終わらない夏祭り㉒
「アンタが鬼門院…琉音?」
理斗はただならぬ気配に背筋を凍らせた。
「ええ。それにしてもあなた、可愛い顔をしているわねぇ。私のタイプだわ!どう?私の小間使いにしてあげてもいいわよ?」
人を傷つけておいて、なぜこうも普通にしていられるのか。ましてや、その弟になぜそんな提案が出来るのか、意味がわからない。
「そんなの、なる訳が無いだろ!アンタ、姉さんになにをした!」
コメカミに血管が浮き出るほど、頭に血が上りながら理斗は怒鳴る。
しかし、琉音は彼の雷のような怒声にも、全く動じない。
「せっかく久しぶりに見つけたドタイプの子なのに。ま、いいわ!…あれを見なさい?」
彼女の指さす先には、木にくくりつけられた藁人形があった。人形の四肢には釘が打ち込まれている。
姉がなぜ今の様な姿になったのかは一目瞭然だった。
「……ま、まさか!」
「そうよ〜。お姉ちゃんの体とその藁人形はリンクしているの。凄いでしょ?鬼門院の呪いは。あなたも試しにどう?」
琉音は理斗に手を伸ばす。
逃げないといけないことは、本能でも、理性でも理解していた。
しかし、パニック状態の為に、足がもたついてしまい、理斗は尻もちをついてしまう。
「理斗……!!!」
玲奈は消え入りそうな声で絶叫した。
「ふふ、もう逃げられないわよ。」
「や、やめろ!」
理斗は、琉音に髪を鷲掴みにされ、もう片方の手で顔に奇妙な御札を貼られた。
すると、今まで感じたことのないくらい、冷たくおぞましい何かが、御札を通して体に侵入してくる感覚がした。
「うわあああああああああ!」
痛さ、苦しさ、冷たさがいっせいに押し寄せて来る感覚に、理斗はのたうち回った。
「理斗っ!大丈夫!?理斗!理斗……!」
玲奈は真っ青な顔で、必死に理斗に呼びかける。
「ふふふ、あっはっは!!!」
琉音は上機嫌に高笑いをした。
理斗は姉が自分を呼ぶ声も、琉音が笑う声もだんだん聞こえなくなっていった。
「…………痛い。」
ジクジクした痛さで目を覚ますと、目が半分くらいしか開かなくなっていた。
手で顔を触ってみると、顔の上半分が有り得ないくらい腫れている。痛みはこの腫れからくるものだとわかった。
狭くなった視界で、1番最初に見たものは藁人形だった。
「…………、うそだ。」
藁人形は四肢だけでなく、胸の辺りにも釘が打ち込まれている。
それが何を意味しているのか。小学生でもわかる事だった。
理斗は恐る恐る、姉の方を見る。
「はぁ、はぁ、はぁ……うっ!」
理斗は激しい過呼吸と、吐き気に襲われた。
それもそうだ。なぜなら、、
小動物型の妖怪と小さな虫が食い荒らし、内蔵や肉、骨が半分見えている、人とはかけ離れた姿に成り果てた姉が苦しそうにこと切れていたからだ。




