終わらない夏祭り㉕
茉莉花と琉音の間に緊迫した空気が流れる。
生まれて初めてみなぎる本物の殺意。到底、目の前にいる人物を許せる気にはなれなかった。
しかし茉莉花は、琉音の喉に陰の気があと数センチで突き刺さるところで瑠璃の目を解除した。瞬間、陰の気は茉莉花の方へ戻っていく。
琉音は目を見開いたまま、腰が抜けたのか、その場に崩れ落ちる。そして震える声で言った。
「ど、どうして、アンタなんかが瑠璃の目を持っているわけ!?」
茉莉花は真顔になり、ゆっくりと詰め寄る。
「……別におかしい事ではないでしょう?私は自分で瑠璃の目を発現させたんです。代々継承しか出来ないあなた方と違って。」
「発現が本当に可能だったの…?いったいどうやって…?……。
…………ふふっ、それでも、アンタは父親と一緒じゃないの!結局、人殺しするのが怖いんでしょ?意気地がないから。」
茉莉花はため息をついたあと、苦笑した。
「はぁ。まだ、わからないんですか?あなたはお父さんと私に"生かされた"んですよ。さっき、私はあなたの生殺与奪の権利を握った。だけど、殺さない選択をしたんです。…きっとお父さんも同じです。本気でやれば、あなたレベル、簡単に消せた。」
「はっ、じゃあなぜそんな選択をしたのかしら?意味がわからないわ!」
お父さんは凛としていて、強い信念を持っている人だった。今なら何となく、お父さんが考えていたことはわかる。
「……そりゃあ、鬼門院に抗うためですよ。気に入らないから殺す、あなた達みたいな人にはなりたくないですから。
私は、お父さんを尊敬しているから、同じ選択をしたまでです。」
「でも、その結果、最愛の妻も自分も死んだんじゃない!」
「ええ。だから、私はお父さんの信念は尊重しますが、同じ生き方はしません。私とお父さんの違う点はひとつ。自身や周りの人に危害が及ぶ場合のみ、、、私は正当防衛としてあなたを倒します。」
茉莉花は真顔で言う。
「……。」
鬼門院琉音はぐうの音も出ないようだ。
「……ちょうど、向こうの戦闘も終わったみたいですね。どうか、もう二度と私の前に現れないでください。叔母さん。」
茉莉花がそう言って、理斗達の方へ向かおうとした時、琉音はイラついたように声を荒らげた。
「……アンタ、今日私を殺さなかったこと、後悔させてやるわよ!帰って夜彦に報告してやるんだから!」
そう言い捨て、取り出した御札を破ると、徐々に姿が消えていく。
「っちょ……!どこにいくの!?」
茉莉花の慌てた様子に少し気分が良くなった琉音はニヤリと笑った。
「もちろん元の世界よ!非常時用に脱出用の御札を作らせておいてよかったわ。まさか、剣人ちゃんが正気を取り戻すなんて思いもしなかったけど。またね、鬼門院茉莉花…。」
彼女が言い終わるのと同時に完璧に姿が消えてしまった。
出来れば、この世界に置いていきたかったんだけど…。
「…………終わった、んですかね。ひとまず。」
いつの間にか、理斗が隣にいた。
「……そういえば、鬼門院琉音に復讐しなくてもよかった?」
茉莉花は恐る恐る聞いてみる。
しかし、理斗は案外スッキリした顔をしていた。
「誰かさんが、気に入らないから殺す、鬼門院みたいにはなりたくないって言っていたじゃないですか。僕も同類なんて心底ごめんなんで。」
本当、耳がいいな。やり取りをしっかり聞いていたなんて。
「そっか。不安要素はいろいろあるけど、、まぁ、ひとまず帰ろうか?」
「ですね。」
こうして、茉莉花達は陽太が待つ、城の外へ出ていくのであった。




