終わらない夏祭り㉗
ゲートを抜けた先には、縁日が終わり、閑散とした夜の神社の光景が広がっていた。
「……戻ってこれたか。ふぅ…。」
とりあえず、安堵でため息が出た。
「つ、疲れましたよ…。」
理斗もヘロヘロのようだ。
「お二人共、お疲れ様でした。そして、本当にありがとうございます。今から僕は、ヤマト姐さんに顔を出してきます。心配をかけたみたいですからね。」
「わかりました。こちらこそありがとうございます。」
茉莉花がお礼を言うと、剣人は一礼し、一瞬で夜の闇に消えていった。
「……さてと、私達も帰ろうか。」
「はい。ところで、泊まる場所は確保してあるんです?」
「……。」
そういや、あの縁日から一日ちょっと時間が過ぎているんだった。
予約したホテルのチェックインの時間はとうに過ぎているし、終電の時間を過ぎているため、そもそもそこまで行くことができない。
タクシーでも呼ぶ?最悪野宿?
少しずつ顔が青ざめていった時の事だった。
「……理斗!!!見つけた!」
綺麗な女の人が突然現れ、理斗の所へ駆け寄り、抱きしめた。
「……どこいっとったの!?まったく心配かけて!」
「ね、姉さん……?嘘だ、どうして?」
死んだはずの姉が何事もなかったように現れたのだ。理斗は幻覚でも見ているのかと、混乱した。
しかし、それは姉からしても同じことだった。
「……?理斗、呪い……解けたと!?もう、本当説明してもらいたいことが山ほどあるけど、良かった…!」
涙を流して、更に強く理斗を抱きしめた。
「ど、どうして……」
理斗は茉莉花に視線を送る。
「陽太に、3年前の事件についての新聞記事を持たせたの。彼が上手くやってくれるかは賭けだったけどね。」
そう。茉莉花は特殊なルートで御堂姉弟の事件の新聞記事を持っていた。
そして、陽太達の着ている服がそのまま残ることから、ゲートをくぐっても物質には制約がかからない事を推測した。
だとしたら、彼が元の世界に戻った時に持たせた記事は手元に残っているはずだ。
その後は完全に彼頼みになる。
まず、新聞の日付が未来のことであるという事実に気づいてもらい、尚且つその未来を変えるための何かしらの行動を起こしてもらわねばならない。
しかし、御堂玲奈が生きているという事は、陽太が良くやってくれたということだ。感謝しなくては。
「あなたは……?」
御堂玲奈が茉莉花を見る。
正直に鬼門院であることを言うべきだろうか。
「二階堂茉莉花です。御堂君の学校のひとつ上の先輩で、旧姓は……鬼門院でした。」
「そうなの。……理斗のことを助けてくれたのはあなた?」
「は、はい……。まぁ。」
「本当にありがとう。」
「え!?」
茉莉花はギョッとした。
玲奈さんは茉莉花に対して深々とお辞儀をしたのだ。
普通、鬼門院と聞けば疑いにかかるのが普通だろうに。
「そ、そんな!大したことはしていないので…!」
「いいえ。理斗はこの呪いにずっと苦しんできたんよ。私も何もしてあげられないことが本当に辛かった。だから、感謝してもしきれないわ。…ねぇ?理斗。」
玲奈さんが未だ混乱中の理斗の顔を見つめる。
「う、うん…。」
「じゃあ決まりね!今夜はうちに泊まって!少しでも恩返しさせてほしいの!」
「はい!?」
「え???」
茉莉花と理斗の声がかぶる。
「ちょ、ちょっと待ってください。私は鬼門院なんですよ?妖魔師を陰陽師一家の家に泊めてもいいんですか。」
「大丈夫よ!ちょうど父さんと母さんも使用人達も東京に行っとるんよね。今、全国の陰陽師達が会議で集まっているの。やけん、いいよね?理斗。」
玲奈は心做しかウキウキしている様に見える。
「……まあ。いいですけど。」
理斗は小さい声で呟くように言った。
「御堂君まで急にどうしちゃったの!?絶対断ると思ったのに。」
ちょっと前まで私の事を脅してたよね?
「う、うるさい、、です。ほら、聞きたいこともいろいろありますし…。」
「…………。じゃあ、お言葉に甘えて…。」
こうして、茉莉花は1晩だけ御堂家に泊まることになった。
正直、寝ている間に暗殺でもされるのではないかとビクビクしていたが、手作りの夜ご飯をいただいたり、わざわざ一人部屋まで用意してもらったりと、かなり丁重にもてなされて拍子抜けであった。
そして寝る前には、理斗と一緒に玲奈さんへ今回の件についての話をした。
とてもにわかには信じがたい話をしたつもりだったが、最後まで真剣に聞いてくれた。
そして、理斗にも別行動をしていた時に何があったかを説明した。なぜ未来が変わったのか、彼もやっと理解できたようだった。
何だか一瞬だけ家族ができたみたいで、とても温かい時間のように思えた。




