまうのだった。




