地獄の陰陽師会合①
夏休み中旬。
潤、みやび、誠也は豪邸の入口に立っていた。
「相変わらず大きいなぁ、陽道家。」
みやびがあんぐり口を開ける。
「……俺から言わせれば、百寺の家も同じようなもんだけどな。」
誠也はボソッと言った。
「はぁ……、仮病でも使えばよかったわ。うち、あんま好きやないんよね、陰陽師の集まり。」
「そういう事を主催する家の門の前で堂々と言うんじゃない。……ま、俺も会合の空気感は苦手だが。」
由緒ある家の陰陽師は年に1度開催される定例会合に参加する。基本は一家の当主とその跡継ぎが参加せねばならない。もちろん、例外もあるが。
「あー。なんか胃が痛くなってきたわ。帰ってええ?」
「ダメに決まってんだろ。ここまで百寺が弱気になるのも珍しいよな。それに…………大丈夫か?潤。」
誠也は数十分前から声を発してない潤に声をかけた。
「……ああ。」
「嘘つけ。顔、真っ青だぞ…。」
潤の顔色はまるで死人のようだった。
確かに彼は会合にいい思い出がひとつもない。兄の才能が天才的であったため、いつも比べられて、蔑まれて来たのだ。
「……落ち着け。平常心だよ。」
そう言いつつ、誰かが潤の肩を持った。
「あ、大山先生やん!、、って、先生も人の事言えんくらい顔色ヤバいで。」
目の下の隈がいつもの2倍濃い。
なんだか少しやつれている。
「あ、そう?じゃあ、もうちょっと気合い入れなきゃね。」
先生はそう言いながらタバコを2本取り出し、あろうことか両方に火をつけ、2本同時に吸いだす。
「……死ぬで?そのうち。」
みやびは呆れ顔で先生を見た。
「これがないと今日はマジでやっていけないの。…ぷはぁーー、、、よし行こうか…。」
「はーーい…。」
皆それぞれ重い足取りで、陽道家の門をくぐり抜けたのだった。
4人が会議室に入ると、既にほとんどの陰陽師が集結していた。
「みやびちゃーん!こっちこっち!」
「来るのが遅いぞ。」
似た顔の男2人がみやびを見ている。
「げっ……。」
生真面目そうなのが兄・百寺莉央、ニコニコして話しやすそうなのが弟・百寺怜央で一卵性双生児である。
みやびとは5歳上の腹違いの兄弟だ。
しかし、残虐性をおびた性格から、みやびは彼らの事が苦手だった。
怜央と莉央の間にどうやらみやびの席が用意されているらしい。
みやびは嫌そうに、しかし、他に席もないのでしぶしぶと、その席に座った。
「……潤、お前はここよ。」
潤の母親の陽道葵が無表情のまま手招く。父親の陽道翠は目も合わせようとしない。
「…………はい。」
潤もぎこちない動きで席に着く。
「……誠也、席のない俺たちは端っこで立っておくぞ。」
「ですね…。」
大山先生と誠也は部屋の端に寄り、姿勢よく立った。
基本、会合で椅子に座れるのは一家の当主だけだ。しかし、例外として、陽道家と百寺家の血を継ぐものは椅子が用意される。
なぜなら陽道家と百寺家は陰陽師の家系の中でも二大勢力だからだ。
会合は当主と2大家紋でテーブルを囲み、更にその他の陰陽師が立って取り囲む形で進められる。
今年もまた、地獄の会合がスタートしたのだった。




